音楽ナタリー Power Push - 中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2016

“発起人”佐藤タイジと“常連”大木伸夫 2人が語る「中津川フェス」の存在意義

佐藤タイジ(シアターブルック)主催の野外ロックフェス「中津川 THE SOLAR BUDOKAN」が、9月10日と11日に岐阜・中津川公園内特設ステージで開催される。

“会場運営に関わるすべての電力を太陽光発電でまかなう、クリーンでピースなフェス”をコンセプトに2012年に始動し、中津川での開催は4回目を迎える同フェス。今年はステージが2つ増加するほか、初めてオールナイト企画が行われるなど、新しい試みも取り入れられる。

音楽ナタリーではフェスの開催に向けて、発起人である佐藤タイジと、常連バンドであるACIDMANの大木伸夫それぞれにインタビューを実施。「中津川 THE SOLAR BUDOKAN」開催の意義やその魅力を語ってもらった。

取材・文 / 秦野邦彦
インタビュー撮影(佐藤タイジ) / 西槇太一
ライブ撮影 / 岡村直昭、平野大輔、三浦まり子

佐藤タイジ(シアターブルック)インタビュー

続けたいというより、続けなきゃいけないな

──タイジさんは東日本大震災発生直後に「太陽光発電の電力だけでライブを行う」という目標を立て、2012年12月に日本武道館、翌年から岐阜県中津川市で野外フェス「中津川 THE SOLAR BUDOKAN」を開催されています。中津川での開催は今年で4回目を迎えますが、フェスを続けていける実感はいつ頃芽生えたんですか?

佐藤タイジ

中津川で初年度やったとき、天気が心配やったんですけど2日間とも見事なくらいに快晴だったんですよ。それが終わった瞬間、豪雨になって。雨が屋根に当たってバチバチバチーってすごい音がして、それを聞いた武藤昭平(勝手にしやがれ)が「拍手喝采に聞こえますね」って言ってたんです。そのときだよね、続けたいというより、続けなきゃいけないなって思った。

──発起人としての使命感みたいな。

そうだね。会場で幸せすぎて「あれっ、これ死後の世界なんじゃないのかな?」と思うことがけっこうあるんですよ。俺、自分がフェスに行ってる夢をよく見るんだけど、それと区別がつかなくなる瞬間が中津川にはある。回を重ねるたびに、もっとイメージ膨らまして、よりみんなが楽しめるものにしなきゃいけないと思うわけ。このフェスは日本にとって意味のあることだと思うし、音楽が意味のある国であってほしいじゃないですか? だから「THE SOLAR BUDOKAN」には持てるだけのアイデアと願いを込めたいんですよね。

──それはご自身でフェスをやってみないと実感できないことだったかもしれない?

うん。今、日本中でフェスが増えてきてるけど、俺はやっぱりフジロックがもっとも大事なフェスであり、国内フェスの総本山だと思ってるの。間違いなく日本のフェス文化を引っ張ってきたし、この先もずっと芯がブレないまんまだろうし。そのフジに出たシアターブルックがやり出したフェスが「中津川 THE SOLAR BUDOKAN」であり、いわゆるフジロックのネクストジェネレーション。ゆくゆくは海外のアーティストも普通に出るフェスにしたいし、欧米だけじゃなくアジアのアーティストとも自然に合流していく感じでね。そういうインターナショナルな感じはあると思うから。

俺らの世代はロックを卒業なんて絶対しねえよ

──そしてこのフェスでは毎年タイジさんはいろいろなステージに立つわけですが……。

今年は初日がシアターブルック、2日目がインディーズ電力 大取締役会、The SunPaulo、THE King ALL STARSと出張っております(笑)。

「中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2015」の様子。

──シアターブルックは今年は初日なんですか?

スタッフたっての希望でね。去年までみたいに2日目の最後だと俺の声がガラガラになってるから「そんなシアターブルックは見たくない。頼むから初日にやってくれ」と言われ、「わかりました」って初日に移動しました(笑)。

──そうでしたか。結成30周年ということもあって、精力的な活動が続いていますよね。

がんばっております。今年の中津川はほかにもTHE COLLECTORS、中川敬くん(ニューエスト・モデル、ソウル・フラワー・ユニオン)と30周年組がそろってるんです。これってけっこう意味あるなと思っていて。要は日本がロックバンドが30年やれる国になったってことなんですよね。ロックをこの国に文化として定着させるためには、我々のような30年やってこれた連中がいろいろこれからも引っ張っていかなきゃいけない部分は大いにあると思うから。

──とは言え、ここ数年で音楽を取り巻く環境が大きく変わっている実感があります。

ね? 我々みたいな音楽をやっている者には厳しくなってますけど、だからといってロックをやめるわけないし、そのためには新しいアイデアとオリジナリティが大事なんだなと思っていて。きっと大変な状況でもやれることはあるんです。全国でフェスが増えてるのも悪いニュースではないですもんね。ロックだけじゃなく、例えば阿波踊りのような伝統芸能も含め、今ある音楽文化を全部将来に残すことが必要やなと思ってるんです。「中津川 THE SOLAR BUDOKAN」もそういう存在になれればと思っています。

──出演者も毎回世代、ジャンル問わず幅広いですよね。今年は怒髪天、ましまろ、チャットモンチーなど初参加のアーティストもいれば、ACIDMANのような常連バンドもいて。

「中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2015」の様子。

いろんな人からの「出してくれー、出してくれー」っていう攻撃をさばきながら決めてます(笑)。こいつらいねえと話になんねえよ」とこっちから声をかける人もいれば、主旨に賛同してくれて「ぜひ出たい」という人もいたり。ちなみにミュージシャンの方からは演奏時間の設定についても高く評価いただいてるんではないかと思ってます。中には持ち時間が少ないフェスもあるんですよ。演奏的にも音響的にもエンジンかかってくるのが大体30分過ぎだから、楽屋に帰って「物足んないね?」みたいなことになると思うんです。フェスといえど長めに演奏できないとダメでしょと思っているので、そこは配慮していますね。

──そうでしたか。さて、今回の特集に登場していただく大木伸夫(ACIDMAN)さんは4年連続で出演しています。彼らとはいつ頃出会ったんですか?

