音楽ナタリー PowerPush - 植田真梨恵

苦節8年、ついにつかんだメジャーデビュー

焦りが募っていった高校3年間と卒業後

──初ライブは16歳のときですよね。

そうですね。高校1年の終わりの頃ですね。

──大阪に出てきて、1年近く経って初ライブだったんですね。初めてやってみたときの感想はいかがでした?

私は歌手になるっていう夢を持ってやってきたのに、人前で歌う機会がなくてそこを見せられていなかったわけで……。やっとライブができてすごくうれしかったし、すごくギラついていたと思います(笑)。でもその後はどんどん「このままじゃダメ」って思うようになっていって。日々何か感動するものやモヤモヤするものを探しにいって、曲を書かなきゃっていう焦りが大きくなっていった高校3年間でもありました。

──高校時代にはアルバムを2枚リリースして、ライブもコンスタントにしていましたよね。高校を卒業したあとの生活に変化はありましたか?

植田真梨恵

基本的にはあまり変わらなかったですね。制作自体はずっと進めていたので、レコーディングをして、ライブをしてっていう。ただ、ますます焦っていました(笑)。高校卒業して2年も経てば20歳になっちゃうし、「ヤバいなヤバいな」と思いながら、年々焦りが募るばっかりで。そんな中で自分の曲がどうやったら広まるのかっていうことを考えていて。ちょうど「センチメンタルなリズム」をリリースした頃だと思うんですけど、曲が転調するとか、サビでテンポが変わるとか、なるべく聴く人がハッとするようなことを考えながら曲作りをしていたのがこの頃です。

──「センチメンタリズム」は「『会いたい』ばっかりのラヴソングが宗教のようにはびこる世の中」っていう歌詞がすごく印象的で。決して世間には迎合しないっていう植田さんの姿勢が伝わってくるようです。

この頃は自分にしか歌えないことをどんどん見つけようとしていましたね。

──ライブの本数も増えていますよね。18歳のときは年間25本だったのが、その後は44本、54本、53本。

とにかく武者修行的にライブハウスを回って、弾き語りをできるようになりたいっていう思いはありましたね。もともと私の思い描いていた歌手像は弾き語りスタイルではなかったんですけど。

──えっ、そうなんですか? けっこう弾き語りでやっているイメージがありました。

バンドでやって、エレキギターは持つけどアコギは別に持たないっていうイメージでした。でもやっていくうちに楽しくなって、弾き語りだからできることもあるってわかるようになりました。

焦りからあきらめへ

──植田さんは今23歳で、世間だと大学に通っていた人も卒業して社会人になっている年齢だと思うんです。中学を卒業してから大阪に出てきて8年間の月日が経ったわけで、焦りだけじゃなくて、不安になることもあったと思うのですが。

正直、20歳を超えたあたりから「もうこのままでいいかな」って思うようになりました。それまでは焦りまくっていたんですけど、メジャーにいってやりたくないようなこともやらなければいけないのであれば、インディーズでもいいからこのまま自分の歌いたい歌だけやって死んでいけたらいいやとも思ったりして。

──インディーズとメジャーの垣根がどんどんなくなってきていますもんね。

植田真梨恵

私はずっと歌手になるんだと思って生きてきたんですけど、ある意味叶えられているという思いが生まれ始めてきたんですよね。メジャーにいきたい気持ちはどんどん消滅していって、つい最近までメジャーのことなんか一切考えていなかったです。

──そうだったんですね。

実は音楽が全然面白くなくなってきていて。歌うのは楽しいんですけど、聴くのも曲を作るのも……。「こういう音楽がいいでしょ」って提示していくことに興味を失ってしまって、どんな曲を書きたいのか自分でもわからなくなっていたんです。で、どんな曲聴きたいっていうのもあんまりなくて。それってすごく悲しいことじゃないですか? だからすごく困ってたんです。

──それって何が原因だったんでしょう?

うーん……。飽きたんじゃないですかね。たぶん自分が書いてリリースした曲が増えてきて、自分の中である程度やりきった感が芽生えたというか。自分の中でいいと思える曲を書き切ったんだけど、次にどこに進めばいいかわからないし、別に進みたい方向もない。それと、自信もどんどんなくしていたんだと思います。

──ずっと続けているのに次のステージにいけないことに?

そうですね。だから私の立ち位置はここなのかもって、自分で決めようとしてたのかもしれないです。

メジャーデビューシングル「彼に守ってほしい10のこと」/ 2014年8月6日発売 / GIZA studio
[CD] 1296円 / GZCA-4140
収録曲
  1. 彼に守ってほしい10のこと
  2. ダラダラ - demo -
  3. アリス
  4. 彼に守ってほしい10のこと - off vo. -
植田真梨恵LIVE TOUR 2014 UTAUTAU vol.1
  • 2014年9月7日(日)大阪府 Shangri-La
    OPEN 17:00 / START 17:30
  • 2014年9月23日(火・祝)東京都 原宿アストロホール
    OPEN 17:00 / START 17:30
チケット一般発売日:8月16日
植田真梨恵(ウエダマリエ)
植田真梨恵

1990年生まれ、福岡県出身のシンガーソングライター。中学卒業を機に単身大阪へ移住し音楽活動をスタートさせる。2008年に1stミニアルバム「退屈なコッペリア」をリリースし、以降コンスタントに作品を発表しながらライブ活動を続ける。2012年に初のフルアルバム「センチメンタルなリズム」をリリースし、東京と大阪でワンマンライブを開催。2014年1月には東阪のCLUB QUATTROにてワンマンライブを実施した。2014年8月6日にシングル「彼に守ってほしい10のこと」でメジャーデビュー。