音楽ナタリー Power Push - 夏の魔物×曽我部恵一×Sundayカミデ

曽我部とSundayが明かす 成田大致の制作スタイル

夏の魔物のメジャー2ndシングルは、作家の山内マリコが作詞、曽我部恵一が作曲を担当した「東京妄想フォーエバーヤング」、そしてSundayカミデ(ワンダフルボーイズ、天才バンド)の作詞作曲による「ダーリン no cry!!!」が収録された両A面作品となった。

音楽ナタリーではこれを記念して、夏の魔物のメンバーである成田大致、大内ライダー、アントーニオ本多の3人と曽我部恵一、Sundayカミデへのインタビューを実施。曽我部とSundayの証言によって、グループのキーマン・成田大致によるユニークな制作スタイルの秘密が初めて明かされる。また特集の最後には「東京妄想フォーエバーヤング」で作詞に初挑戦した作家・山内マリコからのコメントも掲載している。

取材・文 / 大山卓也 撮影 / 塚原孝顕

成田大致による超具体的な指示

──今回のシングルには曽我部さんとSundayさんが参加していますが、お2人へのオファーは成田さんから?

成田大致 そうです。Sundayさんに頼んだのはけっこう前でしたけど。

Sundayカミデ 曲自体はだいぶ前にできてたんです。成田くんと2人でスタジオに入ったのが去年の夏頃ですかね。

──成田さんがSundayさんに曲を依頼したのはどういう経緯だったんですか?

夏の魔物、曽我部恵一、Sundayカミデ。

成田 ストレートなバラードがやりたいってのがまずあったんですよね。それで去年Sundayさんと対談したときに「曲書いてください」って。

Sunday 対談中にそう言われたら、とにかく「はい」って言う以外ないですからね(笑)。

成田 で、そのあと連絡して、一緒にスタジオ入ったりとかして。

Sunday 最初に「こういう曲を書いてほしいんです」ってメールをもらったんですけど、それがすごく長くて、めちゃめちゃ詳しく書いてあったんですよ。例えばこの人のこういうフレーズっぽくとか、サニーデイ・サービスのこの曲のこの部分みたいにとか。ラストはみんなのコーラスが入って、そのあとまた最初と同じ低いテンションに戻って終わりたいです、とか。

──そんなに細かいリクエストをしたんですか?

成田 はい、僕らの曲は今までも全曲そうやって作ってもらってるんで。ただ「曲書いてください」じゃなく「こういう感じで」っていうのを全部伝えてます。

曽我部恵一 えっ、あれは成田くんのリクエストなの?

成田 全部そうです。

曽我部 そうなんだ。メール自体はスタッフの人からもらってたから、ディレクターさんが書いてるんだと思ってた。だって、もう超具体的に、何分くらいの曲でとか、ここでこういうギターソロが入るとか、こういう音色でとか、曲の展開について細かく全部指示があるんですよ。

成田 ディレクターさんに補足をいただいている部分もありますけど、基本的には僕がやってもらいたいこと、具現化してほしいものを伝えてもらっています。

曽我部 へー! それは素晴らしいね。

──通常はそこまで詳しい指定はないものなんですか?

Sunday まあ、ないことはないですけど。

曽我部 コマーシャルの仕事とかだとすごくあるし、アイドルの人とかはまた違うんだろうけど、僕に来るものに関してはわりと自由なものが多いですね。

──そこまで細かい指示があるとやりにくかったりはしないですか?

曽我部 いや、はっきりイメージがあるほうがやりやすい。その通りに作ったし、いかに合わせていくかが楽しいんですよね。

Sunday 僕への指示には「最後の大サビのところで泣きたいです」って書いてあって、そんなん言われても、みたいな感じはありました(笑)。でも細かいとやりやすいですよね。やっぱり気持ちもすごい伝わるし。

その人の必殺技が欲しい

──でも成田さんは、曽我部さんっぽい曲とかSundayさんっぽい曲が欲しいから本人に発注しているわけですよね。だったら「作風を生かして自由に作ってください」という話にはならないんでしょうか?

成田大致

成田 いや、そこは「その人の必殺技が欲しい」っていう感じなんです。

曽我部 そうなのよ、そこが貪欲だなあと思って。だって「イントロはソカバン(曽我部恵一BAND)の『キラキラ!』っぽく」とかね。もう必殺技を全部見せろみたいな発注なんですよ。

──なるほど。

曽我部 しかもジェットコースターみたいな展開で、AメロBメロサビの単純な繰り返しじゃなくいろんな要素を入れてほしいとか。パンクやJ-POP、渋谷系からいわゆる今のアイドルの人たちの音楽まで、日本のポップスの最近の流れを全部入れたい、みたいな話で。しかもそれを全部入れた上で4分の曲にしてくれっていう。

