内田真礼×田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)|負けず嫌いな2人が念願の初対談

冬になると暗くなる

──では、2ndアルバム「Magic Hour」についてお話を伺います。今作は内田さん自身の“今”と“これから”をテーマにしたアルバムだとか。

内田 はい。アルバムの全体像は「去年のライブ、楽しかったな」という思いから膨らませていったんですよ。そこからライブで盛り上がれる曲、掛け合いができる曲がほしいと考えて制作を進めていって。あとは大切な人に対する気持ちや、「自分にとって本当に大事なものってなんだろう?」という思いから生まれた曲もありますね。

──なるほど。「take you take me BANDWAGON」はまさにライブで盛り上がれそうな曲ですね。

田淵 そういう曲になりましたね。最初にもらったテーマはもっと暗い感じだったんですけど。

内田 もしかして、アレですか? 私の周りから人がいなくなるっていう……。

田淵 そうそう。内田真礼チームのスタッフが異動することになって、それを真礼ちゃんが悲しんでると。「『私は全員連れて行きたいんです』と内田さんが言ってます」とプロデューサーから聞いて。

左から内田真礼、田淵智也。

内田 そうなんですよ。長いこと一緒にやってきたのに、会社の都合でいなくなっちゃうのかと悲しくなって。レコード会社の人、事務所のスタッフ、クリエイターの皆さんも含め、近くにいる人にはいなくなってほしくないんです。すごく独占欲が強いんですよ、私。友達でも仕事関係の人でも、1回つながった人は離したくない。特に冬になると、そういう気持ちが強くなっちゃうんです。

田淵 なんで? 寒いから?

内田 そうかも。私、12月から3月くらいまでは暗いんです(笑)。ただ、そういうマイナスな部分や落ち込んでる姿を人には見せたくないんですよね。

──確かに「take you take me BANDWAGON」はすごく明るい曲で、マイナスな気持ちをプラスに転じていますね。

田淵 初期の頃からそうだった? 以前は暗い気持ちをそのままどんどん歌詞に出していたような……。

内田 最初の頃はもっと暗かったですね、確かに(笑)。

田淵 「PENKI」の制作のときにスタッフの方から「これ、本人が書いた歌詞なんですよ」って見せてもらったことがあるんだけど、それがめちゃくちゃ暗くて。

内田 奈落の底に落ちるようなやつですね(笑)。その歌詞、「わたしのステージ」という曲の第1稿なんです。「曲に合う、いい歌詞が書けた!」と思ってたんだけど、救いようがないくらい暗くて。それをポップに表現した曲が、田淵さんに作ってもらった「Hello, future contact!」なんですよ。

田淵 真礼ちゃんが書いた歌詞を読んで言いたことはわかると思ったし、ポップな曲ならその歌詞を表現できるなと。「憧れていた観覧車を降りたくなるけど」というフレーズは、真礼ちゃんの「わたしのステージ」の第1稿からの引用なんです。

内田 そのフレーズを歌うときは、気持ちが入ります。でも、あのときの暗い感じからは脱皮したんですよ。去年の春くらいからは前向きになっているし、それは今回のアルバムにもすごく出ていると思います。

田淵さんも私もちょっと我慢してる曲

──アルバムのリード曲「セツナ Ring a Bell」も素晴らしいですね。これは内田さんにとって新機軸の曲では?

