音楽ナタリー Power Push - THE BACK HORN

ソングライター菅波栄純の告白

「その先へ」で鳴らした理想のロックのリフ

──次の「その先へ」ですが、歌詞はバンドを始めた頃のお話ですね。

そうですね。そういうところから始まる話。ただ、これはまずリフありきの曲なんです。自分の中にある“ロックのロマンの世界”にあるリフを鳴らしたかった。自分のロックへの憧憬が入ってるし、昨今ここまでロックに対してロマンティックな奴はオレぐれえだって自負もあるし(笑)。ジミヘン(ジミ・ヘンドリックス)とカート・コバーン(Nirvana)とTHE BACK HORNが出てるフェスとか想像しますもん。そのフェスで自分が演奏するリフはなんだろうなっていう。それがこのリフ。

──「Purple Haze」や「Smells Like Teen Spirit」(それぞれジミ・ヘンドリックスとNirvanaの代表曲)に対抗するリフがこれだ!

そう!(笑) 同じステージでその2バンドがやって、客がとんでもなくワーッ!と盛り上がってるところに自分らが出てきて、このリフを弾いて、外人がうわー!!ってなるっていうことを想像しながら作りました(笑)。オレの中の理想のロックのリフなんですよ。

──理想のロックのリフ、というのは面白いですね。

菅波栄純

自分が18歳ぐらいのときに聴いていたのが1990年代後半のロックなんです。Nirvanaとかレイジ(Rage Against The Machine)とか。そのあと東京に出てきてLed Zeppelinやジミヘンを好きになるんですけど、「ああ、オレはロックのこういうところが好きなんだな」っていうのを自覚していくんですよ。振り返ると、90年代後半のロック自体が、そういうジミヘンとかツェッペリンみたいなロックのリバイバルみたいな気がしたんですよ。レイジはツェッペリンに影響を受けてるだろうし、NirvanaはBlack Sabbathとかの要素が入ってる。

──なるほど。

たとえばThe Chemical BrothersとかFatboy Slimも好きなんですけど、ああいうテクノロック的な流れも、ある意味で“ロックの王道”じゃないかと。

──ギターリフの代わりにシンセサイザーのシーケンスが鳴っている、みたいな。

そう。あれも一種のリバイバルだったんだなと思って。だから自分には脈々とロックの王道の血が流れてると信じてるんですよ。そういう骨太な王道ロックを「その先へ」ではやりたかった。

──なるほど。

その上で自分の中では、今聴いて興奮するサウンドにしようという思いがあったんですよ。昔のロックレジェンド的な音をそのまま再現しても、今の自分はたぶんあまり興奮しない。遠いなあ、古いなあ、と思うかもしれない。例えば90年代のケミカルでさえ、ドラムの音が響いているというか、ラウド感を演出するような鳴りなんですよ。少し古臭い。でも今の自分が興奮する音は、ロックに限らず、タイトなシュッとした音なんですよ。そっちの方が興奮できる。だからこの曲のサウンドは相当タイトに作ってて。「悪人」もそうだし。

──ああ、その話を聞いて思ったのが、こないだのフジロックのMuseですね。やってる音楽自体はごくオーソドックスな、古典的ともいえるパワーロックトリオの演奏なんだけど、楽器とか機材とか最新のものを徹底的にモディファイして、まったく曖昧さのない、とことんソリッドでタイトなサウンドにしている。だから昔ながらのロックの音じゃなく、すごく“現代的な今の音(音響)”として鳴っている。

まさにそういうことをやろうとしたかったんですよ。やってる音楽は王道の骨太なロックなんだけど、音の鳴りとかサウンドは今のものする。ロマンは持つけど、サウンドのテクスチャーはソリッドにするという、そういうコンセプトがあって。自分もほんとは好きなんですよ。ミッド(中域)に固まったような音とか、地下室で録ったようなニューヨークパンクっぽいのしょぼい音とか、ものすごく興奮して聴くけど……けどねという。

──あえてそういう古い音を求めてるんだったらいいけど、そうでないなら、それをやると今の自分の音楽が古臭くなってしまうだけ。

そうそう。違うなと思って。そこは今回、意識的に振り切ろうと思いました。そういうサウンド面のテクスチャーのソリッド化っていうのは、実は今までTHE BACK HORN内でも、意識的にそっちに振ったことはなかったんですよ。あまり気にしてなかったというか(笑)。自分の好みの音を出せれば満足だったんだけど、ここで一歩踏み込んでみようと思って、提案しました。

ロックマンガを読んだときの興奮があるような歌詞

──そういう音にどうしてこういう言葉が乗ったんですか。

「悪人」を書いたときにわかったことなんですけど、歌詞に関しては物語風なものを書くのが楽しいんだなと。自分が楽しんで書けるものがそういう歌詞なんですよ。どうせ書くなら、まったくの架空のものよりも、リアルに感じられるようなストーリーがいいなと。そこで自分らのことをテーマにしてみようと。

──そういえばそういう曲って今までありませんでしたね。

そう。でもオレ、ロックマンガがけっこう好きなんですよ。「BECK」とか。読みながらいやいや現実はそうじゃねえよ、と思うんだけど(笑)、思いつつも、“ロマンチックロッカー”としてはやはり興奮するとこがあって。ああいうロックマンガを読んだときの興奮があるような歌詞を書いたら面白いと思ったんです。それを自分の経験をもとに書けば自分も興奮できるしリアルだし、リフもロックのロマンを込めて作ったし、いいんじゃないかと思って書き始めて。それで1998年に東京に出てきて最初のライブハウスでの体験から始まる「その先へ」っていうお話にしたんです。まず詳細なストーリーを書いて、そこで曲にあわせて削ぎ落としていって。

──ここに出てくる1998年のライブハウスはどこだったんですか?