Sunday そうそう。僕も尺の指定がありました(笑)。

曽我部 そのリクエストに自分なりに応えたつもりではあるんですけど、そもそも10年に1曲ぐらいの大名曲にしたいっていう発注だからね。そんなパッとは書けないですよ(笑)。でもそこまで言われたらやってやろう、みたいな感じになるもんで。

──成田さんのその制作スタイルは、相手のことを相当わかった上で、古今東西の膨大な作品を聴き込んでいないとできないやり方ですよね。成田さんがそんなに考えて楽曲のディレクションをしているというイメージは、正直あまりなかったです。

成田 どの曲も同じように作ってるんですけど、「それって要望言ってるだけでしょ?」という感じで、バカにされがちというか……。

大内ライダー 「どうせ人に作ってもらって人の曲を歌ってんだろ」ぐらいにしか思われてないですからね。成田は自分の中のクリエイティブな部分をすごく出してるんですけど、作詞作曲はあくまで作家さんなので、届いた曲を歌ってるだけだと思われてる。そこがすごくもったいないですよね。

──でもそこまで具体的なイメージがあるなら、いっそ自分で作ればいいという発想にはならないですか?

成田 いやいやいや(笑)。

曽我部 それをあえて発注するところがカッコいいんだよね。自分のやりたいことをプロフェッショナルに頼んで形にするっていうのは、自作自演の長い歴史とはまたちょっと違う、新しい音楽の作り方だと思う。こっちも作っててすごく面白かったし。

夏の魔物 ニューシングル「東京妄想フォーエバーヤング / ダーリン no cry!!!」 / 2016年1月20日発売 / 1000円 / ポニーキャニオン
イラストジャケット Ver. [CD] PCCA-04334
夏の魔物 Ver. [CD] PCCA-04335
ブラックDPG Ver. [CD] PCCA-04336
収録曲
  1. 東京妄想フォーエバーヤング
    [作詞:山内マリコ / 作曲・ギター演奏:曽我部恵一 / RAP作詞・歌唱:BIKKE(TOKYO No.1 SOUL SET) / 編曲:ARM(IOSYS)]
  2. ダーリン no cry!!!
    [作詞・作曲:Sundayカミデ / 編曲・ピアノ:ハジメタル]
  3. 邪88
    [作詞:ノマアキコ / 作曲:下村陽子 / 編曲:増本直樹]
  4. 東京妄想フォーエバーヤング(Inst.)
  5. ダーリン no cry!!!(Inst.)
  6. 邪88(Inst.)
「夏の魔物現象2016」ROAD TO 10th ANNIVERSARYシリーズ
♯1 INKT VS 夏の魔物 ~ギリギリで五日遅れのバレンタインツーマン~

2016年2月19日(金)東京都 新宿ACB HALL
OPEN 18:30 / START 19:15

<出演者>
INKT / 夏の魔物 / ブラックDPG

夏の魔物(ナツノマモノ)
夏の魔物

2006年から青森県で毎年開催されているライブイベント「AOMORI ROCK FESTIVAL -夏の魔物-」の主催者である成田大致を中心として2015年3月に発足したユニット。成田のほか、塚本舞、大内ライダー、アントーニオ本多、ケンドー・チャンの計5人からなる。同年8月、シングル「恋愛至上主義サマーエブリデイ / どきめきライブ・ラリ」をポニーキャニオンより発表し、メジャーデビュー。2016年1月にはニューシングル「東京妄想フォーエバーヤング / ダーリン no cry!!!」をリリースした。対抗するヒールユニット・ブラックDPGとライブ中にプロレスを繰り広げるなど、破天荒なパフォーマンスで人気を博している。

曽我部恵一(ソカベケイイチ)
曽我部恵一

1971年生まれ、香川県出身のシンガーソングライター。1990年代からサニーデイ・サービスの中心人物として活躍し、バンド解散後の2001年からソロアーティストとしての活動を開始する。精力的なライブ活動と作品リリースを続け、客演やプロデュースワークなども多数。現在はソロのほか、再結成したサニーデイ・サービスなどで活動を展開し、フォーキーでポップなサウンドとパワフルなロックナンバーが多くの音楽ファンから愛され続けている。2004年からは自主レーベル「ROSE RECORDS」を設立し、自身の作品を含むさまざまなアイテムをリリースしている。3児の父。

Sundayカミデ(サンデイカミデ)
Sundayカミデ

2010年に結成した6人組バンド・ワンダフルボーイズのボーカル兼リーダー。2013年には奇妙礼太郎(Vo, G)とテシマコージ(Dr)とともに天才バンドを結成しており、同バンドでは作曲とキーボード、コーラスを担当している。2013年9月にはソロ名義でのアルバム「MY NAME IS !!!」を発表。同アルバムには自身が執筆した小説が付属するなど、多彩な才能をさまざまな形で発揮している。