音楽ナタリー PowerPush - T.M.Revolution
股間からイナズマまで 西川貴教の現在地
作り続ける中で見えてくるもの
──T.M.Revolutionとしてタイアップ曲を制作する際に心がけていることはありますか?
例えば「アニサマ(Animelo Summer Live)」に出てるラインナップを見てると、やっぱりアニメ業界に貢献してきた方々が多くて、いわゆるJ-POPのアーティストって僕だけだったりするんです。でも僕はやっぱりJ-POPのアーティストが自分の曲を提供してますっていうのではなく、作品のコンセプトやプロット、台本も全部読みこんだ上で、自分の描きたい世界観と作品との共通点を見つけて形にしていきたい。そこを丁寧にやってきたっていう自負はあります。
──でも作品の世界観を尊重して作るといっても、「戦国BASARA」があって「アベンジャーズ」があって「デリケアエムズ」まであってとなると、かなりバラバラですよね。
そうですね(笑)。
──その中で自分のアーティスト性を打ち出し続けるのはかなり難しいんじゃないかと思うんですが。
はい。だから最初から「T.M.Revolutionに音楽性はない」って言ってるんです。それこそ恋愛とかと一緒で「好みは誰?」って言ってても、やっぱりそのとき付き合ってる彼女が一番の好みになるわけじゃないですか。作り続けていく中で見えてくるものがある。今回「突キ破レル」でやったようなジャズフュージョンとJ-POPの融合みたいなものもそうです。新しいアプローチの中で見えてくる音が今のT.M.Revolutionだと思っているので。
──その芯にあるものはなんなんでしょう?
僕が歌ってるってことですね。そこさえブレなければ基本どんなものが来てもいいんです。だから今回みたいに、CMソングでとんでもない歌詞で歌ってても絶対に聴かせてやるっていう。
──どんな歌詞でも感動させる?
あんな歌詞なんだけど「ちょっぴり切なくなりました」みたいに言ってもらえる。そこはすごく大事にしてるところですね。
6年目の「イナズマロック フェス」
──そしてまもなく「イナズマロック フェス 2014」も開催されます。世の中にたくさんのフェスがある中で、「イナズマ」ほど地域行政と密着したフェスはあまりないと思うんですが。
そうですね。今年で6回目なんですけど、今年の滋賀県知事選では嘉田知事が続投せず、三日月知事が県の代表になられたんですよ。県からは「今後も変わらずイベントを応援しますよ」っていう確約はいただいてるんですけども、とは言え新たな方々とこれから関係性を築いていくわけで。そう考えると今回は6年目にしてまた新たなスタートだと思ってます。
──なるほど。
やっぱり行政と一緒に立ち上げたイベントですからね。このフェスをやっていく過程で、普通にアーティスト活動だけやってたら知ることができないような地方の問題みたいなこともやっぱり強く感じるし。やりたい仕事がないとか、若い人が少ないとか。地方について考えると、すごくリアルに日本の国力が見えてくるんです。やっぱりその地域を愛してくれる人が増えることによって、地域は活性化するんだなって感じるので。
──これまでいろんなアーティストのインタビューをしてきましたが、国力の話題が出たことはなかったです(笑)。
そうですよね(笑)。でもそこが問題だと思うんですよ。
──アーティストが政治的な問題にコミットするのはごく自然なことだと思うんですが、中でも西川さんは非常に実効性のある形で動いている印象があります。
やっぱり海外のアーティストだと、例えば飢餓を救う基金を作ったり、教育や戦争について声をあげる事例がたくさんありますよね。でも我々が日本から何かを発信しようって考えたときに、みんな臆しちゃうところがあると思うんです。
──はい。
でも世界平和とか戦争反対とか、そこに対して声を上げることももちろん大切だけど、我々はもっと見直さなきゃいけないところが実は近くにあって。それがそういう地方自治だったりとか、自分たちが納めた税金の行方だったり、子供の教育だったり、じいちゃんとかばあちゃんたちの明日の暮らしだったり。そういうことに対してきちんと発言をしていかなきゃって、改めて思うんですよね。
ロックは生き様
──「イナズマ」の出演アーティストについても聞かせてください。ほかのフェスとはやはりちょっと違って、“J-POP感”みたいなものが強い気がするんですが、そこは意識してのことなんですか?
