THE BEAT GARDEN|Beemerの思いを受け止め、4人で放つ最後の光

4人からは絶対に出てこなかった

──そしてもう1曲、新曲の「好きな人がいる人を好きになった」は曲調も歌詞もすごく強烈な曲で。まず、歌詞のクレジットがUさんとシンガーソングライターの落合渉さんとの共作になっていますね。

U

U そうなんです。「マリッジソング」を書いているときに、息抜きでYouTubeをよく観ていたんですけど、そこで渉ちゃんの動画が出てきたんです。その日のうちにInstagramを通して共通の知人を見つけて連絡を取り、高田馬場の喫茶店で渉ちゃんと会って。

──その日に会う行動力がすごいですね(笑)。

U 初めて連絡を取って3時間後くらいにはもう会ってました(笑)。そのときは歌詞の話をしつつ、「いつか一緒に曲を書けたらいいですね」という会話をして、そこからずっと5人でマリオカートをやる仲になったんですよね。渉ちゃんも入っているTHE BEAT GARDENのグループLINEがあるんですけど、まずはマリカーのライバルになって(笑)。

──ははは(笑)。

U それくらい、本当に友達になったんです。それで、暇な夜中に電話で話したりしている中で、「今度アルバム作るんだけど、一緒に曲作らない?」と声をかけました。最初の電話で「せっかく一緒に書くなら、落合渉っぽさがめっちゃ出てほしい」という話を渉ちゃんにしたんですけど、次の日にはもう「好きな人がいる人を好きになった」というタイトルで書きたいと連絡がきましたね。まず、渉ちゃんに1番を全部書いてもらって、そこから「自分だったらこう言うな」と僕も書いていきました。渉ちゃんの歌詞は、ワンシーンを切り取る力がすごいんですよね。サビの頭がバーンと入ったときに「これが歌いたいんだな」とわかる。逆に、僕は周りくどく書いてしまうクセがあるんですけど、だからこそ、一緒に書いたらお互いのいいところがより出るんじゃないかなと。

──しかし、強烈な世界観の歌詞ですよね。「好きな人がいる人を好きになった」。

U でも、やっぱりありますよね? 好きな人がいる人を好きになることって(笑)。

──まあ、そうですよね(笑)。皆さんはどうですか。

MASATO なんでかはわからないですけど、僕は、この歌詞を歌うことにまったく違和感がなかったんです。

一同 (爆笑)

MASATO 歌って、普段言葉にできないことを正々堂々と声に出せるものだと思うんですけど、それこそ、僕たちが「好きな人がいる人を好きになっちゃいました」なんてSNSでは言えないじゃないですか(笑)。それを、なんといいますか……歌というものを使って、自由に吠えさせていただいているなと(笑)。なんだか少し、解放感がありますね。

REI 僕たち4人で作っても、この曲名は絶対に出てこないですよね(笑)。

REI

──REIさん的はこの歌詞に共感しますか?

U REIは追いかけたいタイプだよね?(笑)

REI 僕はけっこう、この歌詞の主人公になりがちだと思う。意外と追いかけたいんで。今すっごい恥ずかしいですけど(笑)。

SATORU 僕も共感度は100かも。

U お前もそうだろうなあ(笑)。

──この曲はサウンドもかなり特殊ですよね。Aメロの言葉の乗せ方もかなり特徴的ですし。

REI この曲のトラックはすごく豪華なんですよ。ピアノも生だし、ウッドベースも全部生でレコーディングしていて。アレンジは西(陽仁)さんにお願いしたんですけど、僕は普段から西さんの作る曲が好きで聴いていて。今回、アレンジャーさんで誰か一緒に新しくできる人いないかなと考えたときに、西さんが思い浮かんだんですよね。

U この曲は、西さんとも「めちゃくちゃグチャグチャですよね」と話しました(笑)。でも、面白いですよね。インディーズ時代は、まず英語みたいなスキャットで作ったものをあとから日本語にしていたりしたんです。だから、普通に読んだら譜割が間に合わないようなものでも、洋楽的なメロディに対して日本語の歌詞を書くことを半ば力技でできてしまうところが僕らにはあって。あと、こういういきなりサビでドラムンベースになるような、サウンドの普通じゃない感じも(笑)、THE BEAT GARDENらしさだと思うんです。言葉もメロディも、ちょっとやそっとのことじゃ違和を感じないようになっているのかもしれないです、THE BEAT GARDENは。

SATORUがいたことはTHE BEAT GARDENの血液として残っていく

──「余光」の最後を締めくくる「エピソード」は、2019年に出たシングル「Snow White Girl」のカップリングに収録されていた曲なんですよね。歌詞の内容的には、やはりどうしてもSATORUさんの卒業が頭をよぎる曲でもあります。

U この曲は、今までのビートを知らない人……例えば、僕らが友達同士で結成したこととかを知らない人たちに向けて、曲として自分たちのことを残しておきたい、というのが1つはありました。あと、この先僕らはより有名になっていきたいと思いながら活動していますけど、その中で、ずっと歌い続けることができる4人の曲があったらいいなと思ったんです。その曲は売れてから書くんじゃなくて、まだまだの段階で書くことに意味があるなと思って。そうやって「エピソード」は書きましたね。

