TrySail「そんな僕らの冒険譚!」インタビュー|デビュー10周年、今迎える新たな出航のとき (2/2)

この曲はまだできあがっていないんです

──カップリング曲「声のシンフォニー」は、去年の10月に配信リリースされている、武道館公演のテーマソングですね。作詞作曲は杉山勝彦さん、編曲は安田育武と杉山さんで、テーマソングとしての役割を完璧に果たしていると思いました。

雨宮 今まで一緒に作り上げてきたライブや一緒に見てきたいろんなシーンが浮かぶような楽曲になっていて。もう、1番Aメロの始まりが「覚えてる? 初めて会った時のことを」なんですよ。それもあってか、みんながそれぞれのTrySailとの出会いを振り返りながらこの曲を聴いてくれているのがリリックビデオのコメントとかからも感じられるし、全体としてけっこう歌詞の抽象度が高いというか……。

──普遍性がある?

雨宮 そう。普遍性があって、具体的すぎないおかげで、受け取ってくれた人たちそれぞれの個人的な体験と重ね合わせやすくなっているんだなと思いました。正直に言うと、私はレコーディングしていたとき、武道館でみんなと一緒に歌っているみたいなイメージはそこまで強く持っていなくて。でも、みんなの反応を見て「ああ、そうだよね」と、自分の中でこの楽曲の意味を消化できたような感覚がありましたね。

麻倉 私はレコーディングのときから、武道館でみんなと泣きながら歌っているところを想像していました。本当にわかりやすく、ストレートにライブで歌うことを前提に作られた楽曲だし、あからさまに「皆さん、ご一緒に」と誘うような「LALALALALALALA」もあるじゃないですか。今までのTrySailにも、ライブでみんなの声が合わさって完成するタイプの楽曲はあったんですけど、「声のシンフォニー」はその極みみたいな。だから、この曲はまだできあがっていないんですよ。

夏川 すごくストレートな、言ってしまえばベタな歌詞で。私はベタなことを言うのを気恥ずかしく感じてしまうところがあるので、レコーディング中はどうやって歌おうか、けっこう悩んでいたんです。これを聴いた人に「プププ、ベタなこと言ってるな」って笑われたらどうしようとか(笑)。でも、天さんが今言ったように、お客さんの反応を見て初めて「ベタでいいんだ!」と。変な話、今はレコーディングしたときよりもこの楽曲を好きになれているんですよね。みんなのおかげで、私たちとみんなの楽曲になった。

TrySail

TrySail

──おっしゃる通りベタな、いかにも節目を迎えたアーティストが大舞台で歌いそうな歌詞ですよね。でも、そのベタさに説得力を与えるのが経験や実績だと思います。

夏川 むしろ10周年の、武道館ライブのタイミングでベタなことを言わずにいつ言うんだっていう。

雨宮 ベタだからこそ、聴いた人が入ってきやすいところもあって。いざ入ってみたら意外と深いぞっていう、罠みたいな感じ。間口は広くしておいて、入ってきたらもう離さない。そういう意味でもTrySailっぽい曲なのかなと思いますね。

──ただのセレブレーションじゃない、聴き応えのある曲になっていますよね。ゴスペルっぽい祝賀ムードで始まりながら、2コーラス目はロックバラード的なすごみもあって。

夏川 ここの天さん、パワフルでめっちゃいいよね。

雨宮 どこの話?

夏川 「心の奥の隙間 埋めてくれる何かを ずっとずっと探し続けてたの」のところ。

雨宮 わあ、うれしい。メロディもエモ系だから、それに合わせて歌い方も変えていて。

麻倉 前半は優しい感じだけど、クライマックスに向けてどんどん気持ちを押し上げていくみたいな。

雨宮 インナーマッスル系?

