音楽ナタリー Power Push - THE BACK HORN
宇多田ヒカルと見つけた新しい音
THE BACK HORNが、宇多田ヒカルとの共同プロデュースによるシングル「あなたが待ってる」をリリースした。本作で宇多田は菅波栄純(G)と歌詞を共作したほか、バンドアンサンブル、ピアノとストリングスのアレンジなど、楽曲の全体に関わり、都内のスタジオで4日間にわたって行われたレコーディングに全日参加している。
今回のインタビューでは、かねてから親交があった両者の関係性を改めて整理しつつ、このコラボレーションが実現した背景からレコーディングの模様までをTHE BACK HORNの4人にじっくりと語ってもらった。
取材・文 / 内田正樹 撮影 / 上山陽介
曲作りをしたら面白いんじゃないか
──まずは今回のシングルの話の前に、THE BACK HORNと宇多田さんの関係についておさらいさせてください。山田さんは宇多田さんのアルバム(※2006年リリース「ULTRA BLUE」収録の「One Night Magic feat.Yamada Masashi」)にゲストボーカリストとして参加されていましたが、そもそも双方のお付き合いって、どこからどう始まっていたのでしょうか?
菅波栄純(G) たぶん2000年頃に宇多田さんがTHE BACK HORNの存在を知って、ライブに足を運んでくれたのが最初だったんじゃないかと思います。
松田晋二(Dr) それからなんらかの流れで「1回会いたいね」「プライベートでごはんでも食べに行きたいね」みたいなやり取りがあって。それで宇多田さんと僕らの5人だけでごはんを食べに行ったんです。
山田将司(Vo) 俺が「ULTRA BLUE」のレコーディングで初めてヒカルちゃんに会ったはずだから、ごはんを食べに行ったのはそのあとかな。
──じゃあそれこそ2006年頃の話ですかね。
菅波 ぐらいかな。ちょっと時系列が曖昧なんですけど(笑)。
──その食事の席ではどんな話をしたか覚えていますか?
松田 音楽の話がメインだった気がします。宇多田さん自身、自分でトラックを手がけて、音色までこだわっているじゃないですか。僕はドラマーなので、例えばキックの音作りとか、アタックとローのバランスの話とか、スネアを歪ませたいときはどうするかとか、本当にマニアックなことを話し合って。それで彼女がそれまで作ってきた作品も、これから作るであろう作品も、細部まで徹底的にこだわって、すべて自分で納得するまで作り込むんだってことがよくわかりましたね。あとはざっくばらんに「お酒は何飲むの?」とか(笑)、なんでもないような世間話をした覚えがあります。
菅波 楽しかったよね。
岡峰光舟(B) 楽しかった。
松田 で、確かそのときにも、「宇多田さんと栄純が2人で曲作りをしたら面白いんじゃないか」みたいな話題で盛り上がったんですよ。
宇多田さんが参加しないなら、この曲はお蔵入りでもいい
──そうすると宇多田さんの“人間活動”期間を挟んで、それこそ10年越しで今回のコラボが実現したわけですね。このシングルのプランはどういった経緯で持ち上がったんでしょうか?
菅波 きっかけは、こちらからのオファーでした。「あなたが待ってる」のメロディを書いているときに、宇多田さんの声が聞こえてきたんです。誰か女性ボーカルの声ではなく、宇多田さんの声だったんですね。すると「あなたを待ってると思うだけで もうそれだけであったかい」というサビで、将司と宇多田さんの声が重なったらすごくいいだろうなあと思い付いてしまって。例えば曲を作りながらピアノの音が聞こえてくるとかはたまにあったんですけど、人の声が、しかも特定の人の声が聞こえてきたのは初めてだった。で、もう聞こえちゃった以上はミュージシャンとしてそれを聴いてみたいという欲がガーッと高まって。その日の晩は興奮して寝付けなかったぐらいでした(笑)。
──ちなみにそれはいつ頃のことでしたか?
菅波 前回のシングル「With You」を作っていた時期でした。デモができた順で言えば「あなたが待ってる」のほうが先だったんです。だから「With You」と「あなたが待ってる」は俺の中では一連の流れにある曲なんです。
──それは「あなたが待ってる」を聴いて感じました。「With You」のインタビューでも語られていた(参照:THE BACK HORN「With You」インタビュー)、ある種の“ぬくもり”を曲にするモードが今作でも続いているのだなあと。
菅波 まさにそうですね。で、メンバーに「宇多田さんの声と将司の声が重なるというサビが実現しなければ、この曲はお蔵入りでもいい」みたいな思いをぶちまけまして。そこまで言うなら、とにかく一度宇多田さんサイドに聞いてみようということになって。正式なオファーはスタッフ経由でしたけど、俺からも「聞こえてしまったからこのフレーズを歌ってほしい」と正直にメールを書きました。
──すると快諾の返事がきたわけですか?
