自分にとってドラえもんはどんな存在なんだろう?
──小川さんが作曲し、リードボーカルを務める「Blue」は、どのように生まれたんですか?
小川 「Blue」はまさに「ドラえもん」にインスパイアされて、勢いのまま作った曲です。「自分にとってドラえもんはどんな存在なんだろう?」というところから制作が始まりました。「ドラえもん」の作中でキャラクターたちが成長していき、できることが1つひとつ増えていく。ドラえもんはその手助けをしてくれていると思うんです。それを自分に置き換えると、例えば自転車乗れるようになったとか、字を書けるようになったとか……そういう成長幅を大人になって見つけるのは難しいと感じていたんですけど、今からでもそういう変化はいくらでもできるし、見つけられるんじゃないかという思いを持って、この曲を書きました。
──歌も素晴らしくて、最終パートの渾身のファルセットが最高です。
小川 ありがとうございます。一発でやりました、とか言いたいんですけど、何回か録ってます(笑)。せっかくなら一番いい歌を入れたいという気持ちがあるので、しっかり歌詞と向き合いながら、咀嚼して、マイクに向かって言葉を入れていったという感じです。小川ボーカルの、新たな代表曲ができた感じがします。
──小川さんのメロディを受け取って、片岡さんが作詞をしたんですね。
片岡 そうです。映画では陸上の人々と海底の人々という2つの種族が描かれているんですが、「Honto」という楽曲を逆側から見たら「Blue」みたいな側面もあるなと思って、それを言語化して歌詞にしていきました。「Honto」が海の底の中で考えているようなイメージなら、「Blue」は地上にいながら考えている人のイメージです。1個の事象に対して、右から見るのか左から見るのかで、見え方が違うということですね。
“らしくない”ほうをやろう
──「ルサンチマンの揺籠」も小川さんが作曲を手がけています。小川さんと片岡さんでボーカルを分け合う曲になっていますね。
小川 イントロのピアノのフレーズを、脈が速くなって心臓が「ドキッ!」となる一瞬を切り取ったものにしたいなと思ったところから制作が始まりました。荒れているけどリズミカルではある、みたいな。「そういうピアノに合うリズムはどんなものだろう?」というところからアレンジを作っていきましたね。歌割に関しては片岡さんと相談しながら、パズルのように決めていきました。
──これは「ドラえもん」のイメージとは違うところから生まれた曲ですよね?
小川 インスパイアされて作ったわけではないんですけど、1つの作品に収まるということは、何かがあるんでしょうね。「ドラえもん」に寄せたわけではなくても、しっかりとシングルのピースにハマるように作っていったところはあります。
──ピアノもそうですけど、小川さんの荒々しく攻撃的に言葉を投げつける感じのボーカルがすごく新鮮でした。
小川 それは片岡さんディレクションですね。
片岡 「行け行け!」って。
小川 「もうちょっとくれ」って、何回も言われました(笑)。最初はちょっと置きに行ったというか、言葉をリズムに乗せてしっかり歌おうと思ってたんですけど、やっぱり僕が最初にピアノで感じた、脈が速くなる瞬間を声で表現したくて、そういう荒々しい歌い方に挑戦してみました。
片岡 sumikaが毎回大事にしているのは、「やったことないことをやる」なので。この曲も、たぶん僕とおがりんが逆のパートを歌ったほうが歌いやすいんですよ。速い譜割りは僕のほうが得意だし。
小川 速いと、噛んじゃうので(笑)。
片岡 そこで「らしくないほうをやろう」というやり方をしたのは、今までsumikaを好きで作品を買ってくださっている方に、まだ知らないsumikaを聴いてもらうべきだなと思うからなんですね。この曲のデモが上がってきたときに、すごく可能性を秘めた曲だと思ったんですよ。演奏に参加している人もこの4曲の中で一番少ないし、ヒューマングルーヴというか、そういったものを入れやすい楽曲だなと感じた。だったらなおさら、ボーカルがお互い普段やらないことをやったほうがより新しさが出るんじゃないかという期待を込めて挑戦してみたら、おがりんがそれにばっちり応えてくれて。いい感じの曲に着地しました。
──荒井さんのドラムもヒューマングルーヴが出ています。
荒井 この曲、ずーっとオルタネイト(左右の手足を1打ずつ交互に打つパターン)で刻んでいるので、油断すると、自分がどういう動作をしているのかがわからなくなるんですよ。
──速くて精密なマシーン的なリズム。そこがカッコいいですけど。
荒井 こういう楽曲なので、ビートとしては多少揺れたりしても味になると思ったんですけれども、可能な限りクリックにぴったり合わせられるようにしました。機械みたいなリズムを目指すことが、この楽曲のよさにつながっていくと思ったので、カッチリ叩きましたね。結果、ゲシュタルト崩壊しそうでした(笑)。
片岡 Aメロ、Bメロという概念がないもんね。
荒井 2バース目の「すごいよ努力してる天才」のところだけ“決め”が入るんですけど、Aメロ、Bメロの区分けが難しい曲だからこそ、決めが異常に気持ちいい。スパーン!といくので、そこで「よっしゃ!」と思って。あとはずっとハムスターのように、ひたすら車輪の中を回り続ける(笑)。
片岡 早めにご褒美が出てきて、そのあと1回も出てこない(笑)。
荒井 あと1回ぐらい、後半にもご褒美が欲しいなと思うんですけど、そこだけなんですよ(笑)。
「ありがとう」をないがしろにして、上ばかり見ているのも違う
──「ルサンチマンの揺籠」も作詞は片岡さんです。この曲の歌詞はレトリックを駆使したトリッキーな印象が強いですが、何をテーマにした曲ですか?