MASATO

──SATORUさんの卒業によって、この曲が持つ意味も変わった部分があるのではないかと思います。

U そうですね、意味は大きく変わりました。……ずっと4人でいられると思っていたんですよね。なので、SATORUの卒業が決まったとき、SATORUがいなかったら歌えない曲がたくさんあるんじゃないかと思ったんです。例えば「ダンシング・マン」(「メッセージ」収録)はSATORUのことを書いた曲だし、この「エピソード」も4人のことを書いている曲だし。「こういう曲って、もう歌えなくなるのかな?」と話しながらアルバムを制作していたんです。でも、SATORUがいたことも、一緒に作った曲も、一緒にやったライブも、すべてがあるから、これからのTHE BEAT GARDENがあると思う。このアルバムの最後に「エピソード」が入っているのは、その意思表示でもあります。

REI SATORUさんがいたことは、これからも変わりはないので。僕にとっても、より大切な曲であり、より大切に歌っていきたい曲になったなと思いますね。

MASATO あと、僕らが上京してからずっとお世話になっていた六本木のmorph-tokyoというライブハウスがあって。そこの店長だった阿部さんという方の、楽屋からステージに上がるまでの階段の足音を「エピソード」のキックに入れているんです。そのライブハウスはコロナ禍でなくなってしまって、もう戻ることはできないんですけど、だからこそ、より大切な曲になりました。大それた言い方だけど、後世に残したい曲だし、自分たちにとっても、忘れたくない気持ちが詰まっている曲です。たぶん、これからも「エピソード」に重なる思い出は増えていくと思う。それも含めて、これからも歌い続けていきたい曲ですね。

──SATORUさんは、今「エピソード」という曲に向き合ったとき、どんなことを思いますか?

SATORU 「エピソード」は、最初にリリースされたときから僕の中でも大切な曲で。うれしかったんですよね、僕らを題材にした“4人の曲”ができたことが。この曲をステージで歌っている瞬間もうれしかったし。今でも聴くたびに歌詞に書いてある光景が思い出されるんですけど、でも、それは苦い思い出ではないので。この先も聴くたびに、いろんなことを思い出すんだろうなと思います。

──まだツアーは終わっていないので振り返るのは早いと思いますが、SATORUさんにとってTHE BEAT GARDENのメンバーだった約6年間は、どういった時間だったと思いますか?

SATORU

SATORU ……僕、もともと音楽をやっていなかったんですよ。音楽のことなんて全然知らなかったし、子供の頃に仕事にしようと思ったこともなかった。最初に3人が大阪から上京したときも、あくまでも応援する立場だったんです。その後、結局、誘ってもらって音楽を始めることになったんですけど……たぶん、同い年の人では味わえないような青春を、僕は味わえたと思うんです。4人で一緒に同じ気持ちになって活動していくなんて、なかなかできないことだと思う。なので、僕は最後のライブを終えたときに、悲しいとか悔しいよりも「幸せだな」と感じるんじゃないかと、今は思います。

──この先のTHE BEAT GARDENはどうなっていきそうですか?

U ライブに関してはDJが必要だと思っています。ただ、これまでSATORUは音を出すこと以外の部分もすごく大きな存在として担ってくれていて。ぶっちゃけ、SATORUはDJうまくないんですけど(笑)、それはファンの人も本人もわかっていることで、そのうえで、僕らはSATORUがよかったんですよね。

──あくまでもSATORUさんという人が必要だった。

U そういう存在がいなくなってしまうことの不安はあるんです。でも、SATORUがいないからこそできる何かがあるかもしれないし、その可能性を今、SATORUと一緒に探し始めてもいるんです。もしかしたらめちゃくちゃ曲をつないでいくライブのスタイルになるかもしれないし、あるいは、これから生まれる曲の歌詞に「SATORUがいてくれたほうがよかった」みたいなことを書くかもしれない(笑)。先のことはまだ明確にはわからないんですけど、とにかく、ちゃんと成長、進化をしていきたなと思っています。これまでと同じことを、そのまま続けていこうとは思っていないです。SATORUがいたTHE BEAT GARDENは、THE BEAT GARDENの血液としてちゃんと残っていくので。SATORUが「すげえ、ビートめっちゃ変わった!」といい意味で思ってくれるようなものを作っていきたい。それが、こいつへの恩返しでもあるかなと思っています。

THE BEAT GARDEN(ビートガーデン)
THE BEAT GARDEN
大阪の専門学校で知り合ったU、MASATO、REIの3ボーカルに、Uの旧友であるDJのSATORUを加えた4人組グループ。EDR(エレクトリックダンスロック)という音楽スタイルを掲げ、東京を中心に活動している。2015年に1stフルアルバム「WILL」をリリースし、2016年7月にユニバーサルシグマよりシングル「Never End」でメジャーデビュー。その後もコンスタントにリリースを重ね、2017年8月に「I'm」、2019年3月に「メッセージ」とアルバムを発表。2020年1月に東京・新木場STUDIO COAST(現 USEN STUDIO COAST)でワンマンライブを成功させる。2021年3月にSATORUのグループ脱退を発表し、8月に現体制最後のアルバム「余光」をリリースした。