音楽ナタリー PowerPush - TeddyLoid

“無冠の若き帝王”を徹底解剖

ダンスミュージックとクラシックの融合

──「2000光年のかなたに」に続いて、シングルには「BLACK MOON RISING」のパート3、4、5が3曲続けて収録されています。

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「BLACK MOON RISING pt.3」ではクラシックなサウンドに初めて挑戦していて。僕はもともとエレクトーンをやっていたと言いましたけど、その頃は劇伴とかオーケストレーションとかをやりたかったんですよ。これもまたももクロさんの話なんですけど、「Neo STARGATE」っていう曲のアレンジをやらせていただいたとき、曲の冒頭で「カルミナ・ブラーナ」を使ったんです。そこでダンスミュージックとクラシックの融合に挑戦したんですけど、その後MEGさんの「A BATTLE OF PARADOX」でも再び挑戦して。その延長線上にあるのが「BLACK MOON RISING pt.3」なんです。

──なるほど。そういえば、「BLACK MOON RISING pt.3」からは映画音楽的な要素も感じられます。

あ、そうですね。オーケストレーションを多用したことも影響してるのかもしれませんね。で、「BLACK MOON RISING pt.4」は最新のトレンド……最近のDaft Punkを意識したアーバンファンクにトライしていますし、「BLACK MOON RISING pt.5」には完全に現在進行形のEDMサウンドや自分が今一番フレッシュだなと思うサウンドを取り入れました。そして最後は「FOREVER LOVE」という新曲。僕、もともと自分で歌いたいという願望があって、実は2008年頃にMyspaceで歌入りの楽曲をいくつか発表しているんです。それが何年か経って、ようやく納得いく形で歌モノ楽曲を発表できるまでになったわけです。

第3章では「同志を集めて地球上で戦う」

──「UNDER THE BLACK MOON」というシングルはすごく個性的な楽曲が詰まった、非常にコンセプチュアルな作品集になりましたね。これを聴くと、このあとに控えているアルバム「BLACK MOON RISING」が非常に楽しみになるわけですが。

ありがとうございます。「BLACK MOON RISING」というアルバムでは先ほど話したストーリー、黒い月の上のTeddy少年と地球上のTeddyLoidとの友情物語と楽曲がリンクしているので、アルバムを通して聴くことでTeddyLoidの謎が少しずつ解けていくのではないかなと思います。

──昨年からスタートした「BLACK MOON RISING」というコンセプトも今度のアルバムでひと区切りになるのかなと思うんですが、となると今後のストーリーや方向性はどうなっていくかが気になります。

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次のストーリー、第3章もすでに考えていて。「BLACK MOON RISING」はTeddy少年が黒い月で出会った人々に見守られて、黒い月に残されたブラックアポロという唯一の宇宙船を使って地球に帰還するというところで終わるんですが、第3章では帰還したあとの話を描こうと思ってます。で、その帰還したあとっていうのは、Teddy少年が同志を集めて地球上で戦うストーリーにしようと思ってるんですけど、その同志はギタリストかもしれないし、ラッパーかもしれない、ボーカリストかもしれない……もしかしたら音楽以外のジャンルの方かもしれない。その方々とのコラボレーションアルバムに来年はチャレンジできたらなと思ってます。

──となると、「BLACK MOON RISING」とはまた違った作風になりそうですね。

はははは(笑)。そうなると思います。

──ここまでお話を聞いて思ったんですが、Teddyさんはエレクトロミュージックを通じて幅広くいろんなことに挑戦しようとしてますよね。

そうですね。そういう意味では、僕はDTMに出会えて本当によかったと思いますし、フレンチエレクトロに出会えて本当によかったと思ってます。DTMやフレンチエレクトロを通じていろんな出会いがあって、それによって自分の音楽の幅もどんどん広がったと思うし。とても感謝してますね。

フロア向きとリスニング向きの共存

──エレクトロミュージックは電子音で構築されていることから、冷たさや硬さ、機械的な部分がフィーチャーされることが多いと思いますが、今作で聴けるTeddyさんの楽曲ってメロディや音色含めてすごく温かみが感じられるんですよね。

いやあ、そう言っていただけるとうれしいです。僕、制作時にはコンピュータとスピーカーと、あとはMIDIキーボードくらいしか使ってなくて。そんなにいろんな音を詰め込んでるわけではないんです。実はアウトボードエフェクターもないし。

──えっ、そうなんですか。

はい。だから本当にコンピュータの内部で完結してるんです。あとはマイクを使うぐらいかな。

──それって最近では珍しいことなんじゃないですか?

