この1枚を聴いてもらえればすべてイメージしてもらえる
──それにしてもメジャーデビューアルバムにして「ANTHOLOGY」(=選集。名作集)というタイトルは技ありと言うか。
伊藤 付けてみたかったんです(笑)。
──アルバム全11曲中の4曲が新曲ですが、残りの7曲は直近のシングル曲「dirty bullet」を除いて既存のレパートリーのリテイクですね。これは改めて現在のTRI4THをプレゼンテーションするための、言わば“名刺代わりの1枚”という意図でしょうか?
伊藤 まさにそうですね。メジャー1作目ということで、TRI4THを今まで応援してくれたリスナーにも、この機会に初めて僕たちを知ってくれるリスナーにも届けたかったので。もしかしたら、アルバムジャケットの竹内俊太郎さんの絵で気にかけてくれる人だっているかもしれない。そうしたすべての皆さんに、今、自分たちにとって珠玉と言える曲をパッケージして、「これぞTRI4TH」と言えるアルバムにしたかった。新曲も、これからの僕らが向かっていく方向性を示しているんです。この1枚を聴いてもらえれば、TRI4THの音楽性も、ライブも、すべてイメージしてもらえると思います。
──リテイクした既存のレパートリーについては?
伊藤 基本的には、今の僕らのライブにおいて欠かせない曲を選びました。僕らの曲は、ライブで育っていくんです。即興的にどんどんどんどん進化して、何度目かのライブの頃には曲が様変わりしていることもあります。何より、お客さんの盛り上がりに影響されるんです。
関谷 例えば「Sand Castle」という曲は、もともとは高速のスイングだったんですけど、今回はスカにリアレンジして、よりお客さんがライブで踊りやすいようにしています。今回のアルバムの曲も、ライブを重ねることでまた変わっていくと思う。現在進行形でどんどん成長しているから。
竹内 特に最近のTRI4THは本当にライブバンドですね。ライブで受けた反応が即座に次のライブや制作に反映されていくんです。
僕らが叫んで、お客さんも叫べるジャズ
──伊藤さんの掛け声がまたいい味を出していますね。「Hey Ho, Lets Go!」は、パンクを聴いてきたリスナーにとってはある種の共通言語みたいなものだし、なんならモロに「Rock'n'Roll」って叫んじゃっている曲もある。ジャンルを縦断するTRI4TH流の“踊れるジャズ”を、リスナーにわかりやすく提示しようという気概を感じました。
伊藤 そこに気付いてもらえたのは本当にうれしいですね。特に今回は「叫べる」というポイントは大きい。僕らが叫んで、お客さんも叫べるジャズ。僕が知る限り、そんなジャズはあまりない。でもそれってロックやポップスにおいては自然なことですよね。ジャズでも声を出して踊って楽しめるということを、今回は打ち出せたんじゃないかと思います。
織田 掛け声をたくさん入れたことは大きな変化でしたね。しかも今回の掛け声は、ちょっと歌詞に近いと言うか、掛け声抜きでは曲が成立しない。特に、そうした掛け声を入れることで、インストの向こう側に行けたのが「Stompin' Boogie」という曲でした。1つ新しいやり方を見つけた思いです。
──あと、織田さんはずっと着ていた和装からスーツに切り替えたのも新しいアプローチでしたよね。
織田 10年着たんですけどね(笑)。今回からスタイリングもガラッと変えようということになったので、いい機会だと思ってチャレンジしました。
伊藤 もしかしたら20代のリスナーはこうした掛け声のルーツなんて知らないかもしれない。でも古いロックンロールやツートンスカって、どこかで彼らが好きな音楽の原点とつながっているはずです。僕らがさまざまなルーツミュージックを消化して、TRI4THのジャズにミックスしていくことで、オリジナルを知らない人たちまで引きずり込んでいくのが理想です。それを言い表す言葉が、今は“踊れるジャズ”、“踊り狂えるジャズ”ですが、この先、さらにそれを超えていけるようなキャッチフレーズを見つけて体現していたいですね。
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全員が「カッコよくなるのはこうだ」と思うところまでやる