東京スカパラダイスオーケストラ“VS.シリーズ”総力特集|9人で語るこれまで、そしてVS. 稲葉浩志 (2/2)

「私たちのカノン (VS. Chevon)」

──そこからVS.シリーズ第2弾となる「私たちのカノン (VS. Chevon)」まで約3年間のブランクが空きますが、これはどうして?

加藤 やりたいなっていう思いは頭の隅にずっとあったんですけど、ちょうどバンドが35周年に向かうモードになって、フィーチャリングをやったり甲子園ライブの準備に入ったりで。

川上つよし(B) 35周年のライブの事で頭もスケジュールもいっぱいで。だから甲子園ライブが成功して新しい年に何をしようかってときに改めて「あのシリーズ再開しよう!」となったんですよね。

──第2弾の相手にChevonが選ばれたのはどういう理由だったんでしょう?

加藤 やっぱり注目度ナンバー1の新人バンドですからね。

NARGO 僕は香取慎吾さんとコラボしてたのをテレビでたまたま観て、インパクトある人たちだな、一緒にできたらいいなと思ってました。

加藤 ただそれまで接点があったわけじゃないから、僕らにとってもチャレンジというか思い切った決断ではあったんです。それでプロモーションで北海道に行ったとき、僕とGAMOさんの2人でメンバーに会いに行ったりして。

GAMO(Tenor Sax) はじめましてで一緒に食事に行ったんですよね。そしたら若いけど懐が深いというか、世代は違うけど話が合うなって。

GAMO(Tenor Sax)

GAMO(Tenor Sax)

川上 最初はもっと自分の世界に没入しているタイプなのかと思ったら全然オープンマインドな人たちでした。すごくバンドマンっぽいというか、なんでもアイデアをぶつけられるから制作はやりやすかったです。

──一緒にスタジオに入ったりもしたんですか?

加藤 Chevonが北海道在住だから回数は限られてたけど、こっちに来たときは一緒に音を出してましたね。基本は音源データのやりとりで作りつつ、実際に演奏してみてわかることもたくさんあるので。例えばベースラインは以前バンドコラボのときはベーシスト2人で同じフレーズを弾いてたんです。でもこの曲は川上さんが弾くパートとタツヤくん(オオノタツヤ / B)が弾くパートを分けていて、そうすると1曲の中で景色が変わって面白いんですよね。

大森 ライブのとき、川上さんうれしそうだったよね。自分のベースが休みのときに踊ってるんですよ(笑)。

──歌詞は谷中さんとChevonの谷絹茉優さん(Vo)の共作ですね。

谷中 基本のアイデアはこちらから提示して、やぎちゃん(谷絹茉優)もそのテーマに共鳴して詞を書いてくれました。歌詞の世界観は生かしつつ、やぎちゃんが自分らしい言い回しに書き換えてくれたり、そういうのも面白かったですね。描いてる情景は同じなのに言葉を入れ替えることでずいぶんChevonっぽくなるんです。しかも修正が1日かけてとかじゃなく、歌詞をLINEで送ったら30分くらいですぐに戻ってきたりして、やっぱり頭の回転速いな、クレバーだなって思いながらやってました。

沖祐市(Key)

沖祐市(Key)

第3弾「クローズド・アーカイヴ VS. TK (凛として時雨)」

──そして第3弾は「クローズド・アーカイヴ VS. TK (凛として時雨)」。VS.シリーズは企画開始当初に「若手バンドとのコラボ」というテーマも掲げていたので、TKさんの登場は意外でした。

加藤 TKくんはずいぶん前から一緒にやりたいアーティストの候補に挙がってたんです。今回ようやく実現して忙しい中参加してもらいましたけど、「どうせやるなら今までのスカパラのコラボの中で一番の作品にしたい」と言ってくれて「メロディを僕に考えさせてください」と提案してくれたんですよね。そういうことならフィーチャリングで歌ってもらうよりVS.のほうがいいかなと。

──確かにその作り方だとVS.シリーズになりますね。

加藤 こちらから何曲か候補を出したらメロディだけじゃなくサビのコード進行や展開もガラッと変わって戻ってきたんです。今ホーンのフレーズになってるところが、本当は僕が提案したサビだったり。

加藤隆志(G)

加藤隆志(G)

NARGO 僕が歌ってるメロディのところ、あれが最初はAメロだったんですよ。

加藤 だから要所要所でモチーフは残ってるけど完成形はまったく違うものになってて、それがめちゃくちゃ新鮮でしたね。スタジオに集まって打ち合わせをしたときも面白かったし。

GAMO その日は歌ってもらう予定じゃなかったんですよ。けどせっかくだからって流れになって、そしたらTKくんが「たぶん歌うことになるかなと思ってました」とカバンからMYマイクを出してきた(笑)。今までそんな人いなくて。とにかくすべてが衝撃的でずっとワクワクしてましたね。

──この曲の歌詞は共作ではなく谷中さんが1人で書いてるんですよね。

谷中 そうです。今回はネイチャーラボさんのCM(「MARO17」)でホットドッグに“紅しょうがマヨ”をかけるシーンが出てくるからそれを入れようと思って、でも「紅しょうが」を歌詞にするのはさすがに厳しくて「ホットドッグにマヨネーズ」ってフレーズになりました。

──歌詞にはどんな思いを込めましたか?

