都会って「可能性と行き止まりの象徴」なんですよ
──前作はドラム以外の楽器をすべて真部さんが1人で演奏していましたが、今回はサポートメンバーが参加していますね。
真部 そうなんですよ。ほとんど自分でやってみて、「これ無理だろ」って気付いて(笑)。
西浦 前作ではボロボロになってたからね。
齋藤 今回は前回より全然顔色がよかったです(笑)。
真部 お昼ごはん食べる時間もあったから、ぶくぶく太っちゃいましたけど(笑)。前作である程度ベーシックなフォーマットができたなと思ったので、今回はもうちょっと不確かな要素と言うか、外的要因によるノイズを入れてもいいんじゃないかと思ったんです。それで、ロジカルな考えも感覚的な話もできるキーボーディストの奥野大樹(ルルルルズ)くんと、純粋に才能とセンスだけで勝負しているベーシストのミッチーに手伝ってもらうことにして。前作はほとんど自分が演奏してたから、なるべく宅録っぽくならいように、バンド感をすごく意識して作ってたんですけど、今回はサポートメンバーが入ったことで楽になったと言うか……。
──意識しなくてもバンドっぽくなったと。
真部 そうですね。それに、ライブ経験を積み重ねていく中でさらにバンド感が増してきたので「今回は素直に自分の得意なものをやればいいかな」って気持ちになりました。
──僕は前作を聴いて「みんなが待っていた、みんなが思う真部脩一らしい音楽」という印象を持ちましたが、今作は「集団行動のための曲」「齋藤里菜が歌うべき曲」が増えたように感じました。
西浦 うん。前のは「相対性理論の真部が作った曲」みたいに感じた人が多いかなって思うけど、今回は「集団行動の真部の曲」って感じがすごくする。
真部 サポートメンバーに早い段階から関わってもらったのが大きいかもしれないです。プリプロもバンドでやったし、1stアルバムでバンドらしさを出そうと試行錯誤していたのはなんだったのかってくらい、今は自然とバンドがやれてますね。
齋藤 そうかも。
西浦 初ワンマンで新曲を13曲やるっていう暴挙に出たんですけど、それで結果として新曲をブラッシュアップさせることができたし、バンド感を上げることにもつながりましたよね。
真部 そもそもあの時点でワンマンをやること自体が暴挙だったし(笑)。曲のストックはあったんですけど、それをバンド用にアレンジする時間が足りなかったのでワンマンは大変でした。
西浦 あのときの真部くんはすごかったですね。リハに来るたびにデモが増えてて。湧いて出るのか絞り出したのか知らないけど。
真部 人間、意外とやればできるんですね(笑)。時間がない中で必要に迫られると、得意分野で勝負するしかなくなるので、ワンマンへの準備を通して「自分の得意分野って何だろう」っていうのを再認識できました。
──ちなみにこのタイミングで2枚目を発表することは、前作がリリースされた時期には決まっていたんですか?
真部 決まってましたね。
──前作のリリース時に「集団行動はバンドとしてまだ不完全な状態だからメンバー募集をしている」という話をしていたので、次の作品はメンバーがそろった状態でリリースされるのだろうと思っていたんですが。
齋藤 確かに(笑)。
真部 そう思われるでしょ? でも絶対に必要なプロセスだったんです。それと、この3人でちゃんとシティポップをやっておきたかったというのもあって。自分はずっと“都市の音楽”を作り続けてきたつもりなんですけど、今シティポップという言葉はあえてテーマに掲げるものではないほど当たり前になってきたので、だからこそ1度シティポップを念頭に置いたアルバムを作ってみたかったんです。
──シティポップですか。
真部 僕は中高生まで九州で暮らしてその後に上京したんですけど、十代の頃は故郷を出たくて出たくてしょうがなかったんです。上京って言葉にすごくロマンを感じてたんですね。でも東京に出てきたら「僕はここからもう、どこにも上京できないのか」という気持ちになってしまって。なので僕にとって、都会って「可能性と行き止まりの象徴」なんですよ。
──ああ、わかる気がします。
真部 で、ほかに可能性に行き止まりが見えるものと言えば「失恋」なので、今回のアルバムは失恋ソングで固めようと思って。ワンマンライブのセットリストから失恋ソングをピックアップして、足りない要素を新たに書き足したのがこのアルバムなんです……って、知ってた?