菅波栄純

下北沢の屋根裏ですね。インディーロックのイベントかなんかで。スペースカンフーマンが出てたのかな。1人で観に行ったんですけど、こんなすげえバンドが毎日ライブやってる東京ってすげえ!みたいな興奮があって。オレだってやってやるぞ、と決意して。それがすべてのスタートだった。

──いい話ですね。そしてカップリングに入っているのは新曲「路地裏のメビウスリング」です。

これは3~4年前に作った曲なんですけど、録音したのは最近です。アルバムにうまいことハマらなくて、今になって発表できたという。この曲はオレには珍しく男と女の話ですね。自分の実体験をもとにしたダメ男の歌。

──実体験ともなると気恥ずかしさはありませんか?

あります(笑)。でも過去の恋愛をネタにしてるんで、ある程度距離感はあるから、なんとかいける(笑)。実体験とフィクションを混ぜて書くのが面白いのがわかりましたね。

──じゃあこれはあまり苦労せず書けた?

そうですね。わりとスルスルと。文字数が多い曲のほうが書きやすいですね、自分は。多ければ多いほどいいです。

──以上3曲。素晴らしく聴き応えのある濃厚な3曲でした。ところで制作中というアルバムのほうはどんな具合なんですか?

曲をいっぱい作ってます。リリースはまだ先ですが、これにほかのメンバーの曲が入ってくるから、もっと面白くなりますよ。

ニューシングル「悪人 / その先へ」 / 2015年9月2日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
ニューシングル「悪人 / その先へ」初回限定盤
初回限定盤 [CD+DVD] / 2160円 / VIZL-858
通常盤 [CD] / 1296円 / VICL-37090
CD収録曲
  1. 悪人
  2. その先へ
  3. 路地裏のメビウスリング
初回限定盤DVD収録内容

『イキルサイノウ』完全再現ライブ from マニアックヘブンVol.8 (2014.12.25)

  1. 惑星メランコリー
  2. 光の結晶
  3. 孤独な戦場
  4. 幸福な亡骸
  5. 花びら
  6. プラトニックファズ
  7. 生命線
  8. 羽根~夜空を越えて~
  9. 赤眼の路上
  10. ジョーカー
  11. 未来
THE BACK HORN「『KYO-MEI対バンツアー』~命を叫ぶ夜~」
2015年10月2日(金)宮城県 Rensa
<出演者> THE BACK HORN / THE BAWDIES
2015年10月4日(日)北海道 札幌PENNY LANE24
<出演者> THE BACK HORN / アルカラ
2015年10月10日(土)広島県 広島CLUB QUATTRO
<出演者> THE BACK HORN / キュウソネコカミ
2015年10月11日(日)福岡県 DRUM LOGOS
<出演者> THE BACK HORN / ACIDMAN
2015年10月23日(金)大阪府 なんばHatch
<出演者> THE BACK HORN / ムック
2015年10月24日(土)愛知県 DIAMOND HALL
<出演者> THE BACK HORN / UNISON SQUARE GARDEN
2015年10月30日(金)東京都 Zepp Tokyo
<出演者> THE BACK HORN / ストレイテナー
THE BACK HORN(バックホーン)

THE BACK HORN

1998年に結成された4人組バンド。2001年にシングル「サニー」をメジャーリリース。国内外でライブを精力的に行い、日本以外でも10数カ国で作品を発表している。またオリジナリティあふれる楽曲の世界観が評価され、映画「アカルイミライ」の主題歌「未来」をはじめ、映画「CASSHERN」の挿入歌「レクイエム」、MBS・TBS 系「機動戦士ガンダム 00」の主題歌「罠」、映画「劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-」の主題歌「閉ざされた世界」を手がけるなど映像作品とのコラボレーションも多数展開。2012年3月に20枚目となるシングル「シリウス」を、同年6月に9作目のオリジナルアルバム「リヴスコール」を発表。9月より2度目の日本武道館単独公演を含む全国ツアー「THE BACK HORN『KYO-MEIツアー』~リヴスコール~」を開催し、成功を収める。2013年9月にB面集「B-SIDE THE BACK HORN」、2014年4月に通算10枚目のアルバム「暁のファンファーレ」をリリース。11月には熊切和嘉監督とタッグを組み制作した映画「光の音色 –THE BACK HORN Film-」が全国ロードショー。2015年9月にニューシングル「悪人 / その先へ」を発表した。