夏川 それだ(笑)。見せかけじゃない、深層のマッスル。

雨宮 決まったね、今年の抱負が。インナーマッスルユニットを目指そう。

麻倉 体幹とかも大事だもんね。

TrySail

TrySail

どんな“出航”になるのか、見届けてください

──TrySailは、武道館のステージ自体はフェス的なイベントで何度も立っていますが、ワンマンとなると……。

雨宮 心持ちも全然違ってきますね。武道館は会場としても、個人的にすごく好きなんですよ。規模のわりに、お客さんを近くに感じられるので。そんな距離感でみんなと過ごせる、お祝いできるというのは、本当に幸せなことですよね。

麻倉 まだ誰が言うのかわからないですけど、自分たちだけのステージで「ぶどうかーん!」って叫べるのも、すごくうれしいです。やっぱり武道館は特別な場所なので。

夏川 武道館ライブが決まったとき、事務所の人が「武道館は特別な場所だから、TrySailの音源は聴いていたけどライブは観たことがないという人も、もしかしたら足を運んでくれるかもしれない」と言っていたんですよ。いろんな場所で、いろんな形でTrySailの音楽を楽しんでくれている人が一堂に会すると思うと、今までのライブとはまた違った景色が見られそうだなって。

──先ほど麻倉さんが「この曲はまだできあがっていない」とおっしゃいましたが、「声のシンフォニー」が武道館でどんなふうに完成するのかも、楽しみですね。

夏川 「ずっとこのまま続きますように」で締めているのが、またベタなんですけど、すごくいい。それを10周年の出航ライブで歌えるのも誇らしいし、きっとお客さんは「声のシンフォニー」を飽きるほど聴いてくれていると思うので、武道館では音源を超える何かを提供しなきゃいけないし、提供できる自信があります。

麻倉 「声のシンフォニー」のリリックビデオには、私たちの10年間の歩みをぎゅっと詰め込んでいるんです。たぶん、お客さんの多くがそれを観てから武道館に来てくれると思うので……。

──仕込みは済んでいるんですね。

雨宮 言い方(笑)。

夏川 あとはお客さんを泣かせるだけ(笑)。

──TrySailは泣かないんですか?

雨宮 ね。私もそう思いました。

夏川 誰か1人が泣いたら総崩れだと思うよ。

雨宮 私は、ナンちゃんが最初に泣くと思う。

夏川 いや、どうかな。天さんこそ、泣いているお客さんを見つけたら……。

雨宮 一瞬でもらい泣きしちゃう。めっちゃ釣られるの。

麻倉 私の予想では、天さんが泣き始めて、それに釣られてナンちゃんが泣く。で、私は泣きません。

夏川 もちが意外と泣かないんだよ(笑)。

──麻倉さんが泣いているところは想像できないかもしれません。「私も泣かなきゃ」みたいなタイプでもないですよね?

麻倉 「泣かなきゃ」と思ったら、焦って余計に泣けなくなるかも。

夏川 「泣かなきゃ」と思わないで(笑)。もちさんは、私と天さんが泣いているの見て「あらあ」って笑っているイメージ。

雨宮 心ないの?(笑)

麻倉 いや、本当に私たち自身もどうなるかわからない、何が起こるかわからないんですけど、どんな“出航”になるのか、見届けてください。

TrySail

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公演情報

LAWSON presents TrySail 10周年出航ライブ “FlagShip” in 日本武道館

  • 2025年3月1日(土)東京都 日本武道館
  • 2025年3月2日(日)東京都 日本武道館

プロフィール

TrySail(トライセイル)

ミュージックレインに所属する声優の麻倉もも、雨宮天、夏川椎菜からなる3人組ユニット。2014年12月にユニットの結成を発表し、2015年5月にテレビアニメ「電波教師」のオープニングテーマを表題曲としたデビューシングル「Youthful Dreamer」をリリースした。その後も「Classroom☆Crisis」「暦物語」「ハイスクール・フリート」「マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝」「SDガンダムワールド ヒーローズ」といった数々の作品のテーマソングを担当。2019年3月にはテレビアニメ「エロマンガ先生」のエンディングテーマ「adrenaline!!!」が「平成アニソン」大賞声優ソング賞に選出された。2025年2月にアニメ「外れスキル《木の実マスター》 ~スキルの実(食べたら死ぬ)を無限に食べられるようになった件について~」のエンディングテーマ「そんな僕らの冒険譚!」を17thシングルとしてリリース。3月に東京・日本武道館でデビュー10周年記念ライブ「LAWSON presents TrySail 10周年出航ライブ “FlagShip” in 日本武道館」を行う。