ナタリー PowerPush - the band apart

荒井岳史&木暮栄一インタビュー、聞き手は盟友・渡邊忍

地獄の千葉合宿を経て完成した楽曲

渡邊 「月と暁」も新しい感じだったなあ。ゴリッとしたストレートなロックで。

木暮 これは「ピルグリム」と同じで千葉で合宿したときに作った曲ですね。

荒井 2ndアルバム(2005年発売の「quake and brook」)とか「higher」が入ってるシングルとかアルバムを作ったときに福島で合宿したことがあって、今回も同じ場所に行こうと思ったんですけど、予約が取れなかったんで千葉に行きました。大学生の団体とかも来てたな。

渡邊 大学生の団体はバンドで来てたの?

荒井岳史(Vo, G)

荒井 そうそう。3、40人ぐらいで来てるんですけど、原はすぐ仲よくなってましたね。でも時期的なものもあったのかもしれないですけど、虫がすごい多かったりして行った初日に帰りてえなって思うくらい自分には居心地の悪い環境だったんですよ。

渡邊 焦りもありつつイラッとしてたからこんなストレートなガシガシしたロックができたの?

荒井 そうですね。「これ曲作んねえと、ここに来た意味がほんとになくなる」と思ってたんで。原とあわせながら、あいつはあいつなりにハードコアっぽい感じのアウトロを持ってきて。「これでいいよ」ってあっという間に完成しました。

渡邊 宿の環境に対する怒りが凝縮されていた。

木暮 ちょっとキーも上がったしね。

荒井 はははは(笑)。

「気違い」と歌うドラマチックな曲

渡邊 「裸足のラストデイ」はサビに「気違い」って歌詞がある曲ですね。

荒井 原が作ったんですけど、あいつその語呂が好きっていうのもあるんですよね。なかなかドラマチックな歌詞を書いたなって思いました。

渡邊 まあしょっちゅう言ってるしね(笑)。でもこれって放送できんの?

荒井 うーん。でも「曲がいいのにラジオでかけられないのはもったいないね」っていう話は本人とした記憶あります。

渡邊 すんげえ爽やかな曲なのにこんなワードが入ってるところが面白いよね。しかも優しく歌ってるじゃない、「気違い」って。

荒井 ははは(笑)。

渡邊忍(ASPARAGUS)

渡邊 荒井さんが優しく歌うから嫌な感じがしなかった。その言葉の前の「憧れてるのさ」って歌詞からまーちゃんなりの優しさを感じて、エモくなったんだよね。

荒井 鋭い分析が続きますね(笑)。

渡邊 12曲目「消える前に」はサビのドラミングにビックリしたの。グレがサビであのリズムを叩くイメージがあんまりなかったから。

木暮 なんかずっと使っていないツインペダルがセッティングしてあったんで、「ツインペダル使いてえな」と思って使いました。

渡邊 ツインペダル使ってるんだ?

木暮 わかりづらいかもしれないけど使ってますね。

渡邊 ほかの曲とアプローチの仕方が違うなって思った理由はそれか。サビにあのリズムって構成が斬新だった。エモい感じもあるね。

木暮 そう、エモ回帰というか。アルバムで一番エモいんじゃねえかって思ってる。

昔やってた感じに寄せた「最終列車」

木暮栄一(Dr)

渡邊 最後の「最終列車」はまさにthe band apartって感じだなあ。リード曲でもいいんじゃないかって思った。

木暮 荒井のネタが7割ぐらいあったところに俺が持ってたネタをくっつけてスタッフとかに聴かせたらね、「これをリード曲にしたらいいんじゃないか」みたいなことを言ってたんですよ。

荒井 本当にリード曲を作ろうとして作ってたんです。コードの雰囲気を昔よくやってた感じに寄せたんですよ。まーちゃんがやりそうな半音ずつ下がるようなコード進行とか音使いとかが入ってて、サビは8小節で1周じゃなくてもっと長いスパンで1周するようになってる。

the band apart ニューアルバム「謎のオープンワールド」2015年1月21日発売 / 2900円 / asian gothic / asg-029 / Amazon.co.jp
「謎のオープンワールド」
収録曲
  1. (opening)
  2. 笑うDJ
  3. ピルグリム
  4. 廃棄CITY
  5. (save point A)
  6. 禁断の宮殿
  7. 殺し屋がいっぱい
  8. 遊覧船
  9. 月と暁
  10. (save point B)
  11. 裸足のラストデイ
  12. 消える前に
  13. 最終列車
  14. (ending)
the band apart(バンドアパート)

the band apart

1998年に荒井岳史(Vo, G)、川崎亘一(G)、木暮栄一(Dr)の3人で結成。後に原昌和(B)が加入して以降は、ソウルやボサノヴァなどの洗練されたコード感を交えたロックサウンドへ変化を遂げ、2001年10月のデビューEP「FOOL PROOF」がいきなりの好セールスを記録した。2003年に自主レーベル“asian gothic”を設立。翌2004年に移籍第1弾シングル「RECOGINIZE ep」をリリースし、以降もコンスタントに作品を発表。他に類を見ない独自性の高いサウンドは、多くのバンドに大きな影響を与えている。2011年には東京・日本武道館でASPARAGUSとのツーマンライブ「SMOOTH LIKE BUTTER」を実施。2014年には坂本真綾の楽曲「Be mine!」で作曲を担当した。2015年1月に7枚目のオリジナルアルバム「謎のオープンワールド」をリリース。3月より全国ツアーを開催し、計30公演を行う。

ASPARAGUS(アスパラガス)

ASPARAGUS

2002年2月結成のスリーピースバンド。2002年10月、ディズニー楽曲のトリビュートアルバム「DIVE INTO DISNEY」に「いつまでもずっと」(くまのプーさん)のカバーで参加し、好評を博す。同年11月には1stアルバム「Tiger Style」を発表。2004年には2枚のアルバム「KAPPA I」「KAPPA II」を、それぞれ別のレーベルから同時発売し、話題を集める。2006年末のメンバーチェンジを経て、現在は渡邊忍(Vo, G)、一瀬正和(Dr)、原直央(B)の3人で活躍中。2012年2月に約4年ぶりのフルアルバム「PARAGRAPH」をリリースした。なお渡邊は木村カエラのバックバンドに参加しているほか、彼女への楽曲提供&プロデュースでも知られている。