2000年代頭の頃、アラバキ(「ARABAKI ROCK FEST.」)かライジング(「RISING SUN ROCK FESTIVAL」)で一緒になって「お前、そのバンド名大丈夫か?」って聞いた記憶がある(笑)。でも、音を聴けばカッコいいし、すげえ真面目だからね。この前、大木の誕生会を近所の飲み屋でやってて。行こうと思ってたんだけど、直前に車内にキーを差し込んだままドアを閉めちゃって。家で超テンパって「大木、ゴメン! 今、テンパってるから行かれへんわ」ってメールしたところだったんです。

──はははは(笑)。シアターブルックは結成30周年ですが、ACIDMANは来年結成20周年を迎えるんですよね。

そうなんだ! 「大木くん、誕生日を祝えなくてゴメンね。20周年おめでとう」ってこの場を借りて伝えておきます(笑)。

──ACIDMANもシアターブルック同様、太陽光発電によるコンサートやレコーディングを行っていますね。

ええ。いわゆる同志ですよね。このフェスのコンセプトに対しても早い段階から「賛成!」って大声で言ってくれたし、大木くんのことは、人間としてもアーティストとしても信頼してます。彼らが若い世代を引っ張ってきてくれることでコンセプトが広く伝わっているのも実感としてあるし、俺もがんばんなきゃと思いますね。お互いこの先もずーっとロックやってくんだろうし、ロックをこの国の文化としてちゃんと定着させたいですよね。いまだにロック=若者の音楽で、いつかは卒業するものみたいなイメージあるでしょ? それは絶対違うから。俺らの世代は卒業なんて絶対しねえよっていう。

中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2016

2016年9月10日(土)、11日(日)
岐阜県 中津川公園内特設ステージ
OPEN 10:00 / START 11:00

2016年9月10日(土)出演者
REVOLUTION STAGE
NAMBA69 / RIZE / 10-FEET / Dragon Ash / シアターブルック
REDEMPTION STAGE
SA / THE BLACK COMET CLUB BAND / SCOOBIE DO / 怒髪天 / MONGOL800
RESPECT STAGE
チャットモンチー / H ZETTRIO / AFTER SCHOOL HANGOUT(林立夫&沼澤尚 with 鈴木茂、森俊之、沖山優司 featuring Leyona and 高橋幸宏) / ましまろ / 麗蘭 / OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND
RESILIENCE STAGE
DJ NOBU A.K.A. BOMBRUSH! with IO, DONY JOINT & YOUNG JUJU(KANDYTOWN / BCDMG) / Spinna B-ILL / cro-magnon / Dachambo
REALIZE STAGE
オレスカバンド / DJダイノジ / XO809 / 中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン) / NO GENERATION GAPS(うじきつよし・佐々木亮介) / シシド・カフカ / 加藤登紀子
Village Of illusion
LIVE:NAOKI(SA)&上原子友康(怒髪天) / 藤井一彦(THE GROOVERS) / Rei
DJ:SEIYA / DJ PAIPAI / DJ 吉沢dynamite.jp / DJ YUJIN / DJ SEIYA
Midnight illusion:瀧澤賢太郎 / DJ EMMA / KEN ISHII
2016年9月11日(日)出演者
REVOLUTION STAGE
ROVO / the HIATUS / MANNISH BOYS / ACIDMAN / THE King ALL STARS(加山雄三、佐藤タイジ、古市コータロー、名越由貴夫、ウエノコウジ、武藤昭平、山本健太)
REDEMPTION STAGE
a flood of circle / Nothing's Carved In Stone / 赤い公園 / THE COLLECTORS / ストレイテナー
RESPECT STAGE
LIFE IS GROOVE / インディーズ電力 大取締役会(佐藤タイジ、高野哲、うつみようこ、中村中、矢井田瞳、Rei、Leyona、iCas) / LIVE FOR NIPPON ~Pray For 熊本~(高田漣、東田トモヒロ、山口洋[HEATWAVE]) / 八代亜紀 / GACHI SOLAR SPECIAL(浜崎貴司、仲井戸“CHABO”麗市、佐藤竹善[SING LIKE TALKING]、PES[RIP SLYME]、山田将司[THE BACK HORN])
RESILIENCE STAGE
ROTH BART BARON / OZROSAURUS / The SunPaulo / Young Juvenile Youth / Yasei Collective
REALIZE STAGE
BimBamBoom / チャラン・ポ・ランタン / 真心ブラザーズ / 片平里菜 / the LOW-ATUS / さかいゆう feat. 福原美穂×中津川JAM
佐藤タイジ(サトウタイジ)

1967年生まれ、徳島県出身。4人組バンド・シアターブルックのフロントマンにして、作曲家、プロデューサー、俳優など数多くの肩書きを持つ。1986年にシアターブルックを結成し、1988年にアナログ盤「Theatre Brook」をリリース。以降、日本随一のファンクバンドの顔として活躍する一方、MCUや清春、tobaccojuiceなどさまざまなアーティストのプロデュースを手がけその手腕を発揮している。東日本大震災後、太陽光発電による電力で運営するライブイベント「THE SOLAR BUDOKAN」を企画。同イベントは2012年12月に東京・日本武道館で初開催され、2013年より岐阜県中津川市に場所を移して行われている。