東京スカパラダイスオーケストラ“VS.シリーズ”総力特集|9人で語るこれまで、そしてVS. 稲葉浩志 (3/4)

後編:そして“VS. 稲葉浩志”

積み重ねてきてよかった

──新作に稲葉浩志さんが参加すると聞いて驚きました。稲葉さんから「一緒にやりたい」と言われたそうですね。

谷中敦(Baritone Sax) 「ap bank fes」(2025年2月に東京ドームで開催された「ap bank fes '25 at TOKYO DOME~社会と暮らしと音楽と~」)に出演させてもらって、全部終わって帰ろうとしてたときB'zのスタッフさんが声をかけてくださったんです。「2人がお会いしたいと言っていまして」って。びっくりしましたけど、以前B'zのアルバムにスカパラホーンズで参加したこともあったので、すぐに楽屋に伺って「その節はありがとうございました」と挨拶して。

東京スカパラダイスオーケストラと稲葉浩志。

東京スカパラダイスオーケストラと稲葉浩志。

──1994年のアルバム「The 7th Blues」ですよね。当時から交流が続いていた?

谷中 いや、そのときはちらっとお会いしただけでずっとご無沙汰してました。いつかご一緒したいと思いつつ、やっぱり遠慮しちゃって(笑)。で、そのフェスの楽屋で話していたら稲葉さんが「いつかスカパラさんと一緒にやりたいです」と言ってくださって、それを聞いた松本さん(松本孝弘 / B'z)も「いいんじゃない?」って。動揺しながら「ホントですか? ぜひ!」って答えて、メンバーみんなが待ってるワゴン車に戻って報告しました。車が揺れました(笑)。

谷中敦(Baritone Sax)

谷中敦(Baritone Sax)

加藤隆志(G) その大役は谷中さんしかできないよ(笑)。

大森はじめ(Per) 「まさか!」って感じですよね。

川上つよし(B) その直後に「いつやります?」って話して。

谷中 すぐ準備しましたよね。

GAMO(Tenor Sax) こういうのってご縁だから。タイミングもよかったしね。

谷中 稲葉さんは桜井くん(桜井和寿 / Mr.Children)と仲良しだから、それもあって近く感じてくれたのかもしれないですね。今までのコラボ曲を聴いて自分も参加してみたいと思ってくださってたらしいんで、積み重ねてきてよかったなって。

リハ回数は過去最多の4回

──いざ稲葉さんとやるとなると、じゃあどんな曲をどうやるんだって話になりますよね。

大森 とても悩みました。まずはホワイトボードに候補曲を書き出して。

茂木欣一(Dr) 選曲、めちゃくちゃ時間かけたもんね。

茂木欣一(Dr)

茂木欣一(Dr)

──その結果「Action」と「タイムカプセル」の2曲が選ばれたと。

加藤 稲葉さんが選曲も一緒に考えてくれたんです。4回もリハーサルに来てくれて。

大森 リハの回数は今までで一番多かったよね。

沖祐市(Key) 最初のリハのとき、狭いスタジオしか空いてなかったんですよ。稲葉さんが来る日にもかかわらず。

谷中 全員で「狭くてすみません!」と謝ってた(笑)。

 稲葉さんはそういうときも面白がってくれるんですよね。

GAMO 「作業に入る前にワンマンライブを観たい」と言って、僕らのライブにもわざわざ来てくれたしね。

加藤 当日ゲストだった永積くん(永積崇 / ハナレグミ)と中納さん(中納良恵 / EGO-WRAPPIN')にも挨拶してた。

加藤隆志(G)

加藤隆志(G)

谷中 俺らが紹介する前に行ってたもんね。2人ともびっくりしたんじゃないかな(笑)。

──丁寧な方なんですね。

谷中 しかもすごく謙虚なんですよ。最初のリハーサルでも「僕そんなにうまくないんで期待しないでください」と言われて、いやいやそんなことないでしょって(笑)。「(スカパラは)いろんな方々のプラットフォームみたいになってますよね」「自分も参加させてもらえて光栄です」って、それをナチュラルに言うんです。

──デビュー時期を考えるとスカパラとB'zはほぼ同期ですよね。世代も近いしフラットに付き合えそうな気もしますが。

北原雅彦(Tb) いやいや、やっぱりあの歌唱力はね(笑)。

加藤 当時スカパラとB'zは音楽シーンの中での居場所が違っていたというか、あんまり交わることがなかったんですよね。今はそういう垣根もどんどんなくなってますけど。

声を出す前に勝負が決まってる

──そんな経緯を経て完成した「Action (VS. 稲葉浩志)」は、GAMOさん作曲のアッパーなロックチューンです。

GAMO とにかくアガる曲がいいだろうなっていうイメージはありました。

加藤 うん。ビートが鳴った瞬間に全員が「この曲待ってた!」って盛り上がれるキラーアンセムを作らなきゃと思ってましたね。だって「ultra soul」が始まったらもう完全に全員幸せになるじゃないですか。

大森 選曲の時点では「ちょっと稲葉さんっぽくない曲も持っていこうか」という案もあったんですけど、結局何をやっても稲葉さんになるんですよね。

──VS.シリーズを対決と捉えるなら稲葉さんは最強の敵、圧倒的なラスボスと言えそうです。

茂木 そう、めちゃくちゃ強いんです(笑)。

GAMO 実際、僕らとのリハーサルで稲葉さんが入れてくださったメロディが曲の主要な部分になってますから。

GAMO(Tenor Sax)

GAMO(Tenor Sax)

谷中 よりパワフルにエネルギッシュになりました。

加藤 稲葉さんが歌うと全部キラーフレーズになっていくんで。

茂木 歌い始める前、息吸って声を出す前に勝負が決まってるんだよね。

──アーティスト同士、喰うか喰われるかの真剣勝負ということですね。

NARGO(Tp) それで言うと今回めちゃくちゃ喰われたな!って思います(笑)。でもVS.シリーズは“喰われる快感”っていうんですかね。こちらとしてもそれを味わいたい、喰われたいって気持ちでやってるんで。

茂木 谷中さんの歌詞の「遊ばなきゃ遊ばれちゃうゲームだろ?」。これがVS.シリーズのテーマなんだろうね(笑)。

2025年9月4日更新