「私がかわいいのはあなたのせいですよ」
──9曲すべて完成して、どんな作品になったと感じていますか?
楽しげな曲、楽しげなアルバムができたなと思いました。「楽しい」と言うと電波ソング的なにぎやかさを想像しちゃう人もいるかもしれないけど、そっちではなくて。さっき「大人かわいい」とおっしゃってくれましたけど、歌詞のオーダーをするときはまさに同じことを伝えてるんです。最近の若いアイドルたちって、自分たちから「かわいい」と発信して、受け手もそれをストレートにかわいいものとして受け取る風潮があるじゃないですか。かわいいって言ってるからイコールかわいい、みたいな。私はそれがうらやましいなと思うんです。私が若かったら今そういう曲をやってみたいけど、もう若くないから(笑)。「かわいい」って言いたいんだけど、自分から「かわいいでしょ」って言うのではなく、大人なので「私がかわいいのはあなたのせいですよ」くらいの感じにしたい。
──はいはい。今のアイドルの“カワイイ”文化はわりと直接的な自己肯定で、それを受信するのも同世代の女の子たち、という感じに変わっていますからね。
それが文化としてすごくうらやましいなと思うんです。私がその年齢の頃にはなかった文化だから。同じように歳を重ねてきた、そんなふうに直接的に「かわいい」って言いたかった子たちに刺さるといいな、という気持ちはありますね。
ライブ活動と今の自分
──「Felice」を携えたツアーがどうなるのか……今回は序盤にもツアーの話をしていただきましたけど、実際どんなツアーになるのでしょう。本当にタイトルのまま、ワンダフルでハッピーなツアーになるのか。
ホントにそんなに深い意味なくて……なくはないけど、そんな邪推するほどのものではなくて、もう普通に構えてくださいよ。あと「ハッピーが付く曲いっぱい歌うんでしょ」とか、そういうことでもない。
──普通にいいライブで、新曲もたくさんやりますよと。
だし、もう大人なんで……やっぱり20代のときみたいなライブにはもちろんならないんですよね。昔の映像を観ると、今より躍動感があるんですよ(笑)。下手は下手なりに、なんか今より軽やかだなって。そんなに大きくは変わらないつもりでいたけど、手の振りとかやってると「ちょっと待って、肩、肩が……」みたいな。
──(笑)。
「待って待って待って、肩がヤバい!」「首つった! 首!」とかってなると、やっぱり「今やれる動きに変えましょう」と考えるんです。だから、ちょっとずつ、ちょっとずつ……なんて言うんだろう、「みんなの思い出の中のゆかりんとは違うかもしんないけど、今のゆかりんががんばって背伸びしてるんで」っていう。普通「背伸び」って言うと大人の方向にすると思うんだけど(笑)。
──それは裏を返せば「肩がヤバい!」ぐらいのことでしかないってことですよね? 長年活動されている方の中には、歌うこと、ステージに立つこと自体がしんどくなってライブをやらなくなったりする人もいると思いますけど、むしろライブは精力的にやろうとしているじゃないですか。
いや、歌も昔に比べたら歌えなくなってきたなあと若干思ってはいますよ。そこも含めて、今の自分でできる形にはシフトしていかなくちゃなって。
──でもそこでいきなり、完全に着席でアコースティックで、というシフトチェンジはしなさそうですよね。歌ったり踊ったり……。
あんまり踊って……ないですよ?(笑) 昔の映像を観ると、あの頃のほうが踊ってたなって思いますしね。もうすぐ50歳なんだから勘弁してよって思う。あなたたちはいつまでも若いつもりでいて、20代の子のライブとかも好んで観ているんでしょうけど、あたしゃ49だよ?って。
──自分が最近51になったから思いますけど、50って数字はさすがに重くないですか?
いや、重いですよ。どう考えても100歳までは生きられないし、完全に折り返しを過ぎて棺桶に片足突っ込んでますから。
──もはや17歳の設定もなく、普通に年齢の話をナタリーのインタビューではしてもらってますけど(笑)、ちょっと躊躇しますよ。
全然大丈夫ですよ(笑)。49であることは隠してもない事実ですもん。
──声優界の伝統“17歳教”の流れで「田村ゆかりさん じゅうななさい」や「田村ゆかり氏 じゅうななさい」あたりはネタとしてありましたけど、最近は年齢の話をリアルにされていますよね。
リップサービス的なものだったり、マインド的な部分での“17歳”っていうのはアリだと思うんですけど、体はついていかないですよ。しゃがむだけで膝も痛いのに。
──(笑)。「ゆかりさん」「ゆかり氏」の流れだと57は難しいですね。
「ゆかりんご17歳」です。ゆかりんご。
──なるほどその手が(笑)。改めてツアーについて何か事前に言っておくとしたら、まずはコールやシンガロングをしっかりと。
はい。みんなで歌えるとこは一緒に歌ってほしいかな。おい古参さん誘導頼むよ、一緒に歩んで来ただろう?っていう(笑)。
公演情報
田村ゆかり LOVE ♡ LIVE 2025 *Wonderful Happiness*
- 2025年6月22日(日)栃木県 宇都宮市文化会館 大ホール
- 2025年6月29日(日)福岡県 福岡市民ホール 大ホール
- 2025年7月6日(日)愛知県 Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
- 2025年7月21日(月・祝)北海道 カナモトホール(札幌市民ホール)
- 2025年7月26日(土)京都府 ロームシアター京都 メインホール
- 2025年7月27日(日)静岡県 アクトシティ浜松 大ホール
- 2025年8月2日(土)山口県 KDDI維新ホール
- 2025年8月3日(日)広島県 広島文化学園HBGホール
- 2025年8月10日(日)山梨県 YCC県民文化ホール(山梨県立県民文化ホール)
- 2025年8月16日(土)宮城県 仙台銀行ホール イズミティ21 大ホール
- 2025年8月17日(日)岩手県 盛岡市民文化ホール 大ホール
- 2025年8月24日(日)千葉県 市川市文化会館 大ホール
- 2025年8月30日(土)大阪府 グランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)
- 2025年8月31日(日)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
- 2025年9月6日(土)東京都 東京ガーデンシアター
- 2025年9月7日(日)東京都 東京ガーデンシアター
プロフィール
田村ゆかり(タムラユカリ)
2月27日生まれ、福岡出身の声優アーティスト。1997年にCDデビューを果たし、声優および歌手としての活動を始める。いずれも精力的な活動で着実に評価を集め、2008年には声優として3人目となる東京・日本武道館公演を行った。2017年に自身のレーベル・Cana ariaを立ち上げ、同年11月にCana aria第1弾作品となるミニアルバム「Princess ♡ Limited」を発表。以降もコンスタントに作品をリリースしている。2025年6月に最新ミニアルバム「Felice」を発表。6月から9月にかけて全国ツアー「田村ゆかり LOVE ♡ LIVE 2025 *Wonderful Happiness*」を行う。
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