ナタリー PowerPush - T.M.Revolution
“異世界感”をさらに追求 セルフカバーでリミッター解放
T.M.Revolutionがセルフカバーベストアルバム「UNDER:COVER 2」をリリースする。この作品は2006年1月発売の「UNDER:COVER」に続くセルフカバー企画第2弾。ファンからのリクエストによって選ばれた人気曲が、多彩なゲストアーティストを迎えて、最新のアレンジでよみがえる。ナタリーでは発売を目前に控えた西川貴教にインタビューを行い、その思いを聞いた。
取材・文 / 大山卓也
CDとライブの間に生まれた距離
──「UNDER:COVER 2」聴かせていただきました。そもそもこの「UNDER:COVER」というセルフカバーアルバムは、西川さんにとってどういう位置付けの作品なんですか?
あの、僕の場合CDとライブは別ものなんです。ライブではCDをそのまま再現するわけじゃなく、生のバンドアレンジで毎回ブラッシュアップしてるんで。
──確かにT.M.Revolutionのライブに行くとそのサウンドの変化に驚かされます。聴き慣れた楽曲が、ライブ仕様の太くて激しいアレンジに生まれ変わっていて。
そうなんです。で、そうやってライブでしかできない音を作っていくと、音源とライブの間に距離が生まれてくるんですね。そしてその音はよくも悪くもライブに行かないと聴けないもので。
──そうしたライブアレンジをベースに、改めてレコーディングしたのが「UNDER:COVER」であると。
はい。
──ところで今から2年前、9thアルバム「CLOUD NINE」リリース時のインタビューで西川さんはT.M.Revolutionのサウンドについて、「時代遅れでかまわない」ということを言ってましたよね。ファンが求める90年代サウンドみたいなものをあえて追求していくんだと。でもこの「UNDER:COVER 2」でやろうとしてることは、それとはずいぶん違うように思うんですが。
そうですね。この作品に関しては、まあ……言い方は難しいんですけど、やっぱり震災の影響っていうのが少なからずあって。なんかね、明日のことなんて本当にわからないし、「いつかこれをやろう」「何年か先にああしよう」じゃなくて、やっぱり今、自分の中で面白いことや新しいものをやりたいって気持ちがあるなら、それはすぐにやらなきゃいけないなって。あの震災を経て、気持ちがシフトした感じは正直あります。今やるべきことを形にしていきたい。その思いが今の自分を動かしてるんですよね。
──西川さんが今やりたいものを形にしたことによって、「UNDER:COVER 2」のサウンドがバラエティ豊かなものになったわけですね。
たぶん次のオリジナルアルバムを作るときには、自分の視野を意図的に絞って、ある特定の方向性を突き詰めていく、みたいなことも必要だと思うんですけど、そのために今どういうことができるのかって考えたときに……。
──今回はめいっぱい広げてみたと。
そうですね。今回これをやったことで「あ、もうそういう次元じゃないな」「この気持ちで次を作りたいな」っていう感じはあります。
──オリジナルアルバムにつながる実験が詰まった作品ですね。
はい。これができたんだから、次はまたもっと面白いことができるんじゃないかなって。今までは世の中の流れと関係なく内へ内へと突き詰めてきて、次がちょうど10枚目のオリジナルアルバムになるんですけど、今後は外に向かうものもやっていきたいっていう気持ちが強くなってます。それがこの2年間の大きな変化かもしれないですね。
“異世界感”さえあればいい
──ただこの作品が不思議なのは、ヒップホップからヘヴィロックまで、サウンドバリエーションの幅は広いのに、どの曲もちゃんとT.M.Revolutionの曲に聞こえることなんですよね。
なんかこう、「T.M.Revolutionとは何か?」っていう話になるんですけど、西川が歌っていれば、そこがブレてなければ、まあ何やってもいいんじゃないかみたいなところがあって。そこはほかのアーティストとは違う独特の部分だと思うんです。“異世界感”って言うんですかね。ちょっとだけ次元がずれる感覚。そこだけ守られてれば、ほかはどうなってもいいかなって(笑)。
──その“異世界感”というのは、言葉を変えればファンタジーっていうことですよね。
あはは(笑)。いや、まさにその通りですね。
──だからこそサウンド面での制約にとらわれずどんどん冒険して遊んでいける。そうした自由さをこの「UNDER:COVER 2」で改めて感じましたし、T.M.Revolutionに対する音楽的な興味が今まで以上に湧いてきました。
うれしいですね。だから本当に、今回のアートワークなんかもそうですけど、やっぱりファンタジーなんですよ。アートワークにしてもツアーの演出ひとつにしても、もろもろ考えていくときに一番大事なものって、やっぱり日常からいかにみんなを切り離せるかっていうところなんです。もちろんいろんなアーティストの方がいらっしゃるんで、日常生活と直結した表現をする人もいて、それは素晴らしいことだと思うんですけど……。
──等身大のロックみたいなことですね。
そうそう。だけど僕がT.M.Revolutionでやろうとしてることは、それとは違うんです。ライブ会場の入り口でチケットもぎってもらって、会場の扉を抜けた瞬間にどれだけ別の次元に連れてってあげられるかっていう。そこだと思ってるんです。そういった意味でも、T.M.Revolutionが担う役割っていうのは、これまでよりももっと大きくなってると思う。
──どういうことですか?