ははは(笑)。そうかもしれません。そういう環境の中で、僕自身も温かみのあるサウンドっていうのはとても意識していて、いつも試行錯誤しながら作ってます。

──もとの素材となるサウンドの温かみを重視して、外的要素でエフェクトしない。そこが大きいんでしょうか。

すごい鋭いですね。本当にそうなんですよ。そこまで捉えてもらったの、初めてです。

──Daft Punkが最新作「Random Access Memories」で生音やダンスクラシックをフィーチャーしたサウンドでEDMとは違った方向性を示しました。それとはやり方は違うかもしれないけど、エレクトロで活動してきたアーティストが温かみを持った音楽を表現するという意味ではTeddyさんの目指すところは一緒なのかなという気がします。

それはあるかもしれません。Daft PunkやJusticeも作品を重ねるごとに新しい方向にシフトしてますし、僕もEDMやダブステップといったトレンドを取り入れつつも、最終的には自分なりのオリジナルサウンドを確立させたいという思いは強いですね。

──Teddyさんの楽曲は単なる“踊るための道具”としてだけではなく、家でも楽しめる“リスニング向き”のダンスミュージックという側面も強いなという気もしますし。

それは本当に目指しているところで。ダンスミュージックって本当にフロア向きかリスニング向きの、両極端な場合が多いじゃないですか。今回僕がチャレンジしたのは、その両方で使えるダンスミュージックなんです。だからアルバムの中にはフロア向きとリスニング向きの両方が共存していて、クラブだけじゃなくてiPhoneやiPadで移動中に聴いても、そして車の中で聴いても楽しめるものになっていると思います。どんな場面で聴いてもリスナーに刺さる作品になってほしいですね。

TeddyLoid
ワンコインCD「UNDER THE BLACK MOON」 / 2014年8月27日発売 / 500円 / EVIL LINE RECORDS / KICS-93102
ワンコインCD「UNDER THE BLACK MOON」
収録曲
  1. 2000光年のかなたに
  2. BLACK MOON RISING pt.3
  3. BLACK MOON RISING pt.4
  4. BLACK MOON RISING pt.5
  5. FOREVER LOVE
1stアルバム「BLACK MOON RISING」 / 2014年9月17日発売 / EVIL LINE RECORDS
1stアルバム「BLACK MOON RISING」
初回限定盤 [CD+DVD] / 3240円 / KICS-93103
通常盤 [CD] / 2700円 / KICS-3103
TeddyLoid(テディロイド)

1989年8月23日生まれの男性アーティスト / 音楽プロデューサー / DJ。18歳でMIYAVIのメインDJ / サウンドプロデューサーとして13カ国を巡るワールドツアーに同行した。2010年には☆Taku Takahashi(block.fm / m-flo)とともにテレビアニメ「Panty & Stocking with Garterbelt」のサウンドトラックを担当。翌2011年には柴咲コウ、DECO*27とともにgalaxias!を結成し、アルバムを発表した。またSOUL'd OUTのツアーではスクラッチDJとしてのテクニックも披露している。2013年にはももいろクローバーZの楽曲「Neo STARGATE」でアレンジを担当したほか、同年4月の「ももいろクローバーZ 春の一大事 2013 西武ドーム大会」ではDJとしてもライブに参加。さらにMEGやマドモアゼル・ユリア、TEMPURA KIDZ、Yun*chi、the GazettE、SuGなどさまざまなジャンルのアーティストの楽曲プロデュースやアレンジ、リミックスを手がけている。2013年8月からは自身のオフィシャルサイトで、「BLACK MOON RISING」と銘打たれた連作を発表。2014年7月にキングレコードの新レーベル「EVIL LINE RECORDS」とのアーティスト契約を発表し、翌8月にワンコインCD「UNDER THE BLACK MOON」、9月に初のオリジナルアルバム「BLACK MOON RISING」をリリースする。