竹原ピストルが、1年ぶりとなるフルアルバム「GOOD LUCK TRACK」をリリースした。
昨年は「日本アカデミー賞」で優秀助演男優賞に輝き、「NHK紅白歌合戦」の初出場を果たすなど目覚ましい活躍を見せ、一気にその名をお茶の間に広げた竹原。大ブレイクを経て完成した新作は、サウンドも歌詞も多彩な、新しい一面を見せる濃密なアルバムとなった。
今年の年末には初の東京・日本武道館公演を控えるなど、昨年以上に絶好調とも言える状況の中、彼は一体何を思うのか。「PEACE OUT」リリース以降の日々から語ってもらった。
取材・文 / 秦野邦彦 撮影 / 吉場正和
まったく満足してない自分に安心した
──音楽ナタリーでは前作「PEACE OUT」以来1年ぶりのインタビューとなりますが(参照:竹原ピストル「PEACE OUT」インタビュー)、竹原さんにとって昨年は特に密度の濃い1年だったんじゃないでしょうか。
密度濃かったから、うわーっとやってるうちに終わっちゃった感じがありましたね(笑)。「PEACE OUT」もたくさんの人に手に取っていただいて、オリコンチャートの1桁に入ったこともすごくうれしかったです。自分の曲を長いことCMで使っていただいたり、映画に出させていただいたり。そのときそのときの活動が歯車の1つひとつだとすると、それらがガチャンと噛み合った感じがすごくあって。そこからの「PEACE OUT」リリースでしたから、「これ、ひょっとしていい成績残せるんじゃないか」という期待もあってドキドキしてました。
──いい流れができていることを竹原さんご自身も感じていたんですね。
ええ。メジャー1枚目、2枚目の「BEST BOUT」と「youth」は名刺代わりじゃないですけど、「竹原ピストルを聴くにあたってまずこのアルバムを聴いてくれ」という思いで出してて。3枚目も「頼む、これでなんとか名前が広がりますように!」っていう気持ちで出したから、さすがにこれでいい成績が残せなかった場合、次からは別の角度で考えなきゃいけないという背水の陣の気持ちもあったんです。だから出したときは手応えより、緊張感のほうが強かったですね。
──人事を尽くして天命を待つという。
はい。これで多くの人に手に取ってもらえなかったら……あきらめる気持ちはこれっぽっちもなかったですけど、また別のやり方が必要になってくるぞと。アルバムの3枚目で結果が出せたことがすごくうれしかったです。
──去年は大活躍の1年でしたが、中でも大きかったのは「NHK紅白歌合戦」出場だったのではないでしょうか。個人的に大みそかの新聞に竹原さんを応援する「BOSS」の広告が一面に掲載されたことにグッときました。
あれは感動しました。なんて粋なことをしてくださるんだろうって。「BOSS」のCMでは内野聖陽さん、松重豊さんと共演させていただいて、偉大な役者さんの佇まいを間近で感じることができたこともすごく有意義だったなあと思って。強い人ってすべからく優しいなあと感じて。松重さんは「バイプレイヤーズ」でもご縁があり。まさか一緒にお芝居ができるとは思ってなかったから、すごく緊張したけど楽しかったです。監督さんもすごく素敵な方でした。
──これまでお世話になったライブハウスのマスターやママさんの反応はいかがでしたか?
