音楽ナタリー Power Push - 植田真梨恵
一歩前のその先へ 歌い手植田真梨恵、メジャーデビュー
出て行ったからこその故郷
──3曲目はアコースティックギターの弾き語りによる「まわりくるもの」。弾き語りはもはや植田さんのシングルの定番になりつつありますね。
シングルの3曲目はギターの弾き語りやピアノ1本っていう。前回の「ソロジー」やその前の「夏の日」と、けっこう昔作った曲が続いていたのでひさしぶりに今の心境に近い曲、最近の曲を収録してますね。
──これは地元である福岡県の久留米を思い出して歌ったそうですね。でも、単に懐古するだけではなく、夢へ向かって進んでいく力強さを感じました。
初めて自分のホームタウンをテーマに曲を作ってみました。故郷って、いろいろと道を進んでいく中で思い返す大切な場所だと思うんですけど、出て行ったからこそ大切に思えると思うんですよね。だから、未来を向いているのかなと思いますね。
──今回のシングルの楽曲は“過去のある瞬間”をモチーフに描かれていると思ったんですがいかがですか?
はい、その瞬間には気付けないんだけど離れてみて気付くことってあると思うんですね。すごく熱かった部分や青春。それは絶対に消えてしまう切ないものなんですけど、今回描きたかったのはそういうところで。私、シングルを出すたびに一番いいのができたって思うんです。もちろんどれも好きなんですけど、今回もそう思えたので、それがすごく幸せなことだなって思います。
すごく素敵な写真がたくさん撮れた
──シングルの通常盤には写真集が付くんですよね?
そうなんです。ジャケット写真を撮りに行ったんです、プールに。ジャケット用の1枚だけでよかったんですけど、撮ってたらすごく素敵な写真がたくさん撮れて、そのままお蔵入りにするのはもったいないと思って「フォトブックつけましょう」って言いました。
──ジャケットのプールサイドの写真、いいですよね。水面に映ってる植田さんの姿って、ちょっと波が立ったら消えてしまうものだから、「ふれたら消えてしまう」のテーマにぴったりだなと思いました。
ありがとうございます。撮影の日、雨だったので「大丈夫かな?」と思ってたんですけど、それが逆によかったみたいで。晴れてたらもっと強い光が射し込んでて元気な写真がいっぱい撮れたと思うんですけど、この曲は楽しいだけじゃない切ない感情もあったので、そのしっとりとした感じが出ました。そういう空気感の写真がフォトブックにはたくさん入ってるのでぜひ皆さんにも見てほしいですね。
──初回限定盤には、昨年11月に東京・Shibuya eggmanで行った弾き語りライブ6曲の映像を収めたDVDが付きます。
はい、この日のライブはとても集中してできたライブで、歌詞の響きがいい感じで聞こえてくるのでこちらも観てほしいです。
音楽はやりようによってはこんな魔法も出せる
──1年前の「わかんないのはいやだ」のインタビューときに「ひたすら曲作ってライブやってっていうのを繰り返してたらデビューして1年経ってた」と言ってましたよね(参照:植田真梨恵「わかんないのはいやだ」インタビュー)。それからさらに1年が経って、植田さんの中で何か変化はありましたか?
けっこうありますね。最近はとにかくアウトプットのすべてをちゃんと音楽で残したいっていう気持ちが強くなっていて。もちろん今までもシンガーソングライターとして歌ってきているんですけど、より責任感が芽生えてきたのか、これまでよりももっともっと身を入れたいと思うようになりました。やっぱり音楽が好きだし、ずっと続けていきたいので。
──そう思うきっかけは何かあったんですか?
今回の曲を書いたあとなんですけど、THE YELLOW MONKEYの復活ライブに行ったんですよ。正直、リアルタイムで聴いていた世代じゃないし、私の好きな曲もやってくれたらいいなくらいの気持ちで観に行ったんですね。そしたら私、感動しちゃって。ライブが始まって、吉井さんが歌ってる曲を聴いてたら泣けてきちゃって。
──そうなんですね。
どうして泣いてるのかと言うと、もちろん復活がうれしいとかもあるんですけど、純粋に曲がよすぎて。本当にいい曲だな、いい歌詞だな、なんでこんな曲かけるんだろうって思ったときに、たぶん吉井さんは尋常じゃないくらい曲を書く音楽家なんだろうなと思ったんですよね。常々曲を書いている中ですごく楽しいことも、とてもつらいことも音楽という形でアウトプットされていて、そうやって振れ幅のある曲が皆さんの心に届いている気がして。そう思ったら私も、とにかくいっぱい書かなきゃって。
──ちなみに植田さんがそのライブで印象に残った曲って?
「花吹雪」「球根」「カナリヤ」と続けてやったんですけど、そのときの世界観が美しすぎて泣きました。音楽ってすごいな、やりようによってはこんな魔法も出せるんだっていうのを示してもらった気がして。だとしたら私は、曲がりなりにも同じように音楽を作って表現できる立場にいるから、そこを目指さなきゃと思って。
──今度は植田さんがステージに立って魔法を出す番ですよね。7月23日に東京・赤坂BLITZ公演が控えてます。
まだちょっと「アロホモーラ」(「ハリー・ポッター」シリーズで扉にかかっている鍵を開けることができる初歩の呪文)くらいですけど(笑)。でも楽しみですね。今回はツアーではなくて一夜限りのワンマンということで、その瞬間にしかない、夢のような感じになればと思っています。視覚的にも楽しいライブになればいいなと思っているので、楽しみにしていてください。
- 5thシングル「ふれたら消えてしまう」 / 2016年7月6日発売 / GIZA Studio
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 2000円 / GZCA-4146
- 通常盤 [CD+フォトブック] / 1728円 / GZCA-4147
CD収録曲
- ふれたら消えてしまう
- ルーキー
- まわりくるもの
- ふれたら消えてしまう off vo.-
- ルーキー off vo.-
初回限定盤DVD収録内容
2015.11.30 shibuya eggman -hiki gatari live-
- a girl
- ハイリゲンシュタットの遺書
- 心と体
- さよならのかわりに記憶を消した
- クリア
- わかんないのはいやだ
植田真梨恵SPECIAL LIVE "PALPABLE! BUBBLE! LIVE! -SUMMER 2016-"
- 2016年7月23日(土)東京都 赤坂BLITZ
植田真梨恵(ウエダマリエ)
1990年生まれ、福岡県出身のシンガーソングライター。中学卒業を機に単身大阪へ移住し音楽活動をスタートさせる。2008年に1stミニアルバム「退屈なコッペリア」をリリースし、以降コンスタントに作品を発表しながらライブ活動を続ける。2012年に初のフルアルバム「センチメンタルなリズム」発売後、東京と大阪でワンマンライブを開催。2014年1月には東阪のCLUB QUATTROでワンマンライブを成功させ、同年8月にシングル「彼に守ってほしい10のこと」でメジャーデビューを果たす。2015年2月にメジャー1stアルバム「はなしはそれからだ」を発表し、東名阪と地元・福岡を回るツアーを実施した。2016年7月にメジャー5枚目となるシングル「ふれたら消えてしまう」をリリース。