音楽ナタリー Power Push - the pillows 山中さわお×上田健司 対談

バンドの歴史が交差する20thアルバムとそのドラマ

the pillowsがおよそ1年半ぶりのニューアルバム「STROLL AND ROLL」を完成させた。通算20作目のオリジナルアルバムとなる本作には、the pillows結成時のメンバーである上田健司をはじめ、JIRO(GLAY)、宮川トモユキ(髭)、鹿島達也、そして現在のライブサポートメンバー有江嘉典(VOLA & THE ORIENTAL MACHINE)という5人のベーシストが参加。開放感のあるロックンロールナンバーから1980年代のUKロックのテイストを感じさせる楽曲まで、幅広い音楽性を表現した作品に仕上がっている。

今回音楽ナタリーではthe pillowsの山中さわお(Vo, G)と上田健司の対談をセッティング。バンド結成時の貴重なエピソードから「STROLL AND ROLL」のレコーディングにおける裏話まで、the pillowsの歴史を紐解くような貴重なトークが展開された。またページ後半にはアルバムの全体像を語る山中の単独インタビューも掲載している。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 西槇太一

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山中さわお×上田健司 対談

一夜限りの“第1期ピロウズ”再結成

──まずはここ数年のthe pillowsと上田さんの交流について聞かせてください。2014年のthe pillows結成25周年を記念したイベント「NEVER ENDING STORY」の第1弾として、上田さんがライブに参加しました。あのとき22年ぶりに第1期のthe pillowsが復活したわけですが(参照:22年ぶり復活!the pillowsが上田ケンジと第1期ライブ)、あれはどういう経緯で実現したんですか?

山中 えーとね……その前の年(2013年)にヨウちゃん(吉村秀樹)が亡くなって、bloodthirsty butchersが「JOIN ALIVE」に出られなくなったんだよね。

上田 「代わりに何かやってくれないか」って言われたんですよ。ヨウちゃんと仲のいい人がいいだろうということで俺のところに話が来たんだろうけど、そのときに山中と何かやれたらいいなと思って、連絡したんですよね。

山中 うん。そのときは結局やれなかったんだけど、ひさびさに上田さんとステージに立てるかもしれないという話でちょっと楽しくなっていたから、「もっと落ち着いてやれるときに、ちゃんとやりませんか」って。

上田 そう、山中が言ってくれたんだよね。

左から山中さわお、上田健司。

山中 で、その翌年の2014年にthe pillowsの25周年のアニバーサリー企画をやることになって。まず“第2期”と呼ばれている時期の楽曲……ちょっとソウルっぽい、今とは方向性の違う音楽を、全員スーツを着て、初めてホールでやるということが決まったんだよね。そのときに「そういえば前に上田さんと何かやろうって言ってたな」って思い出して、「だったらthe pillowsの第1期を上田さんと一緒にやればいいんじゃないか」と。

上田 よかったよね、あれは。リハのときもそうだったんだけど、一緒にやってみると「あ、こんな感じだったな」ってすぐに雰囲気やフィーリングを思い出して。あと、シンちゃん(佐藤シンイチロウ / Dr)以外の2人(山中、真鍋吉明 / G)はすごくうまくなってた。

山中 ハハハハハ(笑)。上田さん、集まったときの空気はすぐに思い出したけど、そのほかのことは何も覚えてなかったんですよ。自分で書いた曲か俺の曲かも覚えてなかったし(笑)。まあ、22年ぶりでしたからね。上田さんは18歳の頃から東京に来ていて、KENZI & THE TRIPSをやって、その後the pillowsを始めたっていう歴史があるから。俺はthe pillowsで東京に出てきて、レコーディングも雑誌のインタビューも全部が初めてだったから、すごく細かく覚えてるんだよ。その違いはあるよね。

上田 そうだね。まあ、俺はいろいろと忘れがちな男ではあるんだけど(笑)。

シンちゃんは年上だけど立場は1コ下

──22年ぶりの第1期the pillowsのライブ会場は、the pillowsが初めてワンマンライブを行った新宿LOFTでした。ライブの手応えはどうでした?

山中さわお

山中 そこまでドラマチックなものを感じていたわけではなかったかな。そんな余裕もなかったからね。とにかくひさしぶりにやる曲ばかりだったから、ギターや歌詞を間違えないようにやるのに必死で。10本くらいのツアーをやれば、もっと感傷的にもなれたんだろうけど。

──1stミニアルバム「パントマイム」の楽曲も演奏されたレアなライブでしたよね。「Razorlike Blue」をライブで聴いたのは初めてでした。

上田 あれ、山中が高校生のときの曲だよ。

山中 それくらい古い曲だと開き直れるんだけどね。「ダサくてもしょうがない。俺、17歳だったんだから」って。シンイチロウくんは「これはやらなくていいんじゃない?」って言ったけど、あいつに言われると腹が立つ(笑)。「それは俺に言わせろよ!」って。

上田 シンちゃん、あの曲大好きだったけどね。俺に山中を紹介するときも「Razorlike Blue」を聴かせたんじゃなかったかな。

──さらに昨年8月に行われた上田さんの50歳記念イベントにthe pillowsが出演し(参照:上田健司50歳記念ライブにPUFFY、the pillows、KENZI & THE TRIPSら)、そして今回はthe pillowsのニューアルバム「STROLL AND ROLL」に上田さんが参加しました。このアルバム、そもそも複数のゲストベーシストを招いたのはどうしてなんですか?

