THE PINBALLS|「光の三原色」に例えて歌いたかったもの

音楽を聴いてたぎる気持ちを歌った「Lightning strikes」

──ではここからは光の三原色を担う3曲について、1曲ずつじっくりとお話を聞かせてください。まず「Lightning strikes」は音楽を聴いたときの燃えたぎる気持ちを歌ったとのことですが、それは音楽を演奏していてということではなく、あくまでも聴いているときの気持ちなんですね。

古川 はい。聴いてる側の気持ちです。確かに、なんで演奏する側じゃないんだろう……。

──なぜだと思います?

古川 音楽を聴くのが好きなんです。バンドで演奏するのももちろん好きだし、自分が音楽を提供する側だという気持ちも持ってるんですけど、人生のうち、音楽を享受する側、音楽の恩恵を受ける側でいる時間が大きく占めているんですよね。

──古川さんが実際に聴いて気持ちが高ぶる音楽はどんなものですか?

古川 いろいろあるんですが、初めてラジオから流れてきたトム・ウェイツの「Make It Rain」を聴いたときに、「なんだこれ! すごい!」と思って。そのときは踊らなかったけど、好きな音楽を聴いたときとか、自然と1人で踊っちゃったりするときあるじゃないですか。

森下 ある?(笑)

古川 あるでしょ?

森下 ごめん、僕はないです(笑)。

古川 ないの? (体を揺らしながら)聴きながらこうやって動くと楽しいよ!

森下 おお、じゃあ今度やってみるわ(笑)。

──なぜ今、音楽を聴いてたぎる気持ちを歌にしようと思ったんですか?

古川 なんか最近、音楽を聴くのが楽しいんです。実際にたくさん音楽を聴いてるし。これまではほかのアーティストからの影響を受けないようにと思って、わざと音楽を聴かないようにしてたんですけど。音楽を聴くのが楽しくなったのって、バンドが調子いいからだと思っていて。2、3年前からだんだんバンドの調子がよくなってきて、そうしたらメジャーデビューが決まってっていう感じで。そのおかげで音楽やるのも聴くのも楽しくなってきました。

──ほかのアーティストからの影響を受けたところで、何をやっても自分たちの曲になるという自信が付いたのかもしれないですね。

古川 まさにそうだと思います。

──そういう点で言うと、自分たちで思うTHE PINBALLSらしさってどこだと思いますか?

古川 ほかのメンバーがなんて思うかわからないですけど、この3人が曲をプレイすることが僕にとってはTHE PINBALLSらしさですね。僕がどんな曲を持っていっても、この3人が演奏すればTHE PINBALLSの音になるなと思ってます。THE PINBALLSは今年で結成12年目なんですけど、1回もメンバーが変わってないことも大きいのかな。

森下拓貴(B)

森下 うん。さっき「ほかの音楽を聴いて影響を受けすぎちゃうのが怖かった」というようなことを言ってましたけど、影響を受けたところで結局この4人の音にしかならないんですよ。そっくり真似るみたいな器用なことができるバンドでもないし。「何を聴こうが、何をしようが結局THE PINBALLSになるな」っていうのは、本当にバンドの調子がよくなってきているときに気付きましたね。

石原 本当にこの4人でいることがTHE PINBALLSらしさだと思います。

中屋 別にいつも一緒にいるとかそういうことではないですけど、12年間一緒でだいたいのことはわかるので。意識的に例えば「今作はEDMっぽく」とか言うことはあったとしても、軸となる音楽性が大きく変わることもないでしょうしね。

青の「Voo Doo」、緑の「花いづる森」

──では続いては2曲目「Voo Doo」。この曲は青のイメージということですが。

古川 例えば「俺たちはガレージバンドだから気張ってなきゃいけない」とか「態度悪くしないと」とかそういう考えっていらないなと思っていて。いろんなことに対して頭を柔らかくして考えたいなと常々思ってるんですね。そこから、例えば硬い壁って密度があって実体があるから押したら跳ね返るけど、分子がめちゃくちゃ細かくなったら、壁もすり抜けられるよなという考えに至って。でも実際は体があってすり抜けられないから、せめて考えくらいは柔らかくしていたいなと。そういうことを歌詞にしました。

