ナタリー PowerPush - TARO SOUL
よりソウルフルに、より強く、より素直に 第2幕を告げる新作「So Much Soul」
トラックかけてラップしてるだけだったら“音楽未満”だ
──ミニアルバムの最後に収められている「現場でSEE YA!」という曲にも象徴されるように、TARO SOULといえば現場=ライブ。数々の客演をこなしてきた中で、特に忘れられないライブがあれば教えてください。
やっぱりワンマン(「SOUL “LIVE” SPIRAL」2009年7月11日 東京・原宿ASTRO HALLにて開催)を一度経験したことは大きかったですね、自分の中で。
──1stアルバムのレコ発ライブとして挑んだワンマンで、得たものは何でした?
単純に、お客さんが俺のライブのために1日使って来てくれることとか、その空間が全部TARO SOULのお客さんっていうだけで、ブッキングのライブとは全然違う感慨がありましたよ。で、この経験を経たことで、逆にワンマンじゃないところでどういうライブをするかっていうのも考えるようになった。ステージで燃やすエネルギーとか感情もそうですし、DJ威蔵とやるライブのスタンスも。変わったというより明確になったと言ったほうがいいかな。
──DJ威蔵さんといえば今回の「現場でSEE YA! Pt.3」でもアウトロで超高速ビートジャグリングを披露していますが、ビートに対する勘が鋭いスキルフルなDJですよね。彼と組んでいてどうですか?
いやぁ最高ですね。2年弱一緒にやってますけど、彼が新しいTARO SOULを生み出してくれたとすら思ってますし、最高の相手を見つけたなと。DJ威蔵と組んで自分の思い描くヒップホップのライブを明確に表現できるようになったのは、アーティストのキャリア上すごく大きいことです。曲作りの発想も格段に広がったし、バックDJが変わったことでこんなに曲が変わる人ってのもたぶんいないと思います(笑)。メンバーならまた別ですけどね。
──なるほど。他に思い出深いライブ経験はありますか?
DJ威蔵をバックに付けたり、もっと成長したライブをみせたいって思うきっかけになったのは、マボロシのツアー。マボロシはバンドだから当然っちゃあ当然なんですけど、演奏の生っぽさとか1曲1曲への意気込みをステージからビシビシ感じて。ボタン押せば鳴る音じゃないし「あぁ音楽してるな」って純粋に思わされましたね。こう言ったら語弊があるかもしれないけど、トラックかけてラップしてるだけだったら「“音楽未満”だな」とすら思ってしまう。それがヒップホップの良さかもしれないし、自分も当然そういう良さに魅力を感じる部分はあるけど、俺は何をしていきたいかっつったら、“音楽”していきたい。もっと言えば、ヒップホップで“音楽”していきたい。そうなったときに、DJ威蔵ほどスキルのある人だったらターンテーブルひとつで“演奏”できるって思った。
──TAROさん自身も、あれ以降ソウル度みたいなものが増したように見えます。
そうかもしれないですね。もっと音と絡んでいきたいっていう欲求とか衝動は少なからずあると思います。
ヒップホップが壊さなきゃいけない壁はまだある
──ところで、ミニアルバムの参加メンバーはほとんどがTAROさんの同輩ラッパーですが、シーン全体では今まさに世代交代がなされてる最中かと思うんです。ヒップホップシーンの現状を見渡して、TAROさんの感じていることを率直に聞かせてもらえますか。
世代交代についてはホントそうだと思います。僕らもまだまだ若手だと思ってたら、いつの間にか10歳も下のイケてるラッパーとかガンガン出てきて。そういう横も縦もないのがヒップホップの面白いとこかなって思うんですけど、この間それを直に感じたのが、渋谷CLUB QUATTROでやったKEN(THE 390)主催の「超・ライブの道」ってイベント。出演者の中で、一番上は僕の10個上のKOHEI JAPAN、一番下は僕の10個下のSHUNって奴。年齢差が20歳あっても、同じ目線で同じステージに立てるって面白いなぁと思いました。でももっともっと開けていいだろって思うけど。
──それは年齢差ということだけじゃなくて?
はい。ヒップホップの壊せる壁はいくらでもあるっていうか、壊さなきゃいけない壁はまだあるなっていうのが感じてるところですね。シーンの中自体はすごい活性化してるし、このままこの流れを止めずに、外からの風も取り入れていって、日本語ラップが変な固定観念なしに評価されるようになってほしい。そのためにはちゃんと外で戦える人がもっと増えていかないとって思うんですよ。今のままじゃせっかく面白いのにもったいないなと。で、俺はヒップホップの良さを率先して外へアピールしていきたい。だからメジャーっていう場所も自分にとってはすごくやりがいのある場所ですね。
CD収録曲
- Special Thanks feat. Licana
- HeartBeat / TARO SOUL & KEN THE 390 feat. May J.
- Escape
- ほっとかないでbaby feat. あるま
- 受賞者 feat. サイプレス上野とロベルト吉野とRomancrewとDJ威蔵
- 現場でSEE YA! Pt.3 feat. DJ威蔵
初回盤DVD収録内容
- TARO SOUL & KEN THE 390 feat. May J.「HeartBeat」ビデオクリップ
TARO SOUL(たろうそうる)
1981年生まれ、神奈川県出身のヒップホップアーティスト。ブラックミュージックが家庭内で流れる環境で育ち、その後ヒップホップに出会いラップ/DJ/作詞/MCに没頭。2005年に盟友・KEN THE 390とともに太郎 & KEN THE 390名義でアルバム「JAAAM!!!」、2006年にソロアルバム「SOUL SPITS」をリリースした。その卓越したスキルとソウルフルなラップが評判となり、フィーチャリングゲストとしてさまざまな作品に参加。マボロシ、DABO、加藤ミリヤ、May Jなど、客演したアーティストは多数にわたる。「客演王」として名を馳せる中、2008年5月にミニアルバム「BIG SOUL」でメジャーデビューを果たしている。