山中 バンドを始めて最初の10年くらいは、音楽をやるためのカンフル剤なんて要らなかったんだよ。だけどその後は、5年に1回くらいのペースで何かスパイスがあったほうが楽しいというのがあって。20年を超えると2年に1回くらいはスパイスが欲しくなるんだけど、今回はいろんなベースの人とやってみようと。それぞれが鳴らす音も大事なんだけど、メンバー以外の誰かがスタジオに来たときの、シンイチロウくんと真鍋くんが背筋を伸ばす感じが好きというか、「そうであってほしい」という気持ちもあったから。

上田健司

上田 シンちゃん、すごく真面目に叩いてたよね。ビックリした。

山中 (笑)。シンイチロウくんは最初、上田さんが来ることをちょっとイヤがってたんですけどね。「上田、怖えからな」って。真鍋くんはすぐに「いいね」って言ってたんだけど。

上田 ヘタなやつには厳しいからね、俺。シンちゃんとはKENZI & THE TRIPSのときからよく2人で練習してたんだけど、「何だそのバスドラは!」ってドラムセット蹴ったりしてたから。年齢はシンちゃんのほうが1コ上なんだけど、立場は1コ下というか、弟子みたいな感じで。

山中 シンイチロウくんは俺の4つ上なんだけど、やっぱり立場は1コ下なんだよね(笑)。

上田 あいつは一番下なんだよ、ロック界で(笑)。

the pillows ニューアルバム「STROLL AND ROLL」 / 2016年4月6日発売 / DELICIOUS LABEL
ニューアルバム「STROLL AND ROLL」
初回限定盤 [CD+DVD] 3780円 / QECD-90001(BUMP-052)
通常盤 [CD] 3240円 / QECD-10001(BUMP-053)
CD収録曲
  1. デブリ
  2. カッコーの巣の下で
  3. I RIOT
  4. ロックンロールと太陽
  5. Subtropical Fantasy
  6. エリオットの悲劇
  7. ブラゴダルノスト
  8. レディオテレグラフィー
  9. Stroll and roll
  10. Locomotion, more! more!
初回限定盤DVD

MUSIC VIDEO

  1. カッコーの巣の下で
  2. デブリ
  3. Locomotion, more! more!
the pillows(ピロウズ)
the pillows

山中さわお(Vo, G)、真鍋吉明(G)、佐藤シンイチロウ(Dr)の3人からなるロックバンド。1989年に結成され、当初は上田健司(B)を含む4人編成で活動していた。1991年にシングル「雨にうたえば」でメジャーデビュー。結成20周年を迎えた2009年9月には初の東京・日本武道館公演を行い、大成功に収めた。2012年にはバンドを一時休止し、山中と真鍋はそれぞれソロアルバムを発表。2013年の再始動後は再び精力的な活動を展開し、2014年2月には結成25周年を記念したトリビュートアルバム「ROCK AND SYMPATHY -tribute to the pillows-」、同年10月にはオリジナルアルバム「ムーンダスト」が発売された。2016年4月には、オリジナルメンバーの上田をはじめ、JIRO(GLAY)、宮川トモユキ(髭)、鹿島達也、有江嘉典(VOLA & THE ORIENTAL MACHINE)という5人のベーシストをゲストプレイヤーに迎えた通算20枚目のオリジナルアルバム「STROLL AND ROLL」をリリース。5月からは全国26会場を回るライブツアー「STROLL AND ROLL TOUR」を行う。

上田健司(ウエダケンジ)

1965年8月30日生まれ、北海道札幌市出身の音楽プロデューサー。1987年にKENZI & THE TRIPSのベーシストとしてシングル「DIANA」およびアルバム「FROM RABBIT HOUSE」でメジャーデビューを果たす。1989年にバンドが解散すると、同郷の札幌で活動していた山中さわお(Vo)、真鍋吉明(G)、KENZI & THE TRIPSでともに活動していた佐藤シンイチロウ(Dr)とともにthe pillowsを結成。1991年5月にシングル「雨にうたえば」でメジャーデビューした。この頃からプロデュース活動も並行して行い、1993年にthe pillowsを脱退したあとはサポートベーシストとして活動しながら、加藤いづみ、カーネーション、GOING UNDER GROUND、堂本剛(KinKi Kids)、長渕剛、PUFFY、渡瀬マキ(LINDBERG)、小泉今日子、Drop's、爆弾ジョニーほかさまざまなアーティストの編曲やプロデュースを手がける。2008年には故郷札幌にスタジオ「john st!」(現Musik Studio)を開設。2010年にはアーティストマネジメントや新人発掘、音楽出版、コンサート企画制作などを広く行う株式会社カムイレコードを設立した。