ナタリー PowerPush - RECORDZとまり木

リリー・フランキーが本気で挑む新レーベルの構想とは?

“グッとくるかどうか”が一番大切

──リリーさんが考える“良い音楽”について、もう少し聞かせてください。

リリー 俺にとっての良い音楽っていうのは、歌がうまいとか技術があるとか、そういうものではないですね。グッとくるかどうか。グッとくるための技術や才能は大切だけど。

──なるほど。

リリー 例えばもしシジミがホステスやってたとしたら、ナンバー1にはならないと思う、シジミのコミュニケーション能力だと。でもステージに立つとグッとくるんですよ。このグッとくる雰囲気を持ってる人をうちのレーベルで出したいんですよね。

──テクニックよりグッとくるかどうかが重要だと。

リリー 歌がうまいとかダンスがうまいっていうのはもちろんいいんだけど、今の子供たち見てると、みんな子供のときからダンスや歌を習わされて。でもそういう人だから歌手になれるんだよ、っていうのはつまんないと思う。誰だって歌は歌えるし踊りは踊れるんだから。ちゃんとした教育を受けてないとできないなんてバイオリニストの言うことですよ。もともと歌なんてのは選ばれた人のものじゃないですからね。

──マルコム・マクラーレン的な発想ですね。

リリー 他人よりも能力が劣ってたってお前がカッコよかったらスターになれるんだ、っていうのが俺にとってのロックなんです。

──技術云々じゃなく、目が離せない存在になればいい?

リリー そこ大切だよね、「目が離せない」っていう感覚。それは大根(仁)の映画なんかもそうじゃない? その感覚っていうのは色気だから。あ、シジミも出てるんですよ「モテキ」に。

──えっ?

インタビュー風景

さゆき 出てますよ。オープニング。

リリー オープニングで女の子70人くらいで踊ってて、あれ、ちょっとでも映ってんのかな?

──あの女神輿の中にいるんですか?

さゆき 後ろでうちわ持ってます(笑)。

リリー 大根にはジミ・シジミのPVの編集もやってもらったしね。こういう風に、なんかみんな一緒の仕事になってくるときってあるんですよ。

──一緒の仕事になるっていうのは?

リリー 例えば「モテキ」の舞台がナタリーで、俺らが今日ここで会ってて、さゆきも「モテキ」に出てたりとか。毛玉みたいにどんどん膨れ上がって、バラバラなものがひとつの塊になってムーブメントができるんですよね。塊になってドーンって来るから「都会って面白い」ってみんなが思う。だってルー・リードが1人でやってたって誰も憧れませんよ。ルー・リードの周りの世界を見て都会に行かなきゃって思うし、ウディ・アレンの周りを見て「あ、ニューヨークに行きたい」と思うわけで。

──ルー・リードを通して、都市のムーブメントを感じるということですね。

リリー 今のは言ってみただけ(笑)。どこに住んでたって同じ曲は聴けるし同じものは見れる。でもそこに行かなきゃならない理由が欲しいんですよ。そういうムーブメントこそ、みんなが都会に集まる理由だし、それがないと世界の文化が衰退するからね。みんな均等になるなんて全然いいことだと思わないですよ。

同じ時代に生きて、みんな同じことを考えてるんだと思う

──こうやってお話を聞いてると、ますますジミ・シジミの次が気になってきますね。

リリー 2枚目、3枚目とだんだん広がっていって、例えば4枚目にまたシジミが新しいのを出すとかってなったら、完全にレーベルとして確立しますよね。そんな感じでレーベルとして盛り上がっていくのが理想なんですよ。難しいですが(笑)。

──「RECORDZとまり木」という名前を最初に聞いたときは、もっとイロモノっぽいものを想像してたんですけど、蓋を開けてみると、意外なほどに本気だったんで驚きました。

リリー そうですよ。こんな真面目なレーベルほかにないですよ。最終的にはアップルレコードにしたいと思ってるからね。ラフ・トレードやチェリーレッドを超えて。

──すごい。大きく出ましたね(笑)。

リリー でもTHE BEATLESがアップル作ったときも最初はこんな感じだったんですよ。違うと思うけど(笑)。

──時代とともにちゃんと成長していければ、きっと成功ってことですよね。

リリー 今はみんな土着的な、人間の因果みたいなものに近寄ってきてる気がする。なんか同じ時代に生きて、みんな同じことを考えてるんだなって俺はすごく思うんです。同じものを見て同じ空気を吸ってるわけだから。だからこのレーベルでも特別なことをしようなんて思ってない。俺と似た奴は、俺が好きなものを好きだろうって思ってやってるだけなんですよね。

インタビュー風景

ジミ・シジミ デビューシングル「シジミの女」 / 2011年8月17日発売 / RECORDZとまり木

  • 初回限定盤 [CD+DVD] 1500円 / TOCT-40347 / Amazon.co.jp
  • 通常盤 [CD] / 1000円 / TOCT-40348 / Amazon.co.jp
  • iTunes Store
  • EMI Music Japan SHOP
CD収録曲
  1. シジミの女
  2. 私ってなんなんですか feat.寺島進
  3. シジミの女 (FPM EVERLUST REMIX)
  4. シジミの女 (川辺ヒロシ HAMMER BEAT REMIX)
  5. シジミの女 (オリジナル・カラオケ)
DVD収録内容
  • 「シジミの女」 Music Video
  • 「シジミの女」 Short Film 「朝が来ない夜」
  • 「シジミの女」 Music Video 流しクネクネ バージョン
  • 「シジミの女」 Short Film 「朝が来ない夜」 未公開映像

Directed by リリー・フランキー

リリー・フランキー

アーティスト写真

1963年福岡県出身。武蔵野美術大学を卒業後、イラストやデザインのほか、文筆、写真、作詞・作曲、俳優など多彩な分野で活動。音楽分野ではElvis Woodstock名義で作詞作曲を手がけ、数多くのアーティストに楽曲を提供している。2011年、新たに立ち上げたレーベル「RECORDZとまり木」では、J-POPでも演歌でもない“NEO歌謡曲”をコンセプトに、スナック風の音楽を展開し、新人発掘も手がける。俳優としては、映画「モテキ」「僕たちは世界を変えることができない。」に出演している。