おかんが「この世界は全部あんたの夢やから」と言った

──この歌ってめちゃめちゃポジティブですよね。曲調もそうだし、歌詞にしても「今信じれば変わるのさ／無意味じゃないあの夢を」とか。今の時代、こういう感覚をちゃんと出すのは大変なことだと思うんですよ。

ああ……あのね、微妙な使命感みたいなんもあるっすよ、そこには。同世代のロックバンドでずーっとやってるのって、ほとんどおらんやん？ でも俺らはそういうキャラクターだからこそ言ってかなあかんことがあるような気がするんすよね。おっさんの言葉、じゃないけど。あのー……お母さんがね。うちのおかん。

──タイジさんのお母さんが？

俺がちっちゃいとき、質問したんですよ、おかんに。「これ、ぜーんぶ夢で、パッて目が覚めたら全然違う自分がおって、全っ然違う世界があって……そうなんちゃうん？ これ？」って訊いたわけ。そういうのって、なんかわかるでしょ？ 「もう世界は、実は俺1人しかおらんのちゃうん？ ほんとは！」みたいな。

──ああ、わかります。この世界のすべてが現実ではないんじゃないか、という。

そうそう、そういう考え方って、ちっちゃいときにあるやんか？ そう訊いたら、おかんが「いや、そうですよ」って言うわけ。「そうなんです」と。「これ全部あんたの夢やから、あんたの思ったようになる」と言うわけよ。

──へえー！ お母さんがそんなことを。

それで俺、「あ、そう？」って思ったわけやけど（笑）。「そうなんだ？」と。それ、どっかでは正しいと思うのよ。その……ホーキング博士じゃないけどさ、何かひとつの実験に対する結果って、実験する人の気持ちがけっこう影響するって言うやん。それはそういうことやと思うんよね。なりたいようになる。

──その人の持ってる意思が現実を動かしていくと。

うん、ということやと思うのね。だから俺、そのおかんの話をけっこう信じてるとこがあるよね、いまだに。だから2007年に活動休止した時点で「2009年には復活しましょう」って言ってたんね。で、その2009年は、今からしてみたらけっこうデカかったじゃない？ 黒人が初めて大統領になって、日本でも政権替わって。（忌野）清志郎さんが死んで、皆既日食が来る──みたいな。特に俺にとっては皆既日食はデカかった！ というか、ほんまにキレイやからまた見たいって思うし。「偶然じゃないな、これ！」って思わせてくれる現象なんだよね。「これ絶対何かあるな！」って思わせてくれるのよ。そしたら、わりと激動だったわけやん？ だから2009年に復活したかったの。「2009年のうちに活動を再開させてないといけない！」って思ってたんだよね。だから全然無関係ではないと思う。いろんな出来事は。

──なるほど。いろんなことが終わったりするタイミングだけど、そこで新しいことも始められるはずだということですか。

うん、だと思うんね。9.11のテロのとき、すぅごい落ち込んだの。「これは俺は望んでない！」と。でも望んでる奴がおったわけよね。だから……人間は絶対思ったようにできるわけなのよね。思ったようになるんよ。だから何を思うかというのが、とても大事ということやんか。

──わかります。だから「裏切りの夕焼け」のような歌を歌うわけですね。でも人間って、自分が思ったようにいかないとか、うまくいかないときも──。

それはありますよ！ 今も……いや、いつもそうやけどね。思ったようにはいかへんけど……だからっつって、すごい腐ってネガティブな感じでおったら、ええことって絶対ないし。俺が社長になるのも何かの試練やろうし、避けられへんかったからね。「しょうがないかな、やりたくなかったけど！」みたいな。でも「ひょっとしたら、やりたかったのかな」とも思うし。