ほら、やっぱり不景気なのもあって、身近な日常を歌ったり、いわゆる“泣ける曲”みたいなものが尊ばれたりするのはすごくわかるんですよ。僕も実際好きだし。だけどT.M.Revolutionがそれをやってちゃいけないんです。T.M.Revolutionっていうのは「大地を割る」とか「空を落っことす」とか、そういうことをやってのけて、みんなに夢を見させる人なんですよ(笑)。
──なるほど(笑)。でもその方向でやり続けるのはすごく大変ですよね。等身大の自分を見せていくほうがどれほどラクかっていう……。
まあね。でもいつのまにかこうなっちゃってるんで(笑)。僕はやっぱり板(ステージ)の上に立つ人っていうのは、どこかずれてたりとか、なんかおかしな人じゃないといけない気がしてるんです。現実感がなくて「この人本当に生きてるのかな?」って思われるくらいじゃないといけない。自分自身はすごくまともなつもりではいるんですけど(笑)、そういう幻想っていうのはこれだけ情報があふれる世の中においても大事にしていきたいですね。
- ニューアルバム「UNDER:COVER 2」/ 2013年2月27日発売 / エピックレコードジャパン
- 完全生産限定盤 [CD2枚組+オリジナルアンダーウェア]
- 完全生産限定盤
- 完全生産限定盤 Type A / 8000円 / ESCL-4019~4021
- 完全生産限定盤 Type B / 8000円 / ESCL-4022~4024
- 完全生産限定盤 Type C / 8000円 / ESCL-4025~4027
- 初回限定盤 [CD+DVD]
- 初回限定盤
- 初回限定盤 / 3990円 / ESCL-4028~4029
- 通常盤 [CD]
- 通常盤 / 3059円 / ESCL-4030
- 初回仕様ジャケット
- 通常仕様ジャケット
CD収録曲
- LEVEL 4
- 蒼い霹靂
- IMITATION CRIME
- INVOKE
- last resort
- 独裁-monopolize-
- とっておきのおはなし~新説恋愛進化論
- O.L
- Burnin' X'mas
- SHAKIN' LOVE
- Out Of Orbit ~Triple ZERO~
- WILD RUSH
- Albireo-アルビレオ-
- vestige-ヴェスティージ-
- Tomorrow Meets Resistance
完全生産限定盤ボーナスCD収録曲
- Meteor-ミーティア-
初回限定盤DVD収録内容
- イナズマロックフェス2012より、T.M.Revolution LIVEの模様を収録
T.M.Revolution (てぃーえむれぼりゅーしょん)
1970年滋賀県生まれの西川貴教によるソロプロジェクト。1996年5月にシングル「独裁-monopolize-」でメジャーデビュー。キャッチーな楽曲と圧倒的なライブパフォーマンスで人気を集め「HIGH PRESSURE」「HOT LIMIT」「WHITE BREATH」などのヒット曲を連発する。2008年には「滋賀県ふるさと観光大使」に任命され、2009年からは滋賀県初となる大型野外ロックフェス「イナズマロック フェス」を主催。2011年夏にはポルトガルの少年・ミゲルとエステー「消臭力」のCMで共演し話題を集めた。2013年2月にはセルフカバーアルバム第2弾「UNDER:COVER 2」をリリース。