内田 そうなんです。最初にこの曲を聴かせてもらったときは「え、失恋の曲?なんで?」と思いました。

田淵 「切ない曲を書いてほしい」というオーダーに応えたんだけどね(笑)。自分の好きなメロディで作るような“かわいい内田真礼の曲”とは違うチャンネルで書いたんですよ、この曲は。自分の話になって申し訳ないけど、最近、作家としての自分の癖がわかってきて。個人的に好きなメロディに振り切ると、どうやらディレクターの受けがよくない傾向があるみたいなんです。完成した状態で聴いてもらったら説得できるんだけど、「こんな感じの曲です」という段階で提出する場合は、シンプルなメロディのほうが伝わりやすくて、「セツナ Ring a Bell」でもそういったやり方をしました。

内田 そうなんですね。

田淵 自分の癖をわかったうえで、チャンネルを切り替えて曲が書けるようになったのは、作家としても少し成長できたのかなと。それだけが正しい道だとは思ってないですけどね。自分の欲を120%出した曲も作っていきたいし、今は両方を使い分けている時期なんだと思います。「take you take me BANDWAGON」は好き放題作った曲ですからね(笑)。

歌に感情を引っ張られる体質

──「セツナ Ring a Bell」を実際に歌ってみたときの手応えはどうでした?

内田 アルバムの新曲の中で最初にレコーディングしたんですけど、「みんな、私が失恋している姿を見たいのかな?」「この歌詞をどう捉えたらいいんだろう?」という戸惑いがあって。レコーディングでもいろいろ試してみたんですけど、結果的にはそんなに悲壮感がなくて、明るさを感じてもらえるように歌いました。気持ち的に1歩下がって、声を出しすぎないようにしていると言うか。この曲に関しては、田淵さんも私もちょっと我慢してるのかも。

田淵 そうかもね。

内田 「セツナ Ring a Bell」ができあがったときに思ったのは「実際の内田真礼よりも2、3歳くらい上の雰囲気だな」ということなんです。ちょっと歳上の感じ、成長した部分を見せるということは、アルバムの全体像にもつながっていて。そこにたどり着くまでは大変でしたけどね。レコーディングのときに田淵さんがいなかったから、迷って迷って……。みんなで「田淵さんは何を考えて、これを書いたのか?」って話し合ったんですよ(笑)。

田淵 ははははは(笑)。

内田 「田淵さんの中にある女性の感覚が出ているのかな?」「実際、田淵さんにこういう経験があるのかもしれない」とか、いろいろ分析して。

田淵 自分の経験というより、想像して書くほうが得意なんですけどね。「この女性はこういう生活をしていて……」とか考えて。2番に「飲めもしないコーヒー もったいないから捨てらんないし」という歌詞があるんですけど、それは槇原敬之さんの「紅茶のありかがわからない」(「もう恋なんてしない」の歌詞の一節)みたいな“あるある”話のつもりだったんです。でも、ちょうどその頃に真礼ちゃんがTwitterで「コーヒーおいしいです」とつぶやいてて。

内田 ははははは(笑)。

田淵智也

田淵 「やばい。この作詞家、内田真礼のことなんもわかってねえなって思われる」と心配になって別案も出したんですけど(笑)、仕上がりを聴いたらそのまま使われていたっていう。

内田 そこもいろいろ考えたんですけど、結果「飲めもしないコーヒー もったいないから捨てらんないし」という歌詞が曲に一番ハマったんですよ。

田淵 内田真礼がコーヒー好きかどうかは置いておいて、「飲めもしないコーヒー もったいないから捨てらんないし」は失恋を比喩で表現した歌詞だからね。そのことはここでアピールしておきたい(笑)。

内田 この歌詞を私が書いていたら「何があった?」「髪を切ったのも、もしかして……」と思われるかもしれないけど(笑)、こういう曲も歌えることが楽しいんですよね。全然暗い曲ではないですし。

田淵 そうですね。これも自分の作風だと思うけど、暗いまま終わるのが嫌なんですよ。最後には気持ちを持ち上げたいと言うか、1番と2番は暗くても、Dメロで少し上がって、ラストはポジティブな方向に向かっていきたいので。特に真礼ちゃんに曲を書くときは、切ない路線であってもそのままで終わりたくない。自分がやるからには、ポップな要素は保っておきたいんですよね。

