田所あずさ|自分自身と向き合った10thシングル

どうせ失敗するなら……

──ジャケット写真が発表された際に、ショートカットのビジュアルが公開されて驚きました(参照:田所あずさ、髪をばっさり切った新シングルジャケット)。

実はずっと前から髪を切りたくて、マネージャーさんからは「似合うならいいよ」と言われていたんです。ただ、自分でショートカットが似合う自信が全然なくて、なかなか踏み出せない時期が続いていて……。

──なぜ決心できたんですか?

田所あずさ

どうせ失敗するなら早いほうがいいな、と思って。

──微妙に後ろ向きな理由ですね。

タイミング的にはちょうど「RIVALS」のシングルが出ることが決まったときで、どうせなら新しいアーティスト写真を撮るタイミングに合わせようと思って、バッサリ切りました。たまたま時期がかぶっただけなんですけど、「RIVALS」のさわやかなMVのイメージにショートカットは合っていたし、運よくうまくいきました(笑)。

──バンドメンバーの方や、仕事でお会いする方々からの評判はどうですか?

すごく評判がよくてビックリしているんですよ。逆に自然すぎて髪を切ったことに気付かない方もいるくらいで。マネージャーさんに言われていた「似合うならいいよ」をちゃんとクリアできてよかったです。

──「RIVALS」のジャケットには夕方に撮影された田所さんの写真が使われています。実は「リトルソルジャー」(2019年1月発売のシングル)のアートワークが朝の風景で、「イコール」(8月発売のシングル)のアートワークが昼の風景、と時間が流れているという仕掛けがあるんですよね。

そうなんです。それと「リトルソルジャー」からはなるべく自然な表情を撮ってもらうように意識していて。これまでのジャケット写真はシチュエーションや表情を決めてバチッと撮ることが多かったんですが、「リトルソルジャー」からは自然光の中でいろんな表情を撮ってもらって、その中からジャケットに使う写真を選ぶようにしたんです。なのでアートワークの雰囲気はけっこう変わったと思います。

──ビジュアルの作り方も含めて、田所さんのイメージがちょっと大人っぽくなったと思うんですよ。しかもそれはイメージだけではなくて、曲の内容にもつながっているような気がして。

確かにそうかもしれませんね。自分自身、年齢的にも大人になったなという自覚はありますし。それに活動している期間が長くなると関わってくださっている方々の変化もあって、自分を取り巻く環境がどんどん変わっていくんですよね。そんな中で、自分がしっかりしていないと、田所あずさとしてのアーティスト像がブレてしまう気がして。以前よりも自分で自分のことをちゃんと考える時間が増えたと思いますし、どう見せたいか、どう在りたいかを考えるようになりました。

──「プールで撮影したい」と提案したのも、「ショートカットにしたい」とマネージャーさんに伝えたのも、田所さん自身の成長の表れなのかもしれないですね。

考えたこともなかったけど、そうかもしれないですね。ただ偶然が重なっただけかもしれませんが(笑)。

──でもそれがただの提案で終わらずに、MVやジャケット写真として残っているわけですから。田所さん自身の“どう在りたいか”がちゃんと形になっている証拠だと思います。

ありがとうございます。私もちゃんと成長できてるのかもしれないですね。

青は手の届かない色

──シングルのカップリング曲「スペクトラム ブルー」についても話を聞かせてください。作曲は「RIVALS」と同じく神田ジョンさんが担当していますが、「スペクトラム ブルー」はどういうきっかけで生まれた曲なんですか?

田所あずさ

もともと「いつかこれをころあず(田所の愛称)に歌ってほしい」とジョンさんがデモを作ってくれていた曲なんです。ここ数年、私を取り巻く環境が変わっていく中で、ジョンさんはバンドメンバーとしてもずっと見守ってきてくれた存在で。そんなジョンさんが作ってくれたデモを少し前に聞かせてもらっていたので、「今回のカップリングにぜひ入れたい」とお願いして、歌わせてもらいました。

──作詞を手がけた大木貢祐さんは、田所さんと同じホリプロインターナショナル所属のアーティストです。

大木さんもジョンさんと同じく私のことをずっと見ていてくださっている方なんです。今回、歌詞を書いていただくのは初めてだったんですけど、すごく人のことを深くまで見ている方なんだなとハッとさせられました。自分では言葉にできない私のことを、しっかり歌詞にしていただいたような気がして。「ひとりきりでいたいのは ちゃんと迷いたいから」とか、とても素敵な言葉がつづられていてうれしくなりました。

──曲のテーマにもなっている、青という色の表現が独特ですよね。

大木さんは「青色というのは手が届かない色だ」と言っていて。例えば空とか海は青く見えるけれど近くにいくと透明になってしまったり。「追いかけても追いかけても届かない色が青なんだ」というモチーフと、歌がもっとうまくなりたいとか、本当にいいお芝居とはなんだろうとか、いろんなものを追いかけている私の姿を重ねてくれたみたいで。本当に歌詞をいただいて感動しました。

──しかも青は田所さんのイメージカラーでもありますよね。

そうなんですよ! いろんなところにちゃんと意味がある、本当に素敵な歌詞なんです。カップリングなのがもったいないくらいの曲になりました。この曲に出会えたことが私の中で大きくて、今回のシングルもすごく大事な1枚になりました。

Q-MHzが開けた新しい引き出し

──シングルの3曲目にはQ-MHzさんの提供曲「Courageous-Clap」が収録されています。

わざわざQ-MHzさん全員が参加する打ち合わせを開いていただいて、そこでいろいろお話ししたんです。もちろんカップリング曲をお願いするための打ち合わせだったんですけど、「どういう曲にしようか」みたいな話は全然しなくて(笑)。曲に関しては「自由に作ってください」ということをお伝えして、あとはおそらく私がどういう人間なのかを見ていただいていたんだろうなって。

──これまでの田所さんの持ち曲にはなかった、すごくにぎやかな1曲が完成しましたね。

本当にパレードみたいな曲が届いてビックリしました(笑)。なるほど、こういうアプローチの曲がまだあったなって。歌入れのときに「『We Are The World』のように開けた感じで歌って」「リラックスして歌ってね」と言われたんですけど、けっこうキーが高くて全然リラックスできず……むしろ必死にレコーディングしていました。

──今までにないサウンドで、ライブで再現されるのも楽しみですね。

いろんな楽器が使われているので、「どうやってライブでやるんだろう」とか「セットリストのどこに置くのがいいんだろう」とかけっこう迷ってます(笑)。Q-MHzさんに新しい引き出しを開けてもらった感覚があります。

田所あずさ AZUSA TADOKORO

※特集公開時、本文に誤りがありました。訂正してお詫びします。


2019年11月26日更新