TRI4TH|踊って、叫んで、歌って 新たな進化を聴かせるメジャー2ndアルバム

断腸の思いで削ぎ落としたRancidカバー

──では1曲ごとにお話を伺っていきます。まず「Wake Up」は関谷さんの曲です。

関谷友貴(B)

関谷 はい、でもアレンジはすべて織田がやっていて。

織田 演奏も13人分くらい僕が重ねて、トラック数も3つくらいあったから……。

関谷 全部で50人分くらいを織ちゃんが(笑)。

──これ、「どうやって録ったんだ?」と思っていました(笑)。

織田 そうですよね(笑)。トランペットとトロンボーンとホルンとチューバを使って、ブラスバンドみたいなサウンドでファンファーレっぽい曲にしてみました。僕、CDショップの試聴機が大好きなんですけど、あれで聴いてもらったときに「あれ、これTRI4THじゃないの? 間違えたかな?」と思ってもらいたい(笑)。最後の曲とつながっていくというコンセプチュアルな仕掛けもできました。

──「ぶちかませ!」は織田さんの曲です。伊藤さんがモロに「ぶちかませ!」って叫んでますね(笑)。

伊藤 最初にリハに持ち込まれたときから「これ、『ぶちかませ!』って叫んでね」と織田さんから指示が(笑)。

織田 そうそう。メロディよりも叫び重視で(笑)。

伊藤 ちゃんと四分休符に3つくらい「ぶちかませ!」と書いてあった(笑)。

──「Time Bomb」はRancidのカバーですが、選曲の理由は?

伊藤 スカの曲はもともと自分たちのルーツの1つとして、ここ数年、音源やライブで披露してきたんです。「FULL DRIVE」という曲でも、The Specialsのような2トーンスカの要素を自分たちなりにオマージュして。そうしたアプローチをさらに発展させようと考えたとき、僕がずっと好きだったRancidのもっともメジャーな曲をやってみようと。自分としてはうまくTRI4TH流の「Time Bomb」になったんじゃないかと。

織田 原曲が素晴らしいですよね。メロディも歌というよりも、ちょっとラップに近い。あのAメロをどう料理すればキャッチーに届くかという点はかなり気を配りましたね。

──どちらかと言えば、足し算ではなく引き算のアプローチですよね。かなり削ぎ落とされていて、それが結果的にTRI4THらしさにつながっているという。

伊藤 Rancidは中3ぐらいの頃からずっと聴いてきたから、頭の中で原曲が鳴っちゃうんです(笑)。だからすべての音が必要だと思っちゃうんですけど、断腸の思いで削ぎ落としましたね。でも、「これは別物」というのではなくて、ジャズのリスナーにも、Rancidのファンにも「カッコいい」と言ってもらえるような形を目指しました。あとはRancidのメンバーにアルバムを渡したとき、いい反応がもらえたら最高ですけどね。運よくサマソニで同日出演なので、もしタイミングが許せば勇気を振り絞って渡しに行きたい。ちょっと見た目が怖いけど(笑)。

間違えられないスリリングなレコーディング

──「Shot the Ghost」は伊藤さんの曲です。イントロのサックスが「Guns of Saxophone」(2017年リリースのアルバム「4th Rebellion」収録曲)を彷彿とさせるというか、兄弟曲のような印象がありますね。

伊藤 おっしゃる通りですね。ビートもちょっと速めで、ロック好きにもアガってもらえるようなパワフルな曲を目指しました。僕が鼻歌で作った曲を織田さんに投げて、そこから構成を詰めていきました。

織田 この曲はなんと言っても、オルガンが一番新しいチャレンジ。竹ちゃん、本物のハモンドオルガンを使っていますから。

竹内大輔(Piano)

