音楽ナタリー Power Push - THE 夏の魔物

生身のロックバンド宣言!ニューシングルで見せる“核”とは

塚本舞・大内雷電・アントーニオ本多・鏡るびい インタビュー

左から大内雷電、塚本舞、鏡るびい、アントーニオ本多。

「テーマは“別れ”でお願いします」

──今回は2組に分かれてのインタビューなんですが、こちらではアントンさんが作詞を担当した楽曲「over the hill」と、塚本さんの卒業の話題を中心に伺えればと思っています。まずは塚本さん、卒業が近付いてきた今の心境はどうですか?

塚本舞 卒業が決まって魔物チルドレンの皆さんに伝えるまでの時期が、感情的には一番あふれそうな時期だったかもしれないです。今こうやってシングル発売前のプロモーションや撮影をしてると、なんだか実感がなくなってきて、いつまでもこの感じが続くような気がしてきちゃって(笑)。ただこの曲ができあがったのを聴いたときには、やっぱり寂しさの波がドッときましたけど。

──この「over the hill」は塚本さんの卒業をきっかけに作られた曲とのことですが、アントンさんが歌詞を書くことになったのはどういう経緯で?

アントーニオ本多 成田くんから急に言われまして。それがライブのあとの特典会のときだったんですよ。

──えっ?

アントーニオ本多

本多 特典会の最中に「アントンさん、ちょっと大事な話さらっと言っていいですか?」「え、何?」「歌詞書いてほしいんですよ」って。

──内容についてのリクエストは?

本多 「テーマは“別れ”でお願いします」と言われましたね。

──別れをテーマに詞を書くにあたって、やはり塚本さんの卒業は意識しましたか?

本多 もちろんそれもあったんですけど、身内の曲で終わらせたくなかったので、誰が聴いても伝わる普遍的なものにしたくて。別れがあるからこそ再会があるわけで、その別れから再会へのプロセスをテーマにしようと。最終的に音楽の教科書に載るような作品にしたかった。その上でやっぱり我々のことを歌わなきゃいけないと思ったんです。

大内雷電 別れの歌なんだけど、後ろ向きじゃないんですよね。

普遍的な別れの歌を普遍的じゃない人たちが歌う

──塚本さんはこの曲を初めて聴いたときどう感じました?

塚本 男女のかけ合いなんですけど、恋愛とも友情ともとれるし、私たちみたいにグループの絆の歌としても聴ける。受け取る人によって変わると思うんですけど、でも私はすごく「私たちの歌だな」って思いました。

本多 よかった。

塚本舞

塚本 アントンさんが意識してるかはわからないんですけど、歌詞の中に「魂」って言葉が入ってるんです。「魂」っていう言葉は「リングの魔物」や「魔物、BOM-BA-YE ~魂ノ覚醒編~」でも出てくるし、魔物で活動していく中でやっぱり1つ大きなテーマというか、自分の中の魔物らしいワードなんですよね。「over the hill」では、最初「ひとりぼっちのたましいたち」って歌われていて、それが曲の最後では「ひとつになったたましいたち」になる。それがすごくうれしいんです。

鏡るびい 別れの曲とかさよならの曲って世界中にあると思うんですけど、こんなに普遍的な別れの歌を、THE 夏の魔物っていう普遍的じゃない人たちが歌うっていうのが。

本多 おかしなやつがまともなこと歌い出したぞって(笑)。

るびい 本当に私たちにしか歌えない曲だなって思う。私たちが1つずつ言葉に魂を込めて歌うからこそ付く色みたいなのがすごくあって、だから聴いたときに胸がいっぱいになるんだと思うんです。

──メンバーであるアントンさんが書いた歌詞だからこその説得力があるんですね。

塚本 そう思います。クライマックスのパートは特にすごくて、これは長年私たちのことを見ているアントンさんにしか書けない歌詞なんです。こういう場面にぶつかったとき、それぞれがこういう行動をするんだろうなっていう“らしさ”がすごく出てる。

本多 この舞ちゃんのソロパートは、「愛」っていう言葉がなかなか難しい言葉なんですけど、でも舞ちゃんに歌ってほしいなと思って書いたんです。

──「愛」というのは、そんなに簡単には使えない言葉ですよね。

塚本 「魂」という言葉がこのバンドの大事なテーマだとしたら、私個人が掲げてきた言葉はやっぱり「愛」だなって思ってて。だからアントンさんがそういう言葉を盛り込んでくださったのがすごくうれしかったんです。最後まで愛を伝えていきたいっていうのを改めてこの歌詞で感じました。

ライブ情報
THE 夏の魔物登場!!!TOUR特別編 ALL MY LOVE FOR YOU ~塚本舞卒業記念スペシャル~
2017年3月17日(金)東京都 新宿MARZ
<出演者> THE 夏の魔物 / and more
THE 夏の魔物登場!!!TOUR FINAL 6人体制初ワンマンGIG
2017年3月18日(土)東京都 新宿MARZ
<出演者> THE 夏の魔物
バンドメンバー:町田昌弘(G / 100s) / 大塚謙一郎(B / 曽我部恵一BAND) / 佐藤栄太郎(Dr / indigo la End) / ハジメタル(Key)
THE 夏の魔物(ザナツノマモノ)
THE 夏の魔物

2006年から青森県で毎年開催されているロックフェス「AOMORI ROCK FESTIVAL -夏の魔物-」の主催者である成田大致を中心に結成された7人組。メンバーは成田大致、泉茉里、塚本舞、麻宮みずほ、大内雷電、鏡るびい、アントーニオ本多からなる。前身となるグループ「夏の魔物」として、2015年8月にシングル「恋愛至上主義サマーエブリデイ / どきめきライブ・ラリ」でポニーキャニオンよりメジャーデビューを果たし、2016年9月には多数の作家陣が参加した1stアルバム「夏の魔物」をリリース。2017年1月をもって夏の魔物としての活動を終了し、1月6日より「THE 夏の魔物」としての活動をスタートさせた。同年3月には浅野尚志が作曲、只野菜摘が作詞を担当したニューシングル「僕と君のロックンロール」を発表する。