ナタリー PowerPush - スネオヘアー

時代に寄せないセルフプロデュース作「8 エイト」

ツアーメンバーもアルバム制作段階から時間を共有

スネオヘアー

──一部の楽曲では、松江潤さんがサウンドプロデュース的な形で参加されているんですよね。

「ブライトン」と「Love & C」で。ほかの曲でもギターは弾いてもらってるんです。「if」では泣き泣きの味のあるギターを弾いてくれて。アレンジを含めたデモが僕のほうでできあがっちゃってるので、「ブライトン」と「Love & C」の2曲については、演奏メンバーも含めて考えてもらっています。

──それはあえて客観性を入れるためにという判断で?

はい。ちょうどレコーディングセッションの中間ぐらいにやってもらったんですけど、やっぱりセルフプロデュースで自分だけで考えてると、全体像が見えにくくなるんですよ。だからちょっと俯瞰して見たかったというか。あとは単純に自分だけが忙しいのはヤだなと(笑)。何もしなくていい曲があるように。

──中でも松江さんにお願いしたというのは、やはり長い付き合いから?

そうですね。あと、アルバムを出したあと「じゃあツアーをやりましょう」となったときに、やっぱりレコーディングに関わったメンバーじゃないと、さびしさがあるかなと思って。いつもライブに参加してもらっている松江さんと、アルバム制作段階から時間を共有しながらやったほうが自然だよなあっていう。特にこの2曲はバンド的な曲なので、松江さんなら間違いないかなと。

「スネオヘアー」の看板を捨てた宅録盤を

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──10周年を経て、この作品で音楽家としての11年目がスタートしたわけですけど、これからのスネオヘアーの音楽をどう考えていますか?

自分で長く聴いていたいものというのが大前提ですね。日常の風景を自分なりに切り取って音楽にするんですけど……僕が日常の中から切り取るものは、外国に行っていい風景を写真に撮るような素敵なアングルではないんですよ、明らかに。「ああ、俺も昨日見た」「俺もさっきやった」ぐらいの視点にフォーカスして、それを音楽として形にしたいんです。スタンダードのように長く聴かれるものを目指してますね、今は。

──その一方で、宅録用の音楽はどういうバランスで考えてるんですか? 「8 エイト」も十分にスネオさん自身の“個”の濃度が高いアルバムだと思うんですけど、これともまた違ったものを?

実は今年の秋頃にはひとつ出したいと思ってるんです。スネオヘアーという名前で11年、インディーズの頃を合わせると14年ぐらいやってきて、今ではスネオも渡辺健二(本名)もほとんど同軸のようになってはきましたけど、それでも自分の中に「スネオヘアー」のイメージってのがあるんですよ。それをわざわざ打ち壊してまで新しいことをやるもんじゃないなと最近は思っていて。スネオヘアーはスネオヘアーで「あの人は変わらずにやってるね」と言われるような活動を続けたいんです。宅録盤はすごく乱暴に、「あとで後悔するかもしれないけど、今やりたいんだから先のことは知らねえ」ぐらいのものをやりたいと考えていて。無責任だけど全部自分に返ってくる、より個人的な音楽ですね。

──やっぱり「スネオヘアー」という看板は大きいでしょうし、あるときはそれが邪魔になることもある?

そうですね。宅録は無名のところからのスタートなので「何言われても知らねえ!」っていう(笑)。無名の新人として。

──無名の新人と14年選手を同時進行でやるというのは面白そうですね。

今回のアルバムがどう聴かれるのかも楽しみですし、そのあとは宅録をどうにかして形にするというのが目下の目標ですね。

スネオヘアー
ニューアルバム「8 エイト」/ 2013年5月22日発売 / スターチャイルド
初回限定盤[CD+DVD] 3300円 / KICS-91902
通常盤 [CD] 3000円 / KICS-1902
CD収録曲
  1. ブライトン
  2. ロードムービー
  3. slow dance -8ver.-
  4. Love & C
  5. nani o naiteruno
  6. one two sleep
  7. stay
  8. 8
  9. ユニバース
  10. if
  11. 素直になれそう
  12. game over death
  13. 君となら
初回限定盤DVD ビデオクリップ収録曲
  • game over death
  • slow dance -8ver.-
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スネオヘアー

1971年新潟生まれのシンガーソングライター、渡辺健二によるソロプロジェクト。1999年にカフェオレーベルからアルバム「SUN!NEO!AIR!」を発表し、2002年5月にはシングル「アイボリー」でメジャーデビューを果たした。その後多くのヒットチューンを含むシングル、アルバムを多数リリースしている。その他、YUKI、坂本真綾、新垣結衣、THE COLLECTORSへの楽曲提供や、U.N.O.BANDのプロデュースなどでも幅広く活躍。2010年にはアニメ「荒川アンダーザブリッジ」のエンディングテーマ「逆様ブリッジ」でアニメファンからも大きな注目を集め、2012年10月にはおよそ3年ぶりとなるニューシングル「slow dance」を発表した。デビュー11年目のスタートを切る2013年5月22日に通算8枚目のオリジナルアルバム「8 エイト」をリリース。