竹内 ハモンドはまるっきり初めてでした。教わりながら弾きましたね。

織田 まずレッスンが3時間くらい(笑)。

竹内 ピアノとはまったく違いますから。ピアノはやや打楽器に近い感じもあるんですが、オルガンはもう少し管や弦に近い感じがあって。ずっと音が伸びる仕様もピアノとは異なります。でも、だからこそ生まれるフレーズがあって。TRI4THにおけるこれまでのピアノって、わりと勢いや速弾きで埋める感じが多かったんですが、オルガンでは和音を伸ばすだけで圧が強い。それを今のTRI4THのサウンドに詰め込む作業はかなり新鮮だったし、僕個人としても貴重な勉強の機会になりました。

──これは前作でも感じたのですが、TRI4THの曲は伊藤さんが作ったからといってリズム重視というわけでもなければ、竹内さんが作ったからピアノ的な旋律やピアノの見せ場が多いわけでもない。作曲クレジットはあくまでも曲の素というか種を作った人であって、完成した曲は作曲者のパートとほとんど比例していないんですよね。

織田 今回は特にそうなったと思います。曲を全員で共有している感覚が強いですね。

竹内 誰の曲でも全員でメロディを変えたりするし。僕が作った曲でも、「管ならこっちのメロディかな?」とかかなり柔軟ですからね。

──つまり、個々のパートについても「自分からはまずこのメロディの発想はない」みたいな場面も多々ある?

藤田 そうですね、自分からするとかなり奇抜なアイデアが投入される。特に関谷は、僕が吹きにくいフレーズをぶっ込みがちですね(笑)。

一同 (笑)。

関谷 インタビュー中にクレームが(笑)。管楽器のことがわからないからそういうフレーズを書けちゃうんだよね。

藤田淳之介(Sax)

藤田 だからこそ、自分にとって斬新なフレーズと出会うことも多いんです。

織田 逆に関谷が弾きやすいことでグルーヴがドシッとするなら、曲のキーをベースに合わせちゃうことだってあるし。

──「Shot the Ghost」や「Guns of Saxophone」の藤田さんのサックスには、苦しそうにグッと溜めたような負荷がかかっています。その理由がわかった気がします(笑)。

織田 確かにサックスは、一番つらそうで聴き映えするフレーズが選ばれがちですね(笑)。

伊藤 でも自分でも一番つらそうなやつを選ぶよね?

関谷 つらいフレーズ吹いているときの藤田くん、うれしそうだもんね(笑)。

一同 あはははは(笑)。

──「Go Your Way」はその藤田さんの曲です。間奏における皆さんの掛け合いがすさまじいですが、今回の曲における間奏パートのレコーディングはどのように進めていったんですか?

伊藤 今回は曲によって異なりましたね。いろいろな種類の曲があったので、レコーディングを進めながらアレンジしていった部分も多々ありました。ただ、これまでも基本的にはほぼ一発録りで、オーバーダブなどの重ね録りはしていません。多分これからもそうだと思います。

藤田 今回、特にドラムとホーンは録る部屋が一緒だったから録り直しができなくて。音が被りまくっているので、「ソロのあそこ、録り直したい」とか一切通用しない。

伊藤 省二郎さんのアイデアでした。だから互いに間違えられない。

──今どき、すごい録り方をしていますよね。

織田 もうほとんど気合いですよ(笑)。

伊藤 あと、この曲における何よりのチャレンジは、歌ったことですね。僕らとしてはシャウトの延長線上で自然に生まれたメロディを歌ってみたという意識でもあるので、自然に受け入れてもらえて、ライブで盛り上がってもらえたらうれしいです。例えばこのアルバムはTRI4THを初めて聴いたリスナーが、「きっとこの人たちのライブは、一緒に叫んで歌って踊れるんだろうな」とすぐに想像してもらえるような1枚だと思います。

織田 もっと技巧的に凝ることもできたけど、そうはしなかった。とにかくロックフェスで僕らが演奏したとき、お客さんにすかさずグルーヴが届いて、すぐ一緒に盛り上がれるように、構成もフレーズも伝わりやすさを第一に考えました。