ナタリー PowerPush - つしまみれ
世界を揺るがすガールズバンドが夏全開の新作でメジャーに突進
つしまみれがシングル「タイムラグ」に続いて、メジャー1stアルバム「あっ、海だ。」を6月17日にリリースした。国内外のライブシーンで精力的な活動を続けてきた彼女たちの新作は、さまざまな要素が凝縮された、“こ れぞつしまみれ!”と言える1枚。従来のファンだけでなく、この新作から彼女たちに触れる初心者にも強烈にアピールする内容に仕上がっている。
今年結成10周年を迎えたつしまみれ。今回ナタリーは、みずえ(Dr,Cho)、まり(Vo,G)、やよい(B,Cho)の3人にインタビューを敢行。バンド結成時から今日までの軌跡やメジャーデビューに対する思い、新作の魅力などについてたっぷり話を聞いた。
取材・文/西廣智一
BLANKEY JET CITYのコピーバンドからスタート
──つしまみれはここ数年いろんなイベントやフェスで目にする機会が増えてますが、実は今年で結成10年なんですよね。
まり 10年前にゼロから始めた感じだよね(笑)。
やよい 私は本当に、ベースの弾き始めイコールつしまみれです。
みずえ 結成からは10年なんですけど、本格的にオリジナル曲を始めたのは3年くらいコピーバンドをやった後なんです。
──最初に3人でどんな曲をコピーしたんですか?
まり BLANKEY JET CITY。私がBLANKEYのライブを赤坂BLITZで観てすごい感動して、これは女3人でやったら絶対にカッコいいはずだと思って、2人に声をかけたんです。
やよい 私が高校生のときに好きだった美容師さんがBLANKEYを好きだったから、ちょっと気になってたんだよね。
まり アルバム1枚持ってたよね?
やよい そう。で、その美容師さんに「大学受かったから千葉に行っちゃうんだ」って言ったら、「LIVE!」というCDのスコアをくれて。だから、最初に持ってたBLANKEYのCDが「LIVE!」な んだよ。
みずえ 初めて聞いた(笑)。
やよい だから誘われたときに「若干知ってる」って答えたの。
まり そういう軽いノリから始まったので、下手にメラメラしていないというか。でも3人とも頑張り屋さんだったので、上手くいかなかったら反省して練習してましたね。その調子で20曲くらい覚えて、大学を卒業する頃にはオリジナル曲も作り始めたんです。
お互いを尊敬してるから悲惨ないざこざにはならない
──バンドを始めた頃の目標って覚えてますか?
みずえ 世界制覇って言ってなかった?
やよい まだCDを出してないときは、音源をCD-Rにすること自体がうれしかったし、そうすると今度はお店で売ってほしいという欲求が出てくる。それが達成できたら、次は海外でも出したい、だったらメジャーデビューもしたいと、目標はどんどん更新されていく感じでしたね。
まり 自分は漠然とメジャーデビューに憧れがあって、メジャーで出せることが決まったときも「やっとメジャーデビューできる、バンザーイ!」と思ったけど、気付いたらバンドを初めて から10年も経ってたんですよ(笑)。
──たとえば、長く続けているとメンバーチェンジをするバンドもあるじゃないですか。つしまみれこの10年間、大きな喧嘩はなかったんですか?
まり お互いを尊敬してるから、そこまで悲惨ないざこざにはならないんですよ。だってみんな良い子だし。
みずえ 第三者みたいだよね(笑)。
まり 3人とも「メジャーデビューしたらお父さんとお母さん喜ぶかな」とか、そういう価値観が似ている。プライベートもひっくるめて仲がいいし、やっぱり好きなんだね。
やよい 最近毎日一緒だしね。
みずえ 週7で一緒、みたいな。
やよい プライベートで大切な用事があったら、「それ、行ってこい!」って背中押してくれるし。
まり 「お母さんのところ行ってこい!」「家族旅行? それは大切だ!」みたいなね。
みずえ たとえば、自分が何らかの理由で活動ができなくなったら、他の2人も止まるし、その家族も止まるわけですよ。さらに、事務所やレコード会社の人もみんな止まってしまうわけで 、これは責任重大だと思ってやってます(笑)。
アメリカ人は曲の面白さをダイレクトにわかってくれた
──2004年頃から海外ライブも増えてますよね。最初はどういうきっかけで、向こうでライブをやることになったんですか?
まり 1枚目のアルバム「創造妊娠」を出してくれたBENTEN Labelさんが協力してくれたおかげで、実際に行くことができました。ロサンゼルスの「Japan Girls Night」みたいなイベントに BLEACH、Petty Booka、noodlesと一緒に出て。それまで私たち、10人クラスのライブ経験しかなかったのに、ロスでいきなり200人の前で一番目に出してもらったらすごいウケたんですよ。「ああ、アメリカ人わかってるー」「いけるかもー」って感じて、それがきっかけですね。
やよい よく「アメリカとか、どうやったら行けるんですか?」みたいなことを聞かれるんですけど、「いや、お金があったら行けるし」(笑)。「飛行機代出せばいいじゃん、そうしたら行けるよ?」と答えるんですよ。
まり その頃に本気でつしまみれに打ち込もうってことになって、仕事を辞めて東京に移って、バイトしながらバンドを続けました。その後もアメリカに行くチャンスがあったら年に2回とか行って、1カ月半ツアーしたりしました。
──海外で最初からウケたというのは、どういうところが気に入られたんだと思いますか?
まり 当時から曲の構成もヘンテコで、アメリカの人たちはそういう曲の面白さをダイレクトにわかってくれた気がするし。気に入ってくれたら、たとえひとりでも踊り狂うんですよ。
みずえ つしまみれの気質もアメリカに合ってるんじゃないかな。日本にいるとアメリカが恋しくなってまた行きたくなるし、お客さんも待っていてくれるしね。これからもアメリカに限らず、世界中に行ってみたいと思ってます。
つしまみれ
1999年に千葉大学のバンドサークルで出会った、みずえ(Dr,Cho)、まり(Vo,G)、やよい(B,Cho)により結成。やよいの苗字「つしま」の「つし」と、まりの「ま」、みずえの「み」、3人が「まみれ」る、というコンセプトからバンド名が付けられる。コピーバンドを経て、オリジナル楽曲の制作を開始。2001年から大学外でもライブ活動をスタートさせる。2004年の初渡米以来、コンスタントに海外ツアーを開催。さまざまな土地でステージに立ち話題を集 めるなど、ワールドワイドな活躍を見せる。2009年4月、前代未聞の300円シングル「タイムラグ」でメジャーデビュー。ポップでキュート、少し毒のあるガールズロックで音楽ファンを惹きつけている。