つしまみれ|私たちは、もっと人気があっていいはず

つしまみれが11月11日にミニアルバム「ラッキー」をリリースした。

結成20周年を迎えた昨年、つしまみれはベストアルバム「まみれマニア20」のリリースや、ライブツアー「つしまみれ結成20周年20本ツアー」とそのファイナル公演「結成20周年記念ワンマン」の開催など、キャリアを総括する集大成のような1年を駆け抜けた。今年は気持ちも新たにバンド活動を仕切り直す絶好のタイミングだったはずが、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって思わぬブレーキをかけられる形となった。

本作はそんな逆境を背景に制作されながらも、閉塞感を一切感じさせないどころか、これまで以上に能天気とすら言えるほどの痛快な作品に仕上がっている。音楽ナタリーでは、まり(Vo, G)、やよい(B)、まいこ(Dr)の3人にインタビューを行い、このポジティブなオーラをまとうアルバムがいかにして生まれたのかを探った。

取材・文 / ナカニシキュウ 撮影 / 岩佐篤樹

毎日ライブの生活がしたい

──つしまみれは海外での活動も多いバンドですし、コロナの影響が人並み以上に大きかったんじゃないかと思います。実際のところ、どんな感じでした?

まり(Vo, G) 4月のオーストラリアツアーと6月のヨーロッパツアーが中止になって、ガッカリでした。向こうで人気のガールズパンクバンドの子たちと回れるっていう話だったのに。

やよい(B) オーストラリアは初めてだったので、かなりワクワクしてたんですけど。

まり いつ中止になったんだっけ? 3月まで待ってたよね。当時はまだコロナがどんなものか誰もわからなかったから。

やよい 3月前半まで待ってた気がする。ヨーロッパツアーも4月頃はまだ「どうなるんだろう?」って話してた。

まり 海外のブッキングマネージャーも「もうちょっと待って! ギリギリまでやるつもりでいて!」みたいな感じで。なので全然次のことが決められなくて困りました。今は、「ああ、また行きたいなあ」「体がなまるぜ」って感じです。

やよい 毎日ライブの生活がしたい。

まり ツアー中は余計なことを考えなくて済むから。

つしまみれ

──ずっと家から出られなくて、余計なことを考えちゃいました?

まり 幸い、私は余計なことを考えないほうに行けました。「休めばいいや」って。去年20周年ツアーをやり切って、1回仕切り直そうと思ってたタイミングだったし、バンド自体はけっこうポジティブに「今はしょうがないから休もう」と切り替えられたんじゃないかな。無理にやってもしょうがないし。

まいこ(Dr) 体はすごく休まりました(笑)。

まり でも「仕切り直す時間、長!」みたいな(笑)。「そろそろやりたいんですけど」みたいに思ってたら「無観客ライブ配信とかできるよ」って話が出てきて。それで「今までやっていなかった方向性のライブを組もう」ということで、着たことない感じの衣装を着て、ポーズを決めて謎の演劇タッチにして、MCなしで曲順をバッチリ決めたライブをやったんです。照明やPAも、普段は特別な公演のとき以外はハコの方にお願いするんですけど、せっかくだから今までお世話になった方々を呼んで。そんなふうにやったら、1本のライブにすごく集中できるようになった。いいほうにいいほうに向かって行きました。

──なるほど。では、この期間中に精神を病んだりすることも特になく?

やよい 病んではいないですね。

まり 3月から4月頃は外にも出られなかったし、メンバーにも会えなくて、さすがにちょっと「これからどうなるんだろう?」と思ったことを今ちょっと思い出しましたけど、まあその程度というか。

まいこ マイペースにやれていると思います。

みんな、そんなに悩むなよ

──今作の制作はどんなふうに始まったんですか?

やよい 「ツアーができるようになる日を待っていても埒が明かないな」と気付いてから曲を作り始めて。で、作っている過程で「やっぱり作ったからにはリリースしたいね」という話になり、だったら急げと(笑)。「こんなにのんびりしている場合じゃない」と急に忙しくなった感じです。

やよい(B)

──何か急ぐ理由があったんですか?

やよい 「THE給与」という給与前払いマシンを販売している会社があるんですけど、そこが私たちの「THE 給料日」を気に入ってくれて。それ用に歌詞を書き換えてテーマソングみたいにした「THE 給料日 -ぼくたちが本当に必要なのは現金だバージョン-」を7月に配信リリースしたので、それを入れたアルバムを作ろうということになったんです。それならこの曲がホットなうちに、年内には出したいよねと。

──手元の資料には、アルバムのテーマが「食・愛・平和・金・運」であると書かれています。この字面を見ればだいたい言いたいことは伝わるんですけど、一応補足説明をお願いできますか?

まり 20年前の結成当初は食べたものとか恋バナとか、普段のおしゃべりの中で出てくるようなテーマを曲にしていて。今はいろんな曲を作るようになったけど、今回は初心に返ってというか。

やよい 「ノリで曲を作ろう」っていうところから「海苔」という曲を作ったり(笑)。

まり 「疫病退散ソング」も、「アマビエの曲作ろうか」って軽いノリで作り始めたら「ヤバい、アマビエもう廃れてきた!」とか(笑)。

やよい それも慌ててリリースする理由の1つなんですけど(笑)。

──そうやって自然に出てきた曲に、原点回帰のような雰囲気があったと。

まり そうですね。世の中がどうも重苦しい雰囲気なので、「みんな、そんなに悩むなよ」ということを提示できればいいなと思って。