ナタリー PowerPush - 冨田ラボ×さかいゆう
高純度ポップを生む2人の気まま音楽談義
時代に関係なくずっと存在するような音楽に
──洋楽に影響を受けたり、年代の古い音楽に造詣が深いお2人も、今の日本のポップスシーンで作品を発表しています。目まぐるしく変わるシーンの潮流についてどう思いますか?
冨田 リアルタイムの音楽は積極的には聴かないので、的確かどうかわからないですけど、トレンド的なものは単に繰り返されているだけだと思っています。例えば、80年代から90年代になると、渋谷系やサンプル・ネタ的な解釈もあって、アナログっぽいものが好まれるようになって、その後はエレクトロニカなどが出てデジタライズされたものが注目されました。ただそれらは双方とも並列でずーっと存在していたものなんですよね。目立つ順番の差だけ。そして近年は震災もありましたし、経済的なこととか国内の状況もトレンド変換のきっかけにはなりますよね。何かがトレンドになっていて、その次に相反するものが来るのは当然で。で、たぶんそのタームはどんどん早くなるに違いないんですよ。
──なるほど。
冨田 あとは情報量の問題で、1億総○○状態になるっていうことはなく、細分化していく。だからデジタライズされたものが好きな人もそのまま残るけど、全体の潮流としてはちょっと変わる。むしろ「全体」も、以前は80%ぐらいを「全体」を呼んでいたのがもう60%ぐらいのものでしかない。ほかのものは相変わらず存在しているので。
──そういった流れの中で、自分の作品はどういう存在でありたいと思いますか。
冨田 もちろん発表したとき多くの人に聴いてほしいとは思いますけど、時代には関係なく、ずっと存在するような音楽であるといいなっていつも思っています。具体的に時代のどんな位置に置かれて、多数の人がどう思ってるのかはよくわからないですね。
──さかいさんは“2013年のJ-POPアーティスト”みたいな意識ってありますか?
さかい 全然ないですね。自分にとってそれが耐久性のあるトラックか、いい歌かっていうのが一番大事だから。周りのことはわかんないです。
──曲を作るときは耐久性を考える?
さかい 考えますね。それは人それぞれの好みじゃないんですよ。やっぱり、ちゃんと答えがあるもの。グレードが古くても、その当時流行ったものでも、今聴いても古くないなっていうプレイとか歌はあって、この先何百年経ってもそれは変わらないと思うんですよね。だって、今自分が80年ぐらい前の音源を聴いても思うわけだから。それは自分なりの感性でしかわかんないですけど、自分の中で「いいものができた」って納得したものを絶対出そうとは思ってますね。
互いの新プロジェクト考案
──では最後に、冨田さんはさかいさんに、さかいさんは冨田さんに「こんなことやってみるのどうですか?」と新たなチャレンジを提案していただけますか?
さかい うーん……じゃあ僕から先に言いますよ。ライブ全体で○曲作るっていうことだけ決めて、リアルタイムレコーディングの公演を2人でやりたい。円形ステージにして、生楽器に囲まれて、その場でセッションしながらどんどん音を重ねてって。
冨田 面白いね!(笑)
さかい それで冨田さんのすごさがわかると思うんですよ。いかにベースがうまいかとか、どういうところでセンスを出してるかとか。普段みんなは完全にパッケージされたものを見てるだけから。
冨田 実は僕、作曲をライブでっていうのはやったことあるんですよ。ただ、みんなが観てる中で1人でイチから考えるのは修行みたいだったから(笑)、それをさかいさんを交えてやると面白いかもしれない。
さかい 冨田さんが考えてる間に、僕が「ベース入れまーす」とかできるし。「鍵盤どっちにしましょうか?」「じゃあソロは僕が弾きます」みたいな相談も公開して。それによって友達の少ないミュージシャンたちに「2人でもできるんだぜ」って勇気を与えてあげられればいいかなって(笑)。
冨田 僕は……今のさかいさんの案を聞きながらも、すごーく真面目に考えてたんですけど(笑)。さかいさんが今までやってないことで、僕がすごく聴きたいのは……一度ブラックミュージックの要素をまったくなくして、エンヤみたいなことをやったらカッコいいと思う。
さかい ああー、合うかもしれないですね。
冨田 アイリッシュというか、ケルティックというか。もうボーカリゼーションはお手のものでしょう。今のファン層とは違うだろうけど、マジでカッコよくできると思うんです。
さかい それで世界配信とかしたら「誰だこいつ」って話題になっちゃったりして。
──お2人の案、ものすごくいいから両方ともぜひ実現してほしいです。やれるような環境作りましょう!
さかい 出資者?
冨田 スポンサー?