──「まっさらなルーザー」という歌詞から、てっきりご自身のバンドのことを歌っているのかと思いました。

古川 作ってるときは自分の気持ちとは違うこと、分子とか電子とかそういうことを書いてましたけど、頭のどこかには絶対自分たちのこともあったと思います。僕は歌詞を抽象的に書く癖があるので、そういう自分たちの気持ちを、分子とか電子に重ね合わせているんだと思う。だから聴いた人にいろんな受け取り方をしてもらえればと。僕は照れ屋なので、自分の気持ちを素直に伝えられなくて。何かに例えないと伝えられないんですよ。そこが超いいところでもあるし、超ダメなところでもあると思います。

──では最後は“緑”の「花いづる森」。この曲ができた背景を教えてください。

古川貴之(Vo)

古川 我々はこういう幻想的な曲も好きで。イメージの湧きやすい曲にしたいなと。夢の中で「ここ、なんか見たことあるな」って思うときがあるじゃないですか。この曲はそういう感じが表現できたらと思って書きました。聴いてくれてる方の中で、ファンアートとして僕たちの曲を地図にしてくださってる方々がいて。その地図の中に加えられたらと思って、“場所”のことを歌いました。

──ああ、実際に地図を描いている方がいるんですね。

古川 そうなんです。例えば「沈んだ塔」(2015年10月発売のミニアルバム「さよなら20世紀」収録)はここにあって……みたいに架空の地図を考えてくださってる。すごくうれしいですよね。おこがましいですけど、1つ曲を作るということは、1つ世界を作れるということじゃないですか。だから新しい1つの世界の中で、聴いてくださる人が楽しんでくれたらいいなと思います。

──ちなみに「森」とひと口に言ってもさまざまなイメージがあると思いますが、この曲ではどのような森が描かれているんですか?

古川 ちょっと怖いんですけど、今は死んでる森です。死の森ですね。今は枯れていて、草も花も1本も生えてないんですけど、これから生えるんです。そういう期待感を描いてます。

──先ほどの理論でいくと、この森にもご自身の気持ちがどこかに投影されていると思うんですが、どういう思いが隠れているんでしょう?

古川 まだ僕らは一流と呼ぶには足りない部分があって。でもこれからよくなって、いつか花が開いてほしいなという気持ちです。

THE PINBALLS「Primal Three」
2018年4月25日発売 / 日本コロムビア
THE PINBALLS「Primal Three」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
1944円 / COZA-1430~1

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THE PINBALLS「Primal Three」通常盤

通常盤 [CD]
1080円 / COCA-17447

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CD収録曲
  1. Lightning strikes
  2. Voo Doo
  3. 花いづる森
初回限定盤DVD収録内容
  • 「NUMBER SEVEN tour@渋谷CLUB QUATTRO」ライブ映像
THE PINBALLS(ピンボールズ)
THE PINBALLS
2006年に結成された、古川貴之(Vo)、中屋智裕(G)、森下拓貴(B)、石原天(Dr)からなる埼玉県出身の4人組ロックバンド。2014年9月に初のフルアルバム「THE PINBALLS」をリリースした。2015年4月には楽曲「劇場支配人のテーマ」がアニメ「ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン」第3話のエンディングテーマに使用された。2017年12月にミニアルバム「NUMBER SEVEN」を日本コロムビアよりリリースし、メジャーデビューを果たす。収録曲の「蝙蝠と聖レオンハルト」はテレビ東京系「JAPAN COUNTDOWN」の12月度エンディングテーマとして「七転八倒のブルース」はTVアニメ「伊藤潤二『コレクション』」オープニングテーマとしてオンエアされた。アルバム発売後の2018年2月に東名阪ワンマンライブツアー「NUMBER SEVEN tour 2018」を開催。2018年4月25日にはメジャー1stシングル作品「Primal Three」をリリースし、5月から全国ツアー「Leap with Lightnings tour」を行う。