紅白出場が決まっていろんなところから「おめでとう」ってお祝いのメールをいただきました。僕が歌を始めたばかりの頃から世話になってるお店のマスターは「紅白出場決まったことがめでてえことなのか俺はよく知らねえけどおめでとよ」なんて、ひねくれたメールが届いて。じゃあ、メールしてくんなよ! おめーがメールして来たの初めてだろ、腹立つわーみたいな(笑)。うちのかあちゃんも相当ひねくれ者で、紅白の前の晩に電話がかかってきて「近所の人から家族は紅白に招待してもらえるって聞いたけど、どうなの? まあ、行く気はないけど……」。いや、めっちゃ行きたそうじゃねえか!(笑)
──あはは(笑)。皆さん素直じゃないんですね。
そういうところもひっくるめて、ちょっといいとこ見せられたかなって。去年は活動の成果にすごく恵まれた1年だったなと思うんですけど、別の意味でうれしかったと言うかホッとしたことは、自分がそこにまったく満足してないことなんです。自分自身が何を成し遂げたわけでもねえだろって。いい意味で自分に対して冷めていて「まだまだこっからだからな!」って。そう思えたことにホッとしました。満たされた気持ちになったらそこで止まってしまうので。
とっぱらいのギャラとか大好きですから(笑)
──今回の「GOOD LUCK TRUCK」がまさにそういうアルバムですね。前回のインタビューの最後に「次のアルバムは楽しいものになりますから」とお話されていましたが、その言葉通り喜怒哀楽がはっきりしたバラエティ豊かな1枚で、いよいよ本領発揮だなと感じました。
ああ、そう言っていただけるとうれしいです。「自分の持ち味はあくまで弾き語りなんで」みたいに自分で自分を窮屈にする気持ちは一切持たず、とにかく聴いてくださった方を楽しい気持ちにしたいっていうのはずっと変わらないつもりなんです。そこが自分の本領だと思うし、それが一番わかりやすく出てるアルバムかなと思っていたので。
──身軽になった感はアルバムタイトルにも表れてますよね。1曲目「ぼくは限りない~One for the show~」は、前作の1曲目「ドサ回り数え歌」に対して、今回はこんなに楽しく歌を伝えられるんだよという宣言にも思えました。
これまでも歌うたいを主人公にしたものはけっこう歌ってきたんですけど、今はもう「ぼくは限りない」がぶっちぎりに気に入ってるんです。歌うたいとしての心情やこだわりはこの1曲に全部詰められたなあと思っていて。どうしても最初に聴いていただきたくて1曲目にしました。
──ステージに立つ者のスタンスを表す「One for the show, Two for the show」という歌詞は、古くからブルースやラップの定番フレーズとして知られる「One for the money, two for the show」をもじったものですね。
もちろん暮らしていくにはお金が必要なんですけど、僕は歌で稼いだ金が好きなんです。「金なんかいらねえ、歌えればいいのさ」ではなく、稼ぐなら歌で稼ぎたい。生々しい話ですけど、とっぱらいのギャラとか大好きですから(笑)。マスター、ママさんから封筒もらうと、すごく精神的に落ち着くと言うか。だからいまだにツアーとかプロモーションの合間でも空いてる日があればすぐライブの予定入れて、何十人かの前で歌うことはちょいちょいやってるんです。現場じゃないと気付けないことってたくさんあるんで。そういう意味でも必要なことだなとは思っています。また、事務所のスタッフも素晴らしいんです。「いいよ、やってこい」みたいな。
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大杉漣さんにいいところを見せられるようにやるしかないな
- 竹原ピストル「GOOD LUCK TRACK」
- 2018年4月4日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
-
初回限定盤 [CD+DVD]
3564円 / VIZL-1352 -
通常盤 [CD]
3132円 / VICL-64979
- CD収録曲
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- ぼくは限りない~One for the show~
- Here we go!!
- ゴミ箱から、ブルース
- どーん!とやってこい、ダイスケ!
- 月光の仮面
- のらりくらり
- 本庄のド根性
- いくぜ!いくか!いこうよ!
- I miss you...
