「何をしたいのかわからない」ってよく言われてた

──確かにたむらぱんさんって、1つのイメージでくくるのは難しいかもしれないですね。デビュー当初は「日本初のMySpace発メジャーデビューアーティスト」って言われてましたけど、それは音楽性の話ではないし。

そうですね（笑）。デビューする前もよく言われてたんですよ。「何をしたいのかわからない」って。

──どう思うんですか、そう言われたときって。

どうして「全部違うテイストの曲」みたいに言われるのかがわからなかった（笑）。私は「全部自分から出てきたものだし、そんなに違わない」って思ってるんだけど、それって感覚のズレなわけで。私はいろんなことをやってみることに抵抗がないし、むしろやりたいと思う。でも例えばお医者さんに「新しいお茶を開発しました」って言われても、ちょっと困りますよね。

──「いやいや、あなた医者ですよね？」って？

そう。「この人、自分の職業を極めてないのかな」っていう不信感も生まれますよね（笑）。でも私としては単なる自己満足ではなくて、ちゃんと（音楽を）仕事にしたいっていう気持ちもあったし、そこはいろいろ考えてました。ここまでやってきて、自分の中のバランスの取り方がわかってきた気がします。

音楽を作る以外の趣味は特にないです

──僕の中のたむらぱんさんのイメージは、「1人きりでずっと機材に向かい合ってる」っていう感じなんですが……。

まあ、そうですね（笑）。あとは本を買って喫茶店で読むくらいで、趣味も特にないですし。録音のボタンを押して、歌って、また機材に戻って……って、いつも1人で部屋の中をウロウロしてます。

──作詞・作曲はもちろん、アレンジやトラックメイキングまで手がけるというスタイルになったのは、何がきっかけだったんですか？

自分で曲を作ろうと思って楽器を買いに行ったのがすべての始まりですね。秋葉原のソフマップでキーボードを買って、デモを作り始めて。その後、今のマネージャーと知り合ってMTR（マルチトラックレコーダー）の存在を知るんですけど。

──え、それまではMTRを使わないでデモを作ってたんですか？

そうです（笑）。キーボードに付いてたシーケンス機能を使って作ってましたね。それからMySpaceを使うために初めてインターネットにつないで。今はやっと念願のデータ送信ができるようになりました。

──何だかひとつひとつ、すべてが遅いような気が……。

機械とかあんまり……だったので。パソコンの授業とかもあったんですけど、全然苦手だったんですよねえ。

音楽にはあらゆる職業が詰まってるイメージがあった

──やりたい音楽の方向性は当時から決まってたんですか？

えーと、大学のサークルでコピーバンドをやってたんですけど「向いてないな」って思ってたんですよ。でもサウンドはバンドっぽいのが好きだから、まずは1人でやって、デビューすれば、すぐにバンドをつけてもらえるんじゃないかなって。まあ、それは大間違いだったんですけど（笑）。

──バンドサウンドは好きだけど、バンドの人間関係は苦手？

ゼロの状態からみんなで作るっていうのはちょっと難しいですね。（100のうち）10くらいまで1人で作って、その後をみんなで作るんだったらいいんですけど。最初の時点では「かまわないでほしい」って思う（笑）。あとね、私、言われたことをすごく気にしちゃうんですよ。良くないと思ってても口に出せないし、それって不健康な制作現場でしょ。

──優しい性格なんですね。

紙一重ですけどね、言いたいことが言えないだけだから。優しいっていうより平和主義？

──（笑）。たむらぱんさんはジャケットやWEBページのデザイン、イラストも手がけてますけど、それも最初からやりたかったことなんですか？

そうですね、私、最初のデモテープを作ったときから自分でデザインしたジャケットをつけてたんです。音楽にはあらゆる職業が詰まってるようなイメージがあったんですよね。音だけじゃなくて写真やイラストもあるっていう。もともと学校の絵画コンクールとかでも、入選するために命をかけるタイプだったんですよ。だから美術の授業もちゃんと受けてたし。美大に行きたいみたいなノリではなかったんですけど、そういう作業をやめなかったっていうのは大きいと思いますね。