ナタリー PowerPush - つじあやの

メガネの向こうはどんな世界!? あやの視線で生まれ変わったJ-POPの新しい形

エンジニアも驚愕の“手作りディレイ”

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——細かい話ですが、アレンジのもとになる作業はどういう機材を使って、どのように行っているんですか?

「SWEET MEMORIES」と「丘を越えて」は根岸(孝旨)さん、「戦場のメリークリスマス」はトルネード竜巻の曽我(淳一)くんといっしょに作りました。あとは、だいたい自分で「Pro Tools」っていう機材を使って。

——つじさんがパソコン機材を使いこなしているというのはなんとなく意外ですね。

ふふふ。でもホント1カ月ぐらいは自分の部屋でひとりでやってましたよ。

——ある程度のところまで自分ひとりで作るんですか?

ほとんど完成に近いところまで作ってます、実は。イメージが合わないみたいですけど、案外部屋のなかにこもるタイプなんです(笑)。とはいってもあまり機材には凝らないし、やり方も我流なんですけどね。たとえばディレイ(残響音を加える効果)は、普通は専用のマシンを使うんですけど、私はウクレレの音を3つ録って、位置をずらして、ボリュームを調節して作るんです(笑)。エンジニアさんには「これどうやったの!?」って言われるんですけど「いや、重ねて録っただけです」って。

——すごい。これは意外なお話ですね。

すごくちまちましてますよ、ホントに。新しい機材を買い足したり、音色を探ったりすることには興味がなくて、イメージを伝えるための音をカッチリ作りたいだけなんですよ。

——野外レコーディングは、どういう機材で録ってるんですか?

今回はほとんどDAT(小型のデジタルカセットテープ)で録りました。前はPro Toolsを野外に持ち運んでやってたんですけど、すごく大変で。前はマイクもいっぱい使ったんですけど今回は2本だけ。

——フットワークが軽くていいですね。

そうですね。しかも意外とこっちのほうが臨場感が出たりするんです。

トリビュートは“やり逃げ”

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——今回、それぞれの曲のオリジナルアーティストからの反応は?

まだいただいてないですね。でも坂本龍一さんの「戦場のメリークリスマス」は例外で、実はカバーのお願いをしたときにすぐにはOKが出なくて「できあがったものを聴いてから判断します」ということだったんですよ。すごく心配だったんですけど、聴いてもらった翌日にOKの返事がきました。でもどこが良かった、というのはまだ聞けてないんです。

——それは気になりますね。

いやあ、もうOKしてくれただけで十分(笑)。スタッフと「ホントによかったね」って言い合ってました。

——やはりカバーした側として、本人の反応は気になりますか?

もちろん気にはなるんですけど、案外届いてこないんですよね。前作のときもそうだし、トリビュート企画に参加したときなんかもそう。何年来の謎、みたいな感じで(笑)。スピッツの「猫になりたい」をカバーしたあとも何度かライブでごいっしょしてるんですけど、一切その話は出ないし、自分から聞くのもいまさら……(笑)。

——つじさんはトリビュート企画にも多く参加していますが、今回のようにカバーアルバムを自分で企画するのとトリビュートに参加するのとでは、どのようなが違いがありますか?

トリビュートの場合は、「やり逃げ」(笑)? ……という言い方はほんまはよくないけど、好きな曲を好きなアレンジで作ってあとはおまかせ。その前後にどんな曲が来るのかもわからないから「お願いしまーす」って。でも私は弾き語りが多いから、いつも他のアーティストさんに迷惑かけてるんじゃないかなと思うんですよ。

——バランス的に?

私の曲で急に世界が変わっちゃうので、みなさんイヤなんじゃないかなって。そういった意味でもトリビュートは「やり逃げ」ですね(笑)。

デビュー10周年に向けて

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——つじさんは来年でデビュー10周年を迎えますが、こういうことをやってみたい、という希望や抱負はなにかありますか?

10年目を迎える前に、自分を見つめ直す意味でやっておきたかったのが、まさにこの「COVER GIRL 2」だったんです。これから年末のツアーに向けては「COVER GIRL 2」といっしょにがんばって行きたいです。

——では来年からはオリジナルのつじあやのが始動していくというイメージですね。

そうですね。

——具体的に「こういうことをやろう」と決めていることは?

ぜんぜん具体的なことは決まってないんですけど、地元の京都でなにかできたらな、というのは考えてます。まだまだこれから。楽しみですね。

ニューアルバム『COVER GIRL 2』

2008年9月24日発売 / SPEEDSTAR RECORDS / [2CD+DVD] 初回限定コンプリート・パッケージ:3900円(税込)VIZL-305 / [2CD] 通常盤:3150円(税込)VICL-63078~9

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DISC1 "tokyo side" 収録曲
  1. come again(m-flo)
  2. SWEET MEMORIES(松田聖子)
  3. 丘を越えて(藤山一郎)[映画『丘を越えて』主題歌]
  4. 戦場のメリークリスマス(坂本龍一)
  5. DOWN TOWN(シュガー・ベイブ)
  6. 渚のシンドバッド(ピンクレディー)
  7. 頼りない天使(FISHMANS)[映画『ネコナデ』主題歌]
DISC2 "kyoto side" 収録曲
  1. 君は天然色(大滝詠一)~鴨川土手より~
  2. ルージュの伝言(荒井由実)~嵐山電鉄車内より~
  3. Happiness(嵐)~龍谷大学・深草キャンパスより~
  4. 悲しみは果てしなく(ザ・ディランII)~Coffee House 拾得より~
  5. 美しく燃える森(東京スカパラダイスオーケストラ)~下鴨神社より~
  6. TENNESSEE WALTZ(Pee Wee King and His Golden West Cowboys)~カミ家珈琲より~
  7. 恋におちて ~Fall in love~(小林明子)~貴船荘・川床より~
DVD "film kyoto side" 収録内容(初回限定コンプリート・パッケージのみ)
  • 京都で3日間行われた7曲のレコーディング映像
  • メイキング&インタビュー
  • Coffee House 拾得 ミニライブ映像
「come again」PV
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プロフィール

つじあやの

1978年京都生まれ。1998年発売のインディーズ盤「うららか」を経て、1999年9月にミニアルバム「君への気持ち」でメジャーデビューを果たす。眼鏡をかけたルックスとウクレレ弾き語りというスタイルで話題を集め、リリースを重ねるごとに着実に人気を高めてく。そして2002年スタジオジブリ制作のアニメ映画「猫の恩返し」主題歌に、彼女の「風になる」が起用。このロングヒットにより、お茶の間にもその楽曲が浸透。その後もカバーアルバム「COVER GIRL」や初のベストアルバム「つじベスト」がスマッシュヒットを記録。2007年には柳田久美子や鈴木亜美といったアーティストのプロデュースも手がけている。