ナタリー PowerPush - スネオヘアー
ベストアルバム発売記念 誕生10周年を振り返る
自分だけは自分の音楽を評価してやりたいと思って
──エピックからデビューする前に、別にメジャーデビューの話があってダメになったりとかして、ちょっと疑心暗鬼だったところもあったそうですが。
年齢もそんなに若くないですし、インディーズのときも自分で営業とか行ったりしてたんで、レーベルの運営とか流通についてもなんとなくわかってるんですよね。もちろん規模は全然違いますし、スタッフも数が全然違ってくるんで一概には比べられないんですけど。あの、とにかく全然夢を見てないっていうか。
──夢を見てないっていうのは?
それはもう僕自身が、ですね。後ろ向きでしたよね。でも「何がやりたいの?」って自分で考えたときに、やっぱり曲作るの好きだし録音するの好きだし。インディーズの3年目の後期にはやっぱり「いかに届けるか」みたいなことになってくるんですよね。最初そういうのは全然感じてなかったけど、音楽ってコミュニケーションとグルーヴで成立するんで。なので「やりたいことっていうのはやれてるよな」みたいな気持ちもあって。お客さん少ないけどスネオ目当てで来てくれて……うん、初めてグルーヴしてきたっていうか。逆にお客さんからパワーもらったぐらいの感じで。あんまり人とつながったりするのはなんか生臭くて好きじゃなかったんですよ。もっとサバサバ、飄々としてたいっていうか。だからどっかで音楽っていうもの自体に救われたというか。
──その感覚の変化がメジャーデビューにつながったんでしょうか。
なんて言うか、インディーズが盛り上がってきた時期に、ジャカジャカジャカジャカした元気のいい曲みたいな、そういうジャンルはもてはやされたりインディーズでも売れたりして、メジャーのレーベルも飛びついてきたりするわけですけど。自分の場合はそこにも全然ハマってこなかったんですね。自分は非常にこう、真っ当なって言ったらあれですけど、まあ普通な「インディーズでやることにこだわる意味もないんじゃない?」っていう音楽をやっていて。そんなに宅録然としたものもやってなかったので、気持ちとしてはそんなにひねくれてなかったんですよね。
──だったら、メジャーでやるっていう手もひとつあるんじゃないか、と。
そうですね。やっぱり音楽のことをずっと考えて生きて、それで生活する人になりたいっていうのは思いましたね。自分がやってる音楽には自信があったから、誰も評価してくんないんだったら自分だけ評価してやろうと思って。自分が自分のことを評価してなかったらもうやってる意味がないっていうか。
ドラフト外でのメジャーデビュー
──2002年に「アイボリー」でメジャーデビューされるわけですが、ご自身はどういうことを期待していましたか。
とにかく大変だなって思いましたね。それでほんとに何かが変わるって全然期待してなくて。もう、エピック的にはこの年の、例えばドラフトで言うと……ドラフト外だったんですよ(笑)。
──そうですか? ちゃんと当時のコンベンションライブにも出演していましたよね。
ええ、それはアー担が駆け出しA&Rで、熱血漢だったんでやってくれたんですけど。でも、いつもやっぱり後ろ向きだったし、あと31歳だったんで。まあどこまで行けるかなみたいな、ほんと毎回毎回勝負だったですね。
──じゃあその時点でもあんまり描いてる夢とかもなく?
いや、もちろんチャートにガキーン! と食い込んで、うわーってモテて、いい車乗って、みたいな(笑)。
──ありましたよね、やっぱりそういうの(笑)。
ふふふ。
──でも私、この当時お会いしたときの印象としては、すごい人見知り感みたいなものも感じつつ、心に野望というか企てみたいなものを持ってる人なんだろうなという風には思いましたけどね。
ああ、ちょっと腹黒いヤツだなって(笑)。そりゃそうですよ、31ですもん。でもある部分はドライなんですけど、それだけだったらやっぱりデビューさせてくれなかったと思うんですよね。本気で、それでも売れたいと思ってるところで採ってくれたんじゃないかなと勝手に思ってるんです。
──なるほどね。そこで、デビュー1年目には、アルバム「スネスタイル」をリリースしてるんですけど。
でもまだ、レコーディングしてプロモーションしてリリースがあって、その後ライブ、みたいなお決まりの流れも全然体に入ってなくて。アー担がやっぱり熱血漢だったんで、「ケンちゃんこれコケたら後ねえからな」みたいな感じで、「ああ、曲できるかな?」みたいな、毎回毎回デッドヒートでした、ほんとに。
──リード曲が「自問自答」っていうのもすごいですよね。
「思いっきり悩んでんじゃねえか!」みたいな(笑)。迷うことに対してはすごく肯定的だったっていうか。「迷っているっていうのでいいんじゃない?」「わかんないって言っていいんじゃない?」っていう気持ちはありましたね。モヤモヤしたような気持ちだったり、うまく言えない気持ちだから曲にしたいなって思うんで。そうすると抽象的にもなってきますよね。「もっと強いメッセージでいいんじゃないか」なんて意見もありましたけど。でも「うっせえ!」と思ってたから(笑)。変わらずにやってましたけどね。
──あと、ちょっとコミカルな打ち出し方っていうのにもやっぱり助けられてましたよね。
そうですね。まあ、こういう名前なんで。
──スネッパくんっていましたよね?
スネッパくん、死んじゃったんですけどね、ええ、そういうことになったりしましたけど。なんかまあ、あまり実像が見えない感じがいいなって思ってました。
※スネッパ=メジャーデビュー初期のCDジャケットに登場していたイラストキャラクター
DISC 1
- アイボリー
- 訳も知らないで
- Over the River
- 現在位置 ~You are here~
- 自問自答
- ウグイス (album mix version)
- セイコウトウテイ
- ピント
- スピード
- 冬の翼
- ヒコウ
- ストライク
- 会話
- フォーク
DISC 2
- ワルツ
- 悲しみロックフェスティバル (album version)
- フューチャー
- headphone music
- スプリット
- ターミナル
- やさしいうた
- スカート
- 太陽
- 気まぐれな季節のせいで
- 言いたいことはいつも
- 共犯者
- バースデー
- スターマイン
- ロデオ
- ナロウカーヴ
DISC 3 (初回盤のみ)
- JET
- 打ち上げ花火
- The end of despair
- 空も忙しい
- ランドマーク
- happy end (feat. azumi)
- NO.1
- ちっぽけな感傷
スネオヘアー
1971年新潟生まれのシンガーソングライター、渡辺健二によるソロプロジェクト。1999年にカフェオレーベルからアルバム「SUN!NEO!AIR!」をリリースし、2002年5月にシングル「アイボリー」でメジャーデビュー。その後多くのヒットチューンを含むシングル、アルバムを多数リリースしている。その他、YUKI、新垣結衣、ザ・コレクターズへの楽曲提供や、U.N.O.BANDのプロデュースなどでも幅広く活躍。2009年9月には、10周年記念ベストアルバム「ベスト」をリリース。