札幌でひさびさのレコーディング合宿

──サウンドはシンプルな構造ながら、かなり細かく作り込んでますよね。ギターの重なり合い方やリバーブのかかり具合、一瞬しか出てこないシンセなど、すみずみまで聴くといろんなアイデアが盛り込まれているな、という発見があって。サウンド面でこれまでと作り方を変えたところなどはありますか？

今回はひさびさにレコーディング合宿みたいなことがやりたくて。去年の夏ぐらいかな？ ある方の紹介で札幌のスタジオに一度遊びに行ったんです。そこがすごくいいスタジオで「アルバムセッションのときはぜひ」ってお話して、それで今年の2月ぐらいに。短い時間ですけど、すごくよかったですよ。例えば……10曲目の「if」はここで歌入れをやったり、ドラム叩いたり、ベースを弾いたりしましたね。機材なんて東京のほうが全然よかったりするし、お金だって余計に予算かかっちゃうんですけどね。しかもすげえ雪だし（笑）。

──去年、真心ブラザーズにもお話を聞いたんですけど（参照：ナタリー [Power Push] 真心ブラザーズ×椎名軽穂「Keep on traveling」鼎談 ）、真心の2人も札幌のスタジオがよかったと言ってました。

あ、確か同じスタジオです。

──真心は「空気が乾いてるから、木でできたギターやドラムの皮が東京よりもよく鳴る」と。

あの2人が言うなら間違いないです（笑）。ドラムの音は本当にすごくいいものが録れました。そこは天井が高くって、リバーブも天然の鳴りで使ってるんです。ああいう天井の高いスタジオは、都内では今だんだん少なくなっているので。アルバム全体のミックスの方向性も、あのスタジオの鳴りを基準にして決めたところもあるので。音の違いもありますけど、単純に雰囲気がよかったですね。ごはんもおいしかったし（笑）。

「game over death」は宅録用に作ってる音楽に近い

──録り下ろしの新曲からは「game over death」のビデオクリップが制作されていますけど、アルバムのリード的な扱いとしてはなかなか思い切ったセレクトだなと思いました。アルバム全体のムードが伝わりやすい曲かなとは思いましたけど、シングル曲のような取っつきやすさはないので（笑）。

イントロもすごく長いし、2コードしか弾いてないですから。今までだったら、まあ選ばなかったかもしれないですね。ちょっとインディーロックみたいな。

──キャリアのある40代のアーティストが、メジャー11年目にしてインディー感のあるアルバムを作って、それが堀江由衣さんやももいろクローバーZもいるスターチャイルドから出ているというのも面白いですけど。

レーベルがパンクですからね（笑）。まあこの曲は映像で見せたいという案が上がったんです。

──いわゆる「疾走感のあるギターロック」というイメージとは趣の異なる楽曲ですよね。

これは宅録用に作ってる音楽に近いかもしれないですね。実はこの曲が、昨年末に始めたアルバムセッションの最初に録ったものなんですよ。

──この曲が発端になっていると。そういう意味では、アルバムの方向性を示すのに最適な1曲かもしれないですね。

そうですね。ここからだんだん全体像を作っていったので。