音楽ナタリー PowerPush - 高橋洋子

名曲、レア曲、セルフカバー、自身とデュエット 盛りだくさんのカバー盤を全曲解説

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あなた / 小坂明子(1973年)

──次は小坂明子さんの大ヒット曲です。昭和の歌謡曲を振り返る際の定番の1曲ですね。

今度は私の十八番なんです(笑)。ものすごく思い入れがある曲。小学生の頃から好きで好きでしょうがなくて、いつもこの曲を歌っていましたね。単純に、すごくいい曲だから歌いたかったし、皆さんに聴いていただきたかったという気持ちがありました。若い方はもうあまり知らないんじゃないかな?っていう気もするんですけど、それであればなおのことというか。カバーアルバムには、こういう名曲ほど入れるべきだと思います。

──王道のアレンジで、情感たっぷりに歌い上げていますね。

この曲については本当に、音楽をやっている醍醐味を味わわせていただきました。笹路さんは耳が本当にいい方で。私自身、けっこう耳がいいというか、一般的に年齢を重ねるごとに聞こえにくくなる音域であっても聞こえてしまうほうだし、ちょっとしたノイズやスタジオの機材のセッティングの違いも気になってしまうタイプなんですけど、笹路さんはその比じゃないというか。以前もお話した通り、楽器のセッティングはもちろん、私が歌うときに聴くためのヘッドフォンから流れる音のバランスまで本当にパーフェクト!

──ということは、高橋さんが40年間愛してきた曲を、最高のコンディションで歌うことができたんですね。

そうですね。特に「あなた」のレコーディングのときは、セッティングは笹路さんが指定したまんま。ボーカルブースのキューボックスのボリュームすら、目盛り1つ動かさずに録りましたから。「笹路さんってこういう音楽の中にいるんだ」と、彼の音楽空間の中に入って歌った感じです。こんなに歌に集中できたのは初めての経験だし、不思議な感じでした。この音の空間を皆さんにも共有してもらえると思います。

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ははうえさま / 藤田淑子(1975年)
「一休さん」エンディングテーマ

これも私が大好きな曲なんです。実は前作でも歌いたかったんですけど、軽く却下されてしまったんですよ(笑)。だから、今回はリベンジなんです。

──とても有名な曲ですが、いわゆるアニソンファンの人たちからはけっこうスルーされがちな曲でもありますよね。

そうなんです! 今回も「まさかの『一休さん』」と言われてます(笑)。でも、すごくいい曲で、悲しい曲なんですよね。みんな「2番の歌詞がいい」って言いますし。

──母猫から引き離されて、もらわれていく子猫を同じ境遇の一休さんが励ますんですよね。

サックスの人も「泣きそう」と言ってました(笑)。ただ、もともと転調がすごく多い曲なので、笹路さんが大変そうでしたね。私も2番の譜割りを原曲から少し変えさせていただきました。

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ふしぎなメルモ / 高橋洋子(1971年)
「ふしぎなメルモ」イメージアルバム収録曲

──次はこのアルバムの目玉とも言える1曲です。高橋さんが10歳の頃、児童合唱団にいた時代に歌った「ふしぎなメルモ」のテーマソングの音源を蘇らせて、現在の高橋さんとデュエットするという企画ですが、これはどなたの発案だったのでしょう?

これは私です。私が大好きな手塚(治虫)作品の曲を1曲入れたかったのと、時空を超えた自分とのデュエットがかなうのなら面白いよね、という気持ちで提案させていただきました。でも、今回レコーディングに携わった皆さんは大変だったと思います。当時は合唱団のみんなで「せーの」で録ってるからけっこうリズムがよれていたんですね。笹路さんはそれを一生懸命直していました。あと音源を持っていたテイチクさんにもご協力いただきましたし、それも感謝ですね。

──昔のご自身とデュエットが実現して、いかがでしたか?