内田 もっと暗い曲だったら歌えなかったかも。レコーディングは冬だったし(笑)。私、けっこう歌に感情を引っ張られちゃうんですよね。

田淵 役者体質なんだね。

内田 声優のお仕事もそうで、自分自身がそのときに演じてるキャラっぽくなっちゃうんですよ。付き合ってる人によって雰囲気が変わる人っているじゃないですか。それと同じような感じで、キャラによって女の子っぽくなったり、ボーイッシュになったりするんです。

内田真礼「Magic Hour」
2018年4月25日発売 / ポニーキャニオン
内田真礼「Magic Hour」Blu-ray付き初回限定盤

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4860円 / PCCG-01668

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内田真礼「Magic Hour」DVD付き初回限定盤

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4104円 / PCCG-01669

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内田真礼「Magic Hour」通常盤

通常盤 [CD]
3240円 / PCCG-01670

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CD収録曲
  1. My Star is Here!!
  2. +INTERSECT+
  3. aventure bleu
  4. Resonant Heart
  5. Agitato
  6. ロマンティックダンサー
  7. セツナ Ring a Bell
  8. TickTack…Bomb
  9. シンボリックビュー
  10. magic hour
  11. c.o.s.m.o.s
  12. take you take me BANDWAGON
  13. Step to Next Star!!
初回限定盤付属Blu-ray / DVD収録内容
  • 「セツナ Ring a Bell」ミュージックビデオ、メイキングほか
全形態共通 封入特典
  • UCHIDA MAAYA「Magic Number」TOUR 2018 チケット優先販売申込券
    (2018年5月22日締切)

UCHIDA MAAYA
「Magic Number」TOUR 2018

  • 2018年6月17日(日)
    福岡県 福岡サンパレス
  • 2018年6月24日(日)
    東京都 東京国際フォーラム ホールA
  • 2018年7月1日(日)
    大阪府 大阪国際会議場 グランキューブ大阪
内田真礼(ウチダマアヤ)
内田真礼
東京都生まれの声優、アーティスト。2009年に日本ナレーション演技研究所在籍中にOVA「ぼく、オタリーマン」で声優デビューを果たし、2012年4月より放送された「さんかれあ」で初めてアニメ作品の主役を務めた。同月には特撮テレビドラマ「非公認戦隊アキバレンジャー」で実写女優デビュー。同年10月からオンエアされたテレビアニメ「中二病でも恋がしたい!」の小鳥遊六花役では多くのアニメファンからの人気を集めた。2014年4月にテレビアニメ「悪魔のリドル」のオープニングテーマである「創傷イノセンス」をシングルリリースし、歌手活動を開始。2015年12月には1stアルバム「PENKI」を発表した。2016年2月に東京・中野サンプラザホールで初のワンマンライブ「Hello, 1st contact!」、2017年2月に東京・国立代々木競技場第一体育館で2ndワンマンライブ「Smiling Spiral」を開催。2018年4月25日に2ndアルバム「Magic Hour」をリリースし、6月からは福岡、東京、大阪で初のワンマンツアー「UCHIDA MAAYA『Magic Number』TOUR 2018」を行う。
田淵智也(タブチトモヤ)
1985年4月生まれの作曲家、ベーシスト。スリーピースロックバンド・UNISON SQUARE GARDENでベースを担当。音楽プロデュースチーム・Q-MHzのメンバーとしても活動している。UNISON SQUARE GARDENでは一部を除きほとんどの楽曲の作詞作曲を手がけており、「シュガーソングとビターステップ」などのシングルをヒットさせたほか、2015年7月には東京・日本武道館での単独公演を成功させた。現在、ニューアルバム「MODE MOOD MODE」を携えた全23公演の全国ツアーを開催している。Q-MHzは2016年1月にオリジナルアルバム「Q-MHz」を発表し、その後小松未可子らのサウンドプロデュースで活躍。田淵自身も田所あずさや内田真礼をはじめとする多くのアーティストに楽曲を提供している。