- 名も無き花
- ドライブトライブ ~初代機材車、二郎号に捧ぐ~
- オーバー・ザ・オーバー
- Amazing Grace
- 狼煙(朗読) ~Live at京都大作戦 2017~
- 初回限定盤DVD収録内容
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- よー、そこの若いの
- リョウジ
- Amazing Grace
- カウント10
- 俺たちはまた旅に出た
- Forever Young
- オーバー・ザ・オーバー
- ぐるぐる
ツアー情報
- 竹原ピストル 全国弾き語りツアー “GOOD LUCK TRACK”
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- 2018年6月14日(木)東京都 NHKホール
- 2018年6月22日(金)大分県 別府国際コンベンションセンター ビーコンプラザ
- 2018年6月23日(土)宮崎県 都城市総合文化ホールMJ
- 2018年6月25日(月)熊本県 くまもと森都心プラザ
- 2018年6月26日(火)鹿児島 かごしま県民交流センター 県民ホール
- 2018年6月30日(土)山梨県 東京エレクトロン韮崎文化ホール
- 2018年7月2日(月)香川県 レクザムホール 小ホール
- 2018年7月3日(火)愛媛県 松山市民会館 中ホール
- 2018年7月5日(木)徳島県 あわぎんホール
- 2018年7月6日(金)高知県 高知県立県民文化ホール グリーンホール
- 2018年7月7日(土)佐賀県 佐賀市文化会館 中ホール
- 2018年7月25日(水)石川県 北國新聞赤羽ホール
- 2018年7月26日(木)富山県 富山県教育文化会館
- 2018年7月29日(日)神奈川県 横浜ランドマークホール
- 2018年8月15日(水)千葉県 市川市文化会館 小ホール
- 2018年8月16日(木)群馬県 昌賢学園まえばしホール(前橋市民文化会館)
- 2018年8月19日(日)滋賀県 滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール
- 2018年8月21日(火)京都府 ロームシアター京都 サウスホール
- 2018年8月23日(木)和歌山県 和歌山市民会館 大ホール
- 2018年8月25日(土)三重県 NTNシティホール(桑名市民会館)
- 2018年8月26日(日)岐阜県 岐阜市民会館 大ホール
- 2018年8月28日(火)静岡県 静岡市民文化会館 中ホール
- 2018年9月7日(金)栃木県 宇都宮市文化会館 小ホール
- 2018年9月11日(火)愛知県 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
- 2018年9月17日(月・祝)宮城県 電力ホール
- 2018年9月25日(水)鹿児島県 ROADHOUSE ASIVI
- 2018年9月26日(木)鹿児島県 ROADHOUSE ASIVI
- 2018年9月29日(土)島根県 島根県民会館
- 2018年9月30日(日)山口県 宇部市渡辺翁記念会館
- 2018年10月2日(火)新潟県 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館
- 2018年10月5日(金)北海道 小平町文化交流センター
- 2018年10月6日(土)北海道 道新ホール
- 2018年10月8日(月・祝)北海道 たかすメロディーホール
- 2018年10月11日(木)秋田県 秋田市文化会館 小ホール
- 2018年10月12日(金)山形県 山形テルサ アプローズ
- 2018年10月14日(日)福島県 郡山市民文化センター 中ホール
- 2018年10月18日(木)福井県 福井県県民ホール
- 2018年10月19日(金)長野県 長野市若里市民文化ホール
- 2018年10月24日(水)奈良県 やまと郡山城ホール 小ホール
- 2018年10月25日(木)大阪府 オリックス劇場
- 2018年10月27日(土)兵庫県 新神戸オリエンタル劇場
- 2018年10月28日(日)鳥取県 鳥取市民会館
- 2018年11月1日(木)茨城県 ひたちなか市文化会館 小ホール
- 2018年11月8日(木)青森県 八戸市民会館
- 2018年11月9日(金)岩手県 岩手県民会館 中ホール
- 2018年11月14日(水)長崎県 チトセピアホール
- 2018年11月15日(木)福岡県 福岡国際会議場 メインホール
- 2018年11月17日(土)沖縄県 ナムラホール
- 2018年11月24日(土)広島県 JMSアステールプラザ 大ホール
- 2018年11月25日(日)岡山県 倉敷市芸文館
- 2018年12月22日(土)東京都 日本武道館
- 竹原ピストル(タケハラピストル)
- 1976年生まれ、千葉県出身。大学時代の1995年にボクシング部主将として全日本選手権に出場した経歴を持つ。1999年に野狐禅を結成。2003年にデビューし、6枚のシングルと4枚のアルバムをリリースした。2009年に野狐禅を解散後、ソロ活動を開始。年間250~300本のライブ活動をしながらリリースを重ねる。2014年、野狐禅デビュー時に所属していたオフィスオーガスタに復帰し、10月にスピードスターレコーズよりニューアルバム「BEST BOUT」をリリースする。2015年11月にメジャー2作目となるアルバム「youth」を発表。2017年4月にアルバム「PEACE OUT」をリリースし、同年末に「第68回紅白歌合戦」に初出場を果たす。2018年4月にアルバム「GOOD LUCK TRACK」を発表。歌手のほかに俳優としての顔も持ち、映画「永い言い訳」の演技が評価され「第40回日本アカデミー賞」優秀助演男優賞を受賞した。