音楽ナタリー PowerPush - THE BOOM
関係者証言で紐解くバンドの軌跡
THE BOOMの音楽をダンスで受け継いでいく
──そのファイナルも終わって、現在はどんな心境ですか。
あれ以来、私の中でTHE BOOMがまだ終わっていないんですよ。バンドは解散しても彼らの作った音楽は残り続けるし、誰かが聴き続けるわけで、そういう意味ではTHE BOOMは終わらないんですよね。そして、私も彼らが残した楽曲を、ダンスという自分の領域で受け継いでいくつもりでいるんです。自分なりのやり方で大事に引き継いで、踊り継いで、世の中に伝えていきたい。THE BOOMのファンだけじゃなくても、私がこれから出会ういろんな人に、もっと知ってほしい。特に「世界でいちばん美しい島」は私の中で「MIYA、ついにやったね!」と言えるくらいの会心の1曲だったし、これからの私の要になる曲だとも思っています。もちろんあの曲だけじゃなく、MIYAがTHE BOOMの音楽でみんなに伝えたかったことを、私は私の表現の中で形にしていきたい。それは、ファイナルが終わってから決めたことですね。まだMIYAに許可を取ってないな……取らなきゃ!(笑)
──音楽って、そもそもそういうふうに継承されてきたものですもんね。
でしょ!? あの曲だけじゃなくて、彼らの曲はそういうふうに伝承されていくべきものだと思うんです。そもそも私は踊り手だから、「この曲はこういう意味で、こういうテーマで作ってるんだ」という理屈で踊りを作ることはないんですね。リズムだけじゃなく……ちょっと説明が難しいんだけど音程の上下とか、自分の感じる音の温度によっても踊りを組み立てていくんです。だから、THE BOOMの音楽に対してもそういうやり方で解釈をしていて。歌詞、メロディ、音程、音色、各パートの音が出たり引っ込んだりするさまから感じた、その曲の叫びのような部分をキャッチすることに、私は命をかけてきたから。歌詞を書いた人の気持ちは語れないけど、私が感じたことを踊って伝えることはできると思います。それは、THE BOOMの音が、私にすべてを語ってくれたから。それがTHE BOOMだったんですよ。
すっごい好きだよ、THE BOOM
──そういう「まず音で語る」ということへのこだわりというか美学が一致していたからこそ、最後にまたお互いの道がひとつになったんでしょうね。
幸せな時間でした。私にとって、THE BOOMはずっと「自分が最後に踊る場所」だったんです。実は10年くらい前、けっこうヘビーに体を壊して「うわ、もうダメだ!」と思ったことがあって。そのとき、MIYAに「そろそろ終わりかもしれないけど、私が最後に踊るのはTHE BOOMだからね」というような手紙を書いたんです。その後、運よく快復したんですけど、それからずっとその気持ちのまま過ごしてたから、解散の報せを聞いて「あれ? 順番が逆になっちゃった」と思って。「私も一緒にやめなきゃいけないんじゃないか?」っていう、予期せぬどんでん返しが(笑)。「MIYAに宣言しちゃったけど、これ、どうしてくれるんだよ!」っていう感じですよね(笑)。
──ということは、これから踊り続けていくのであれば、THE BOOMとともに歩んでいくというか、さっき言ったように継承していくしかない。
そう。彼らの魂みたいなものはおこがましくて受け継げないけど、“THE BOOMにいた自分”というものには誇りを持っているから、そういう人間としていろいろなことをみんなに伝えていけるんじゃないかと思ってます。……私、すっごい好きだよ、THE BOOM。
──最高のファンであり、戦友でもあるんですね。
私もそうだったけど、MIYAもこの年月の間にいろんな経験を重ねてここまで来た。だからか、今回は楽屋なんかで一緒にいても、すごく静かな時間を過ごしていたんです。他愛もない世間話だってたくさんして。昔はそれこそ“戦いのパートナー”という感じで、そんな普通の会話はできなかった。それが、ファイナルの間はずっと、長年友情を育んできた昔からの友達みたいな感じでいることができました。それがすごく面白かったですね。
──25年のいい締めくくりだった、と言ってもいいんでしょうね。
そうですね。終わっていくということへの複雑な気持ちはありつつも、私にとっては最良の日でした。そして、THE BOOMにとっても最良の日になるように全力を尽くさせてもらえたんじゃないかと思います。
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Contents Index
- Blu-ray / DVD「THE BOOM FINAL」2015年3月18日発売 / よしもとアール・アンド・シー
- 「THE BOOM FINAL」初回限定盤
- 初回限定盤 [Blu-ray Disc 3枚組] 10000円 / YRXN-80000 / Amazon.co.jp
- 初回限定盤 [DVD4枚組] 9000円 / YRBN-80143 / Amazon.co.jp
- 「THE BOOM FINAL」通常盤
- 通常盤 [Blu-ray Disc 2枚組] 6000円 / YRXN-80003 / Amazon.co.jp
- 通常盤 [DVD3枚組] 5500円 / YRBN-80147 / Amazon.co.jp
収録内容
- 島唄
- YOU'RE MY SUNSHINE
- Human Rush
- TOKYO LOVE
- berangkat-ブランカ-
- いつもと違う場所で
- そばにいたい
- 月さえも眠る場所
- モータープール
- 10月
- 光
- 釣りに行こう
- おりこうさん~ないないないの国~都市バス~過食症の君と拒食症の僕~逆立ちすれば答えがわかる~雨の日風の日
- 蒼い夕陽
- TROPICALISM
- 手紙
- I'm in love with you
- この街のどこかに
- 不思議なパワー
- 風になりたい
- 真夏の奇蹟
- 世界でいちばん美しい島
- シンカヌチャー(THE BOOM ver.)
- 星のラブレター
- 明日からはじまる
- 愛のかたまり
- ドキュメンタリー映像
- 渋谷公会堂ライブ(※初回限定盤のみ)
- 写真集「THE BOOM LIVE 2014」
- 2015年3月18日発売 / 3000円 / オールカラー128ページ
- 2015年3月18日発売 / 3000円 / オールカラー128ページ
THE BOOM(ブーム)
宮沢和史(Vo)、小林孝至(G)、山川浩正(B)、栃木孝夫(Dr)の4名で1986年に結成。原宿ホコ天でのストリートライブ活動を経て、1989年にアルバム「A Peacetime Boom」でメジャーデビュー。1993年に発表した「島唄」は国内のみならず世界各国でカバーされるなど幅広い支持を得た。バンドは結成以来不動のメンバーで活動を続けたが、2014年12月の日本武道館公演を最後に解散。このライブの模様は「THE BOOM FINAL」としてBlu-ray / DVDで2015年3月にリリース。
南流石(ミナミサスガ)
ダンサー、振付師。幼少時からさまざまなジャンルのダンスを実践し、オリジナリティあふれるパフォーマンスでプロのダンサーとして活躍。1980年代にはJAGATARAにコーラス兼ダンサーとして参加した。その後、振付師として真心ブラザーズ、GLAY、大塚愛、PUFFY、ヒャダイン、乃木坂46など数多くのアーティストの振り付けやステージ演出を手がけるほか、自身もTANGOS、Rabbitといったグループで活動。現在はクリエイティブダンスチーム「流石組」を率いて幅広い活動を行っている。