TOMOO「TWO MOON」特集|進化と変化を詰め込んだ初のフルアルバム完成 (2/2)

“丸”の持つ強さ

──では新曲たちのお話も伺いましょう。まずはアルバムの幕開けを飾る、リード曲「Super Ball」。体を突き動かすグルーブ感を持つ、まさに“アゲ曲”ですね。

さっきの“丸”の話に通ずるんですけど、一般的に個性が尖っていることって強さの象徴だったりするじゃないですか。尖って角ができれば、それが三角形でも四角形でも安定感がよくなるし、それによって扱いやすくなったりもする。でも私は、丸いことこそが元来の強さなんじゃないかと思うんですよ。強いと言っても、人に誇示するものではなく、いわゆる剣とか盾とは違う在り方での強さが丸にはある。見た目的な柔らかさはあるけど、凛としたものを内には持っていて、そこからクリエイトしたものをちゃんと放っていけるのが丸なんじゃないかなって。

──なるほど。面白い視点ですね。

私自身、棘を出すタイプではあまりないので、丸なりのプライドというか、誇りみたいなものに思いを馳せながら書いていったんです。丸いボールが凶器になることはあまりないけど、何かとぶつかり、接することによってポーンと跳んでいったりする。そういう可能性、豊かさがあることが丸の持つ元来の強さ。そんなことを曲にしました。ここ最近の自分の心情が一番出ていると思います。

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──カラフルなアレンジは小西遼(象眠舎、CRCK/LCKS)さんによるものです。

“スーパーボール”という言葉的に、あまり豪勢ではなく、どちらかというと童心に帰るような雰囲気があると思うので、そういうアレンジをお願いしました。とは言え、歌詞の中に「虹色」というワードを使ったりもしているので、ある程度、色彩のあるサウンドにしたい。さらに、ボールという物体か持つ質感、弾力みたいなものをドラムやベースで表現してほしい……みたいな、わりとめんどくさいお願いをたくさんさせてもらったんですけど(笑)、小西さんはものすごく素敵なアレンジに仕上げてくださいました。アレンジの素晴らしさはもちろん、オケを演奏してくださった方々がスーパーなバンドだったので、「ボーカルどうしよう」と少し不安にもなって(笑)。

──テンションや輝度の高い、ものすごくいいボーカルになっていますよね。

素晴らしいアレンジと演奏に、新しいボーカルを引き出してもらえました。もしかしたらシンガーとしてまた一皮剥けたかも……という気がします。個人的にはちょっと早口になるDメロが気に入ってるんですよ。息継ぎが苦しいんですけど、歌詞的に思いが凝縮してる箇所でもあるので、それをしっかり歌に込めました。

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渇きについて歌った「Grapefruit Moon」

──先行配信された「Grapefruit Moon」もアルバムのために書き下ろされた曲なんですよね。

はい。この曲の種は4、5年前からあったんですよ。4月なのに「夏?」と思うくらい暑い日があって、喉がカラカラでコンビニにグレープフルーツジュースを買いに行ったんです。そのときにパッと思いついたのがこの曲で(笑)。満たされているほうが健康的ではあるかもしれないけど、クリエイター的な視点で言えば、乾いているからこそスポンジのようにいろんなものを吸収できたりもするわけじゃないですか。当時、自分の中のクリエイティブの泉がちょっと渇いているような感覚があったから、そんなことを考えたのかな。で、そんなアイデアをもとに、今の自分の思いも加えつつ、今年に入ってから曲として仕上げていきました。

──この曲のアレンジも小西さんですね。

ちょっと新鮮なアレンジになりました。これまでのTOMOO楽曲にはあんまりなかったタイプ。だからこそ、ボーカルでは今までなかったニュアンスを出しちゃおうと思って。普段の歌い方と比べると、この曲のキャラクターはちょっと違うんですよ。リラックスしていて、曲の艶に素直に応じていくようなイメージで歌ったというか。前半、歌い出しのところが特にそうですね。で、後半はちょっとチャレンジングなことをしてみたり。

──Dメロの部分ですか?

はい。「這って 這って 這って ずって / 払って 立って 頬はたいて」のところです。言葉を繰り返してどんどん煽っていく、積み重ねていく感じを、レイ・チャールズ「Hit The Road Jack」のコーラス部分「no more,no more,no more,no more」のイメージで歌ったんですよ。

──へえ!