さかい・冨田 ははは(笑)。
- 冨田ラボ ニューアルバム「Joyous」 / 2013/10/23発売 SPEEDSTAR RECORDS
- 初回限定盤 [CD2枚組] 3600円 VIZL-534
- 初回限定盤 [CD2枚組] 3600円 VIZL-534
- 通常盤 [CD] 3000円 VICL-63997
収録曲
- やさしい哲学 feat. 椎名林檎
[作詞:椎名林檎] - 僕の足跡~I follow the sun~ feat. さかいゆう
[作詞:高橋幸宏] - 都会の夜 わたしの街 feat. 原 由子, 横山剣, 椎名林檎, さかいゆう
[作詞:坂本慎太郎] - false dichotomy (Instrumental)
- on you surround feat. 横山剣
[作詞:中納良恵] - いつもどこでも feat. さかいゆう
[作詞:堀込高樹] - Don't throw it away(Instrumental)
- 私の夢の夢 feat. 原 由子
[作詞:青山陽一] - この世は不思議 feat. 原 由子, 横山剣, 椎名林檎, さかいゆう
[作詞:坂本慎太郎] - trichotomy (Instrumental)
初回限定盤Bonus Disc収録曲
- いつもどこでも feat. 児玉奈央
[作詞:堀込高樹] - やさしい哲学 -Instrumental-
- 僕の足跡~I follow the sun~ -Instrumental-
- 都会の夜 わたしの街 -Instrumental-
- on you surround -Instrumental-
- いつもどこでも -Instrumental-
- 私の夢の夢 -Instrumental-
- この世は不思議 -Instrumental-
- さかいゆう ニューシングル「薔薇とローズ」 / 2013/10/23発売 アリオラジャパン
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1890円 AUCL-143~4
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1890円 AUCL-143~4
- 通常盤 [CD] 1223円 AUCL-145
CD収録曲
- 薔薇とローズ
[作詞・作曲・編曲:さかいゆう] - ピエロチック feat. 秦 基博
[作詞:さかいゆう、秦 基博 / 作・編曲:さかいゆう] - The Closer I Get To You
[Written by James Mtume / Reggie Lucas] - 薔薇とローズ(backing track)
- ピエロチック feat. 秦 基博(backing track)
初回限定盤DVD収録内容
-Music Video-
- 薔薇とローズ
- ピエロチック feat. 秦 基博(Shooting the Recording Session on 2013.8.19)
-Live Selection-
- ストーリー(From「TOUR 2010 "YES!!"」2010.9.22)
- AHEAD(From「TOUR "ONLY YU" #1」2011.4.26)
- 夏のラフマニノフ(From「“さかいの湯” Vol.1」2011.8.6)
- ペテン師と臆病者(From「TOUR 2012 "How's it going?"」2012.6.3)
冨田ラボ / 冨田恵一
(とみたらぼ / とみたけいいち)
1962年6月1日生まれ。北海道旭川市出身。大学在学中にギタリストとしてミュージシャン活動を開始し、1988年にはユニット「KEDGE」でアルバム「COMPLETE SAMPLES」を発表。1990年代後半にはプロデューサーとしてのキャリアをスタートさせ、最初に手がけたキリンジが圧倒的な支持を得る。2000年にはMISIA「Everything」がダブルミリオンセラーを記録。2003年からはソロプロジェクト「冨田ラボ」の活動も並行して行い、「Shipbuilding」「Shiplaunching」「Shipahead」と3枚のアルバムを発表した。2011年3月2日には、プロデューサーとしてのキャリアをまとめた初のワークスベストアルバム「冨田恵一 WORKS BEST ~beautiful songs to remember~」をリリース。2013年10月には原由子、横山剣、椎名林檎、さかいゆうをボーカルとして迎え、4thアルバム「Joyous」をリリース。また2003年に発売された冨田ラボの1stアルバム「Shipbuilding」のリマスタリングBlu-spec CD2盤も同時発売となる。
さかいゆう
高知県出身の男性シンガーソングライター。20歳で上京し、独学で音楽を始める。2001年に単身渡米しロサンゼルスでストリートパフォーマンスを行いながら、ピアノを習得。帰国後の2004年頃よりソロ活動を本格化。2009年10月にシングル「ストーリー」でメジャーデビュー。胸を打つ歌詞、透明感あるハイトーンボイスが年齢や性別を超え厚く支持されている。また客演も多く、これまでにマボロシ、KREVA、RHYMESTERなどさまざまなアーティストとコラボレーションを行っている。2012年5月にメジャー通算2枚目となるフルアルバム「How's it going?」を発表。2013年4月には1年ぶりのシングル「僕たちの不確かな前途」、同年10月には続くシングル「薔薇とローズ」をリリース。11月からは全国ツアー「さかいゆう TOUR "ONLY YU" #3 」が開催される。