菅波 はい。でもどうして引き受けてくれたのか、今もあえて理由を聞いていないんですよ。それを聞くのもなんだか野暮な気がしたし、快諾の返事をいただいたとき、すごくドラマチックなものを感じたので、その感動をそのまま残しておきたいという思いもあって。
──なるほど。そこからはどんなキャッチボールが交わされたんでしょうか?
菅波 まずオファーの時点で、デモを彼女に送ってあったんです。でも、そのデモの段階では、将司が歌っているものの、まだ曲の展開も歌詞もざっくりとした状態だったんですね。すると快諾をもらったときに、「せっかく一緒にやれる機会なんだから、例えば鍵盤やストリングスのアレンジなんかもトライしたいな」「ガッチリやろうよ」みたいな返信があって、俺らも「おお、すげえ! 熱い!」みたく盛り上がって(笑)。それで結果として、歌詞を共作することになって、ストリングスやピアノのアレンジもしてもらうことになったんです。4日間のレコーディングも全日付きっきりで、それこそドラムの録りからいてくれて。すごい心意気で引き受けてくれたんだなあと思いましたね。
次のページ » 「あなたが待ってる」の歌詞に込めた菅波&宇多田の思い
- ニューシングル「あなたが待ってる」2017年2月22日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
- 「あなたが待ってる」
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1512円 / VIZL-1137
- 通常盤 [CD] 1080円 / VICL-37253
CD収録曲
- あなたが待ってる
- 始まりの歌
初回限定盤DVD収録内容
- あなたが待ってる Music Video
ライブ情報
THE BACK HORN「KYO-MEI 対バンライブ」
- 2017年2月16日(木)宮城県 Rensa
出演者 THE BACK HORN / SUPER BEAVER - 2017年2月17日(金)青森県 Mag-Net
出演者 THE BACK HORN / SUPER BEAVER - 2017年3月2日(木)福岡県 BEAT STATION
出演者 THE BACK HORN / TOTALFAT - 2017年3月4日(土)岡山県 YEBISU YA PRO
出演者 THE BACK HORN / TOTALFAT - 2017年3月5日(日)山口県 周南RISING HALL
出演者 THE BACK HORN / TOTALFAT - 2017年3月21日(火)愛知県 DIAMOND HALL
出演者 THE BACK HORN / ROTTENGRAFFTY - 2017年4月12日(水)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
出演者 THE BACK HORN / HAWAIIAN6 - 2017年4月14日(金)香川県 高松MONSTER
出演者 THE BACK HORN / and more - 2017年4月15日(土)愛媛県 松山サロンキティ
出演者 THE BACK HORN / and more - 2017年4月27日(木)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
出演者 THE BACK HORN / ROTTENGRAFFTY - 2017年4月28日(金)富山県 MAIRO
出演者 THE BACK HORN / HEY-SMITH - 2017年5月17日(水)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
出演者 THE BACK HORN / MOROHA - 2017年5月24日(水)神奈川県 CLUB CITTA'
出演者 THE BACK HORN / and more - 2017年5月31日(水)神奈川県 CLUB CITTA'
出演者 THE BACK HORN / and more
THE BACK HORN(バックホーン)
1998年に結成された4人組バンド。2001年にメジャー1stシングル「サニー」をリリース。国内外でライブを精力的に行い、日本以外でも10数カ国で作品を発表している。またオリジナリティあふれる楽曲の世界観が評価され、映画「アカルイミライ」の主題歌「未来」をはじめ、映画「CASSHERN」の挿入歌「レクイエム」、MBS・TBS 系「機動戦士ガンダム 00」の主題歌「罠」、映画「劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-」の主題歌「閉ざされた世界」を手がけるなど映像作品とのコラボレーションも多数展開している。2014年には熊切和嘉監督とタッグを組み制作した映画「光の音色 -THE BACK HORN Film-」が公開された。2016年10月にシングル「With You」と、映像作品「KYO-MEIツアー ~運命開歌~」を発表した。2017年2月にかねてより親交のあった宇多田ヒカルとの共同プロデュース曲「あなたが待ってる」をシングルとしてリリース。