小学生の私はパンチが効いてる(笑)。あと、実は今回のバージョンって「ふしぎなメルモ」の世界に合っているんですよね。本当に歌の中で私が大人になったり、子供になったりしているんですから(笑)。

──3番で「青いキャンデー 大人になって どうするの?」と子供の高橋さんが歌うと、「メルモちゃん 優しいママになったよ」と大人の高橋さんが答えるように歌うくだりは図らずも感動してしまいました。

子供の私と大人の私が行ったり来たりするのが、アニメの内容と一緒だっていうことにはあとで気付いたんですけどね(笑)。でも本当にママになっていますからね。子供の頃の私とデュエットするなんて不思議な経験だったんですけど、だからこそ本当に音楽をやっていてよかったな、と思いました。

カバーアルバム「20th century Boys & Girls II」2015年4月29日発売 / 1296円 / スターチャイルド / KICM-3289 / Amazon.co.jp
「20th century Boys & Girls II」
収録曲
  1. 残酷な天使のテーゼ
    [作詞:及川眠子 / 作曲:佐藤英俊]
    オリジナル歌唱:高橋洋子(1995年)
    テレビアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」オープニングテーマ
  2. カリキュラマシーンのテーマ
    [作詞・作曲:宮川泰]
    オリジナル歌唱:西六郷少年少女合唱(1974年)
    教育番組「カリキュラマシーン」主題歌
  3. ひこうき雲
    [作詞・作曲:荒井由実]
    オリジナル歌唱:荒井由実(1973年)
    映画「風立ちぬ」主題歌
  4. 真赤なスカーフ
    [作詞:阿久悠 / 作曲:宮川泰]
    オリジナル歌唱:ささきいさお(1977年)
    テレビアニメ「宇宙戦艦ヤマト」エンディングテーマ
  5. あなた
    [作詞・作曲:小坂明子]
    オリジナル歌唱:小坂明子(1973年)
  6. ははうえさま
    [作詞:山元護久 / 作・編曲:宇野誠一郎]
    オリジナル歌唱:藤田淑子(1975年)
    テレビアニメ「一休さん」エンディングテーマ
  7. ふしぎなメルモ
    [作詞:岩谷時子 / 作曲:宇野誠一郎]
    オリジナル歌唱:出原千花子、ヤングフレッシュ(1971年)
    テレビアニメ「ふしぎなメルモ」オープニングテーマ
  8. 愛のバラード
    [作詞:山口洋子 / 作曲:大野雄二]
    オリジナル歌唱:金子由香利(1976年)
    映画「犬神家の一族」オープニングテーマ
  9. 夜明けのマイウェイ
    [作詞・作曲:荒木一郎]
    オリジナル歌唱:PAL(1979年)
    テレビドラマ「ちょっとマイウェイ」主題歌
  10. 魂のルフラン
    [作詞:及川眠子 / 作曲:大森俊之]
    オリジナル歌唱:高橋洋子(1997年)
    映画「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air / まごころを、君に」主題歌
高橋洋子(タカハシヨウコ)

高橋洋子8月28日生まれ、東京都出身の歌手。2歳からピアノを習い始め、8歳で少年少女合唱団に入団するなど、幼い頃から音楽に囲まれた環境に育つ。1987年には久保田利伸のコンサートツアーのサポートメンバーとしてステージに立ち、その後松任谷由実をはじめとする数々のアーティストのコンサートツアーやレコーディングに参加。CMソングのボーカリストなど活躍の場を広げ、1991年にはソロデビューシングル「P.S. I miss you」で日本レコード大賞新人賞ほか多数の新人賞を受賞。1995年にはアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のオープニングテーマ「残酷な天使のテーゼ」を歌い脚光を集めた。その後もさまざまなアニメのテーマ曲やCMソングを担当。コンスタントにオリジナル作品を発表している。2015年1月にはシングル「真実の黙示録」をリリース。4月にはカバーアルバム「20th century Boys & Girls II」を発表した。