谷中 今の世の中はグローバル化が進んでるけど、それってどうなんだろう、混ざらないで偏ってるほうがいいんじゃないか、みたいなことを考えてましたね。宇宙だって太陽と地球の熱量が違っていて偏りがあったから生命が生まれたわけだし、友達も相手の偏ったところに惹かれて仲よくなったりする。旅をするときも昔からの偏りが残ってる場所に行ったほうが楽しいですからね。

川上 日本中に同じようなお店ができて偏ったいい場所が減っていってるんですよね。シンガポールを歩いてても「ここお台場かな?」って思うもん(笑)。

川上つよし(B)

川上つよし(B)

進化するJ-POPシーンとスカパラの未来

──このVS.シリーズでは作詞作曲だけでなく、楽器のアレンジもタッグを組むアーティストと一緒に作っているんですよね。

加藤 例えばTKくんの場合はプロデュースもエンジニアリングもわかってるから、ちょっとした音からインスピレーションを得てどんどん広げていってくれるんです。ホーンアレンジも北原さんに「こんな感じどうですか?」と提案してくれて。

北原 彼のデモトラックにホーンのフレーズが入ってて、「このアプローチいいな」っていうところはそのまま使ったりしてます。発想が面白いんですよ。

茂木 LEOくんもChevonもTKくんもVS.に挑む覚悟みたいなのがハンパないんだよね。

茂木欣一(Dr)

茂木欣一(Dr)

川上 僕らは曲を作るときに「普通の人間が歌うなら音域はこれくらいかな」とか「歌いやすい自然なメロディを書かなきゃ」って意識があるんだけど、やぎちゃんから返ってきたメロディは平気で1オクターブ以上飛んでたりするんです。これ俺が作ってボーカリストに渡したら怒られるよってメロディが出てくる(笑)。そういうことがあると、すみませんでした、勉強になりました!って思いますよね。

加藤 やっぱりボカロ登場以降かな、J-POPのメロディの進化がすごいんですよ。今のこのJ-POPシーンとスカをリンクさせようと思ってるバンドは世界中探しても僕らしかいなくて、これを南米とかに持っていくと逆に新鮮に響く。日本独自のガラパゴス感ですよね。デスクトップミュージック的、アニソン的な独特のメロディを世界に紹介するとみんなびっくりするんです。

──スカパラが歌ものコラボを始めてから20年以上経つ間にJ-POPシーン自体も変化してきたんですね。

加藤 すごく変わったと思う。それを生で体感できてることにワクワクしますよね。川上さんが言ったように最先端のアーティストと一緒にやることは僕らにとっても進化のチャンスなんです。以前ならこのメロディでOKだったけど、今はこれだと物足りないよね、もっと音符入れて情報量増やせるよね、みたいな。このVS.シリーズの経験がスカパラの今後の作品にいい影響を与えてくれるのは間違いないと思います。

東京スカパラダイスオーケストラ

東京スカパラダイスオーケストラ

特集後編は近日公開。お楽しみに!

プロフィール

東京スカパラダイスオーケストラ(トウキョウスカパラダイスオーケストラ)

NARGO(Tp)、北原雅彦(Tb)、GAMO(Tenor Sax)、谷中敦(Baritone Sax)、沖祐市(Key)、川上つよし(B)、加藤隆志(G)、大森はじめ(Perc)、茂木欣一(Dr)からなるスカバンド。1989年のデビュー以降、インストゥルメンタルバンドとしての確固たる地位を築く中、日本国内に留まることなく世界32カ国での公演を果たし、世界最大級の音楽フェスにも多数出演。2021年8月には「東京2020オリンピック競技大会」の閉会式でライブパフォーマンスを披露した。2024年にデビュー35周年を迎え、スカパラがバンドのテーマとして掲げる“NO BORDER”を冠した3部作「一日花 feat.imase & 習志野高校吹奏楽部」「あの夏のあいまいME feat.SUPER EIGHT」「散りゆく花のせいで feat.菅田将暉」を3カ月連続リリースし、10月に記念アルバム「35」を発売。11月には阪神甲子園球場で初のスタジアムライブ「スカパラ甲子園」を成功させた。2025年3月にベストアルバム「NO BORDER HITS 2025→2001 ~ベスト・オブ・東京スカパラダイスオーケストラ~」をリリース。9月にはコラボ相手にB'zの稲葉浩志を迎えたシングル「Action (VS. 稲葉浩志)」をリリースする。