齋藤 はい。
真部 知ってたんだ。
齋藤 知ってましたよ、仲直りしたから(笑)。
真部 感動だなあ。
ビョークに対して「これですわ」って言った女
──前作から今作までの間に、齋藤さんは自分の成長のようなものを感じましたか?
齋藤 最近1stと2ndを聴き比べたんですけど、自分でもだいぶ変わったなって。
西浦 うん、全然違うなって思った。ちょっと僕は感動しましたよ。
齋藤 ありがとうございます。謙助さんに褒められるとちょっと照れる(笑)。
真部 僕は齋藤とバンドを始めた理由について「特徴のないボーカルが自分に刺さった」っていろんなところで言ってるんですけど、特徴のないボーカリストにアーティストエゴが出てきて変容するところが見たかったんですよね。そういう意味で、齋藤は今いい方向にどんどん変わっていますし、僕が好きなボーカリストになってきてるなって感じますね。
──その変容は僕も今作で感じました。
齋藤 1stのときはレコーディングでもライブでも、真部さんやディレクターさんの要望にどうやって応えようってばかり考えてたんですけど、今回は「こういうふうに歌ってみるのはどうですか?」みたいな会話をするようになって、ディレクションに対しても「じゃあ、この感じで歌ったらどうなるんだろう?」って考えられるようになったのが、自分の中でけっこう大きいかなって思います。今までは正直そんなこと全然考えられなかった。「どこをどうしたらこうなる」という当たり前のことすら何もわかってなかったし。
──今作の中で手応えを感じた曲は?
齋藤 一番好きなのは4曲目(「フロンティア」)ですかね。5曲目(「絶対零度」)にはけっこう苦しめられました。最初は歌い方が全然定まらなくて、真部さんにも付いてきてもらってボイトレの先生に相談しに行ったんですよ。そこで歌い方が定まって、真部さんも「齋藤が変わった瞬間が見れた」みたいな感じに言ってくれて。
真部 そのとき僕はダニ・シシリアーノを爆音で流しながら「これ! これにしてください!」ってボイトレの先生に言って、「真部さんちょっと黙っててください」って注意されてました(笑)。
──齋藤さんは「絶対零度」で苦労していたんですね。僕はこの曲を聴いたときに「齋藤さん向きの、齋藤さんのための曲ができた」と感じたんですが。
真部 このボーカルに至るまでにいろいろあったんです。齋藤が「歌い方が全然定まらないんです」と言うので、僕は「じゃあ、参考にならないと思うけどリファレンス送るよ」って言って、ビョークの「Hyperballad」を送ったんですよ。
齋藤 その話やだ(笑)。
真部 そしたら電話がきて、「真部さん、これが私がまさにやりたかったことです!」って言われて。
西浦 えー(笑)。俺それ知らんかった。
齋藤 めっちゃ恥ずかしい!
真部 「なんて大物感なんだ、やっぱりいいフロントマンを選んだな」って思いましたね。
西浦 齋藤里菜、目指すはビョークか。大志を抱くことは悪いことじゃないですよ?
真部 ビョークに対して「これですわ」って言った女。
齋藤 やめてくださいって。超恥ずかしいじゃないですか(笑)。
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歌うこと、それは自分のバンドだからできる強権発動
- 集団行動「充分未来」
- 2018年2月7日発売 / CONNECTONE
-
[CD]
2160円 / VICL-64912
- 収録曲
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- 会って話そう
- 充分未来
- 春
- フロンティア
- 絶対零度
- 鳴り止まない
- モンド
- オシャカ
ツアー情報
- 集団行動の単独公演「充分未来ツアー」
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- 2018年3月16日(金)大阪府 Music Club JANUS
- 2018年3月22日(木)東京都 WWW X
- 集団行動 第二次メンバー募集のお知らせ
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2017年4月から9月末まで担当パート不問で行ったメンバー募集に続き、集団行動は現在“女性ボーカリスト”のみ追加で募集中。
締め切り:2018年2月15日(木)24:00
- 集団行動(シュウダンコウドウ)
- 相対性理論の元メンバーである真部脩一(G)、西浦謙助(Dr)と、女性アイドルオーディション「ミスiD2016」ファイナリストの齋藤里菜(Vo)によって2017年に結成。同年4月に東京・TSUTAYA O-EASTで行われたイベントにてお披露目ライブを行い、6月にビクターエンタテインメント内のレーベル・CONNECTONEよりメジャーデビューアルバム「集団行動」をリリースした。2月7日に2ndアルバム「充分未来」を発売。