ナタリー PowerPush - TARO SOUL

よりソウルフルに、より強く、より素直に 第2幕を告げる新作「So Much Soul」

ソウルフルなラップと力強いライブパフォーマンスを武器に、ラッパーとしてのスキルを磨き続けているTARO SOUL。評論家や玄人筋をも唸らせたメジャー1stアルバム「SOUL SPIRAL」から1年9カ月を経て、このたび第2幕の開始を告げる新作ミニアルバム「So Much Soul」をリリースした。

今回ナタリーではTARO SOULへインタビューを実施し、今作に至るまでの心境の変化、新たに見えてきたTARO SOULの魅力、さらにはヒップホップシーンの現状をじっくりと語ってもらった。

取材・文/鳴田麻未 撮影/中西求

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書いた歌詞の量は「SOUL SRIRAL」の倍以上

インタビュー風景

──メジャー1stアルバム「SOUL SPIRAL」から1年半以上音源のリリースがありませんでしたが、この間は何をされていたんですか?

曲制作はずっとしてました。「SOUL SPIRAL」が出る頃にはもう新曲作りに取りかかっていて。でも次のステップへのきっかけを掴めそうな、手ごたえを感じる曲ってのがなかなかできず、思った以上に時間がかかりましたね。

──元から6曲入りのミニアルバムという形を想定して作っていたんですか?

いや、想定してなかったです。最初は、フルアルバムを作ってその中からシングルを切ってっていうふうに漠然と思ってたので、ミニアルバムっていうアイデアは曲が出揃ってからですね。

──じゃあ当初の予定よりも産みの苦しみが結構あったということですか。

思ったよりありましたね(苦笑)。書いた歌詞の量で言ったら、単純に「SOUL SRIRAL」のときと比べて倍以上です。今までの歌詞の構想ノートは全部取ってあるんですけど、今回のと「SOUL SRIRAL」を作ったときのノートは厚さがちょうど倍違うんですよ。

──収録曲数は「SOUL SRIRAL」のほうが倍以上あるのに。

歌詞書けないとかスランプってわけではなく、自分の中で納得いかないというか。曲を作りながら、とにかく“新しいTARO SOUL”を探してたんです。TARO SOULの魅力っていったいなんだろうとか、今自分が歌うべきこと、歌いたいことがどういうことか、とか。そういうのを考えずに作ってもそれなりには形にできるけど、それじゃあ今までと同じ水準のものになっちゃうな、あんまり新鮮さを感じないなって。

──さらに上に行くために、と。

はい。それででき上がったものに対しても、俺は今本当にこういうことを歌いたいのか? って何度も自問自答したりして。自分と向き合いながらじっくり曲を練ったっていう期間でしたね。

スタッフは徹底的につきあってくれたし、一緒に悩んでくれた

──なるほど。でも、メジャーデビュー3年目の勢いのあるアーティストが1年半も作品をリリースしないっていうのは、なかなかないことだと思います。それに対しては温かく見守ってくれる、寛大なスタッフチームだったんですね。

インタビュー風景

そうですね。周りのスタッフのみんなは、“新しいTARO SOUL”を提示するにふさわしい曲ができるまで徹底的につきあってくれたし、一緒に悩んでくれた。「こういうのやれ」っていう強制的な“ディレクション”ではなく、「この曲のこのテーマはすごくいいと思うけど、歌詞もうちょっと振り切れるんじゃない?」という感じの率直な“意見”をくれて、自分もそういう声をちゃんと聞くようになりました。

──今まではあまり周りの意見を聞いてなかったんですか?

「SOUL SPIRAL」まではホント自由にやらせてもらってましたね。正直、自分の中から生まれてくる言葉に対して何も言われたくないって思いが強くて。でも1stアルバム以降より表現としての強さを求めるようになったし、周りに求められてる部分もわかった。今は一緒に作り上げてくことの強さみたいなものも信じられるようになったし、それだけ信頼できる人たちに囲まれてるって思います。そんな過程があったから、スタッフチームには1年半根気よく待ってもらったというより、TARO SOULの魅力を見つめ直す作業を一緒にやってくれたっていう思いがありますね。

ニューアルバム「So Much Soul」 / 2010年12月15日発売 / Ki/oon Records

  • 初回限定盤[CD+DVD] / 1890円(税込) / KSCL-1710~11 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤[CD] / 1575円(税込) / KSCL-1712 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. Special Thanks feat. Licana
  2. HeartBeat / TARO SOUL & KEN THE 390 feat. May J.
  3. Escape
  4. ほっとかないでbaby feat. あるま
  5. 受賞者 feat. サイプレス上野とロベルト吉野とRomancrewとDJ威蔵
  6. 現場でSEE YA! Pt.3 feat. DJ威蔵
初回盤DVD収録内容
  • TARO SOUL & KEN THE 390 feat. May J.「HeartBeat」ビデオクリップ
TARO SOUL(たろうそうる)

アーティスト写真

1981年生まれ、神奈川県出身のヒップホップアーティスト。ブラックミュージックが家庭内で流れる環境で育ち、その後ヒップホップに出会いラップ/DJ/作詞/MCに没頭。2005年に盟友・KEN THE 390とともに太郎 & KEN THE 390名義でアルバム「JAAAM!!!」、2006年にソロアルバム「SOUL SPITS」をリリースした。その卓越したスキルとソウルフルなラップが評判となり、フィーチャリングゲストとしてさまざまな作品に参加。マボロシ、DABO、加藤ミリヤ、May Jなど、客演したアーティストは多数にわたる。「客演王」として名を馳せる中、2008年5月にミニアルバム「BIG SOUL」でメジャーデビューを果たしている。