はい。ロックファンに向けたフェスをたまたま滋賀でやってるっていうんじゃなくて、地域の皆さんに元気になってもらいたくてやってるものだし、僕はこれを地域の祭りにしたいんです。だからこそテレビで観たことのある人や今話題になってる人を呼びたくて。それがやっぱり「イナズマ」の特色かなって思ってますね。
──結果、先鋭的なラインナップにはならないわけですよね。
そうです。鈍器で殴るみたいな感じ(笑)。
──あはは(笑)。
でもそこがすごく大事なところで。「ロックフェスってこういうものだよね」って見よう見まねでやっても、やっぱり本物にはならないんですよ。やっぱり僕がやるイベントなんで。僕が感じてきたこと、大事にしてきたこと。そのカラーが出てこそ本物だと思うんです。
──西川さんは先ほども自分の音楽を「J-POP」と称してましたが、でも生き方はロックだということですよね。
そう、生き様の問題。だからよく「ロック」って言うとすごくアウトロー的な……。
──タトゥーがびっちり入ってないとダメみたいな?
そうそう(笑)。そういうイメージもあると思うんですけど、でも例えばももクロちゃんは、実は「イナズマ」と同じ日に「氣志團万博」に出るのが決まってて。でも「イナズマにも出たい」って言ってわざわざ来てくれるんです。だから滋賀でライブをやって、そのまま夜に千葉のイベントに出るっていう。これ、めちゃめちゃロックじゃないですか?
──そうですね。
僕はそういうことだと思ってるんですよ。僕にとってロックっていうのは、音楽性じゃなくて生き様なんです。だから「イナズマ」もT.M.Revolutionも、「あんなのはロックじゃない」みたいなことを言われたりもするんですけど、でもまずは来てほしいし観てほしい。どんなことやってるか観てくれたら、絶対に伝わるし、感じてもらえるって思ってます。
- ニューシングル「Phantom Pain」 / 2014年9月3日発売 / EPICレコード
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 1800円 / ESCL-4272~3
- 通常盤 [CD] / 1200円 / ESCL-4274
CD収録曲
- Phantom Pain
- Count ZERO(Re:boot)
- 臍淑女 -ヴィーナス-(Re:boot)
- Phantom Pain(Original Backing Track)
初回限定盤DVD収録内容
- 「Phantom Pain」Music Video
- 「Phantom Pain」TV-SPOT
- ニューシングル「突キ破レル-Time to SMASH !」 / 2014年8月6日発売 / EPICレコード
- 完全生産限定盤A [CD+グッズ] / 2592円 / ESCL-4258~9
- 完全生産限定盤B [CD+グッズ] / 1620円 / ESCL-4260~1
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 1944円 / ESCL-4262~3
- 通常盤 [CD] / 1296円 / ESCL-4264
CD収録曲
- 突キ破レル-Time to SMASH !
- Thread of fate
- 突キ破レル-Time to SMASH !(Original Backing Track)
- Thread of fate(Original Backing Track)
- 突キ破レル-Time to SMASH ! -アニメバージョン-
- Thread of fate -アニメバージョン-
初回限定盤DVD収録内容
- 「突キ破レル-Time to SMASH !」Music Video
- 「Thread of fate」Music Video
- TVアニメ「ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ」ノンテロップ・オープニング
- TVアニメ「ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ」ノンテロップ・エンディング(第1期)
- TVアニメ「ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ」ノンテロップ・エンディング(第2期)
T.M.Revolution(ティーエムレボリューション)
1970年滋賀県生まれの西川貴教によるプロジェクト。1996年5月にシングル「独裁-monopolize-」でメジャーデビュー。キャッチーな楽曲と圧倒的なライブパフォーマンスで人気を集め、「HIGH PRESSURE」「HOT LIMIT」「WHITE BREATH」などのヒット曲を連発する。2008年には「滋賀ふるさと観光大使」に任命され、翌2009年から滋賀県初となる大型野外ロックフェス「イナズマロック フェス」を連続開催。その他、司会・俳優など幅広い分野にて精力的に活動を展開している。2013年には水樹奈々とのコラボシングル「Preserved Roses」「革命デュアリズム」を発表し同年末の「NHK紅白歌合戦」にも出演した。2014年8月に「突キ破レル-Time to SMASH !」、9月に「Phantom Pain」というシングル2タイトルを2カ月連続リリース。