ナタリー PowerPush - the band apart

荒井岳史&木暮栄一インタビュー、聞き手は盟友・渡邊忍

「笑うDJ」ってダセえな

渡邊 収録曲について順番に聞かせてほしいんだけど、2曲目の「笑うDJ」は謎めいた歌詞になってるね。

木暮栄一(Dr)

木暮 Aメロの「SFの世界で生きてゆく」は俺たち自身のことを歌ってるんです。最近歳とったからかわかんないけど「音楽やって生きていくのってマイノリティだな」って感じてて、そのことについて書いたから最初は真面目な歌詞だったんです。でもそれだと押し付けがましい歌詞になって嫌だったんで変えていきました。自分たちの曲の場合、耳に残ってるのって変な言葉遣いの日本語を使ってることが多かったので「何それ?」みたいなものにしたくて今の歌詞になったんです。「笑うDJ」ってダセえなって(笑)。でもそれがいい。

渡邊 「よゆうよゆうよゆう」って歌詞なんかも中学生っぽくていいなと(笑)。リード曲の「ピルグリム」には最近のバンアパらしさが詰まってるよね。

木暮 この曲は元ネタを荒井が考えてきたやつで、最初に千葉で合宿をやったとき聴いて「あ、この曲キャッチーだな」って思ったんですよ。最近のうちらの全員の趣味が入ってるし、聴く人をあんまり選ばない曲かなあと思ってリード曲にしました。

川崎のルーツはアメリカンハードロック

渡邊 4曲目の「廃棄CITY」はちょっとアメリカンな感じのサウンドだと思ったんだけど、誰が作ったの?

荒井 川崎ですね。アメリカンというのは本当にその通りで、歳を重ねると結局ルーツに戻っていくというのがよくわかる。

渡邊 ルーツの1つにアメリカンロックがあるの?

木暮 アメリカンです。バリバリ速弾きな感じで。

荒井岳史(Vo, G)

荒井 僕らはメタルで知り合った友達みたいなところもあるけど、北欧メタルではなく、アメリカンハードロック寄りなんです。川崎は今回いろいろキャッチーなものを作ろうって意識があった感じがしましたね。間奏の部分は原(昌和 / B, Cho)とも一緒にも作ってた。

渡邊 ああ、そこでちょっとハイブリッドになっていく。

荒井 俺たちみんな仲いいですけど、あの2人はほんと兄弟みたいな感じなんで。川崎と原の合作とも言える。

渡邊 歌詞に方南町って出てくるけど、そういうふうに地名が出てくる感じもなんかアメリカンっぽいな。

木暮 この曲、制作中は“ツッパリハイスクールロックンロール”って呼んでたな。

歌うときは感情移入しないようにしてる

渡邊 チップチューンの「(save point A)」の次、6曲目の「禁断の宮殿」は「耳が腐る」ってフレーズが耳にすんなり入ってきた。

木暮 これはまーちゃん(原)の曲ですね。いい歌詞書くなって思いました。

渡邊 本当にいい歌詞だよね。この「悲しいからやめてくれ / 信じるとか裏切るとか絆と言わないでくれ / 耳が腐る」とか、優しさが出てるなって。

木暮 その感想聞いたらあいつ泣きますよ(笑)。

渡邊 ちなみに歌詞に出てくる「ソーシャルロックンロール」って何?

木暮 どういう意味で言ってるのかわかんないけど、昔からあいつ「“ソーシャル”って面白くない?」って言ってたからきっと「ソーシャル」って単語が好きなんですよ(笑)。

渡邊 「殺し屋がいっぱい」は誰の曲?

左から渡邊忍(ASPARAGUS)、木暮栄一(Dr)、荒井岳史(Vo, G)。

木暮 それは俺なんです。この曲は荒井が歌うという前提ありきで歌詞を書きました。曲が爽やかだし「君を殺さないとさ」ってサビを荒井が歌ってたら超面白えなと思って。

荒井 歌詞を読んで面白がるのも一種の感情移入だけど、歌録るときにはあんまり感情を込めないようにしたいんですよね。歌詞の意味を考えちゃうと変なこぶしというかフックみたいなのが勝手に出ちゃうし。そういうの嫌いなんです。

渡邊 曲によっては淡々と歌ったほうがいいわけね。これのサビでお客さんが「♪殺さないとさ」って一緒になって歌うさまを想像すると滑稽でいいよね。早くライブで聴きたいもん(笑)。

荒井木暮 はははは(笑)。

渡邊 次の「遊覧船」はイントロの前半と後半で別の曲みたいな感じがしました。

木暮 イントロはコンガのパターンを変えずにポリリズムを入れて展開してるからそう感じたのかも。この曲は川崎がレコーディングの前日に「素材を考えるから構成を作ってくれないか」って言い出したんで、みんなで構成を練り直して、デモとは全然違う構成になってるんですよ。

渡邊 へえ。俺のイメージだけど、この曲はちょっとエロスを感じるポップスだったな。

荒井 かなりひねくれた部類のポップスですけどね(笑)。イントロもそうだしアルバムだと一番4人で積み上げて作った曲だと思います。

the band apart ニューアルバム「謎のオープンワールド」2015年1月21日発売 / 2900円 / asian gothic / asg-029 / Amazon.co.jp
「謎のオープンワールド」
収録曲
  1. (opening)
  2. 笑うDJ
  3. ピルグリム
  4. 廃棄CITY
  5. (save point A)
  6. 禁断の宮殿
  7. 殺し屋がいっぱい
  8. 遊覧船
  9. 月と暁
  10. (save point B)
  11. 裸足のラストデイ
  12. 消える前に
  13. 最終列車
  14. (ending)
the band apart(バンドアパート)

the band apart

1998年に荒井岳史(Vo, G)、川崎亘一(G)、木暮栄一(Dr)の3人で結成。後に原昌和(B)が加入して以降は、ソウルやボサノヴァなどの洗練されたコード感を交えたロックサウンドへ変化を遂げ、2001年10月のデビューEP「FOOL PROOF」がいきなりの好セールスを記録した。2003年に自主レーベル“asian gothic”を設立。翌2004年に移籍第1弾シングル「RECOGINIZE ep」をリリースし、以降もコンスタントに作品を発表。他に類を見ない独自性の高いサウンドは、多くのバンドに大きな影響を与えている。2011年には東京・日本武道館でASPARAGUSとのツーマンライブ「SMOOTH LIKE BUTTER」を実施。2014年には坂本真綾の楽曲「Be mine!」で作曲を担当した。2015年1月に7枚目のオリジナルアルバム「謎のオープンワールド」をリリース。3月より全国ツアーを開催し、計30公演を行う。

ASPARAGUS(アスパラガス)

ASPARAGUS

2002年2月結成のスリーピースバンド。2002年10月、ディズニー楽曲のトリビュートアルバム「DIVE INTO DISNEY」に「いつまでもずっと」(くまのプーさん)のカバーで参加し、好評を博す。同年11月には1stアルバム「Tiger Style」を発表。2004年には2枚のアルバム「KAPPA I」「KAPPA II」を、それぞれ別のレーベルから同時発売し、話題を集める。2006年末のメンバーチェンジを経て、現在は渡邊忍(Vo, G)、一瀬正和(Dr)、原直央(B)の3人で活躍中。2012年2月に約4年ぶりのフルアルバム「PARAGRAPH」をリリースした。なお渡邊は木村カエラのバックバンドに参加しているほか、彼女への楽曲提供&プロデュースでも知られている。