数年前に「Hit The Road Jack」を聴いたとき、あのコーラスには不思議な強さがあるなと思って、いつかそのニュアンスを出してみたかったんです。それが表現できているかはわからないけど、自分としては「ぽいな」と思いながら歌いました(笑)。

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ライブを経て表れた歌の芯

──「ベーコンエピ」「窓」「Mellow」の3曲はライブではすでに披露されている楽曲で、ファン念願の音源化となりました。

「ベーコンエピ」は20代になってから書いた曲で、その時期ならではのめっちゃ温かい曲だなって自分で思います。ファンの方からの人気も高いんですよね。最近ライブでずっと歌っていた曲なので、レコーディングはスムーズにできました(笑)。それにライブでお客さんを前に何度も歌ったことで、自分1人だけでは生まれなかったであろう歌の芯みたいなものが出てきていたみたいで。アレンジをしてくれたsugarbeansさんには、ライブで披露する前のデモを渡していたので、レコーディングのときに「デモと全然声が違いますね」ってびっくりされました。

──「窓」はいつ頃にできた曲なんですか?

曲のメモを書き始めたのは、コロナ禍で家にいる時間が長かった頃です。その当時の感情が曲に刻まれているので、コロナ禍の記憶がまだみんなの中に残っているうちにリリースしたかったんです。去年やったワンマンライブ「Estuary」で披露しただけだったので、ライブで歌い重ねたわけではないんですよ。だからレコーディングはちょっと難しかったかな。人に聴かせるためというよりは、個人的な手紙を送っているようなニュアンスの曲なので、それを表現するのにちょっと苦労しました。でも結果的にすごく感情のこもった歌になったと思います。

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──「Mellow」はピアノ弾き語りの曲になっています。TOMOOさんのルーツが見える仕上がりですね。

「ベーコンエピ」や「窓」よりも少し先にできたのが「Mellow」です。アルバムにはすごく静かで寝る前に聴けるような曲を入れたくて、歌詞に「月」というワードが出てくる「Mellow」がいいんじゃないかなって。弾き語りにしたのは、その形でも表現としてちゃんと足りていると思ったから。クリックを使わないで弾き語りをしたので、気持ちとしてはライブをしている感覚でした。曲を作ったときの、そのままの感じで歌いました。

新しい景色を求めて

──本作を携え、11月からは年を跨ぐ全国ツアー「TOMOO LIVE TOUR 2023-2024 "TWO MOON"」が開催されます。

私がアルバムを出すことを待ち望んでいた理由は、アルバムを持ってツアーが回れるからでもあるんです。アルバムに収録された新しい曲がセットリストに加わることで、また新しい風を吹かすことができる気がする。ツアーのコンセプトは現段階でまだ固まってないんですけど、曲たちが見せてくれる新しい景色がきっとあるはず。それを見るのが楽しみですね。

──ツアーの1本目、EX THEATER ROPPONGI公演だけが弾き語りライブになっているのも面白いですよね。

弾き語りスタイルでのワンマンライブって、実はあんまりやったことがないんですよ。なので、今回はどっちもやっちゃおうかなって。基本はバンド編成でのツアーではあるけど、最初だけ弾き語り。同じ曲であっても、編成によって演奏の違いがあったりもするので、両方楽しんでもらうときっと面白いと思いますよ。

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ライブ情報

TOMOO LIVE TOUR 2023-2024 "TWO MOON"

  • 2023年11月2日(木)東京都 EX THEATER ROPPONGI ※アコースティック
  • 2023年12月15日(金)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2023年12月17日(日)宮城県 Darwin
  • 2023年12月23日(土)福岡県 DRUM LOGOS
  • 2023年12月24日(日)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2024年1月5日(金)愛知県 DIAMOND HALL
  • 2024年1月13日(土)大阪府 フェスティバルホール
  • 2024年1月30日(火)東京都 TOKYO DOME CITY HALL

プロフィール

TOMOO(トモオ)

1995年生まれ、東京都出身のシンガーソングライター。6歳からピアノを弾き始め、中学生の頃にオリジナル曲の制作を開始。大学進学後に本格的に音楽活動をスタートさせ、2016年8月に1stミニアルバム「Wanna V」を発表する。2021年8月に発表したシングル「Ginger」がさまざまなアーティストから注目され、ミュージックビデオは272万回以上再生されている(※2023年9月時点)。2022年8月にポニーキャニオン内のIRORI Recordsより配信シングル「オセロ」でメジャーデビュー。2023年6月には東阪のNHKホールでワンマンライブ「TOMOO LIVE TOUR 2023 "Walk on the Keys"」を開催した。9月にはメジャー1stアルバム「TWO MOON」をリリースし、11月からは本作を携えた全国ツアー「TOMOO LIVE TOUR 2023-2024 "TWO MOON"」の開催を控えている。

衣装協力 / ROSE shimokitazawa(TEL:03-3465-6655)