片岡 ルサンチマン(=恨み、嫉妬)ということで、嫉妬のような感情とどう向き合うか、ということですね。SNSを見れば自分より上だと思われる人がたくさんいて、数値化もされている。人と比較することがすぐできてしまうので、生きづらい時代だなとは思いますけど、誰かと比べて自分が何か変わるわけではないし、自分は自分のやれることをやるしかない。そういうことを僕ら自身も思っていて。
──なるほど。
片岡 sumikaよりも数字で上を行っていたり、認知が上のアーティストも無限にいるけど、それだけで自分たちを過小評価もしたくない。sumikaを大事に思ってくれている人は当然いるわけだから、そういう方に対しては正しく「ありがとうございます」と伝えたいし、その人たちへの感謝の気持ちをないがしろにして、上ばかり見ているのも違うなと思う。ちゃんと人と目線を合わせて何かを作っていくことが、すごく大事な時代だと思う。そんなことを考えながら作った曲です。
──だから最後が「折れていない、俺でいたい」というフレーズで終わる。
片岡 これ、バットと掛けているんですよ。2バース目に野球のくだりが出てくるので。
──ああ、「さながら5050 投げても打っちゃう」って、あのメジャーリーガーですね。
片岡 誰とは言いませんけども(笑)。どの世界にも、そういう天才がどんどん出てきますから。
──そこと比べても仕方がない。sumikaらしいメッセージだと思います。「Honto」から始まって「ルサンチマンの揺籠」に至る……「ドラえもん」の世界観にインスパイアされつつ、1つのまとまりを感じるシングルだと思います。
片岡 sumikaらしさはあると思いますね。「ドラえもん盤」の5曲目に入っている「Honto(TV Size)」には、ドラえもん(CV:水田わさび)の声を入れていただいて。アフレコに立ち会わせていただいたんですけど、「ドラえもんが『sumika』って言ってくれてる!」って、めちゃくちゃ感動しました。アートワークも含めて、大好きな「ドラえもん」の映画主題歌だからこそ楽しんで作れた作品になりました。
──4月からは新しいツアー「sumika Live Tour 2026『Unique』」が始まります。どんな思いで回るツアーになりそうですか?
片岡 今の時代、チケットを買ってライブに来るという方は、多数派ではないだろうと思うんです。みんなと同じであることが生きやすい世の中で、少数派のアクションを取れていることを誇りに感じてほしいという気持ちがまずあって。自分たちもバンドマンとして生きていくという選択は、少数派というか、最初に言ったように正解とは思えないことかもしれないけど、「正解なんていいから、本当をしよう」なんですよね。「Unique」は直訳すると“独特”という意味になります。自分たちは独自の考え方でここまで歩んできたし、「自分で選んできたものがあるんだ」ということをお互い肯定し合いながら、称え合いながら、進めていけるツアーになったらいいなと思っています。
公演情報
sumika Live Tour 2026「Unique」
- 2026年4月4日(土)千葉県 市川市文化会館
- 2026年4月11日(土)福島県 いわき芸術文化交流館アリオス アルパイン大ホール
- 2026年4月12日(日)宮城県 東京エレクトロンホール宮城
- 2026年4月17日(金)石川県 金沢歌劇座
- 2026年4月19日(日)長野県 キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館)
- 2026年4月24日(金)高知県 高知県立県民文化ホール オレンジホール
- 2026年4月25日(土)愛媛県 松山市民会館 大ホール
- 2026年4月28日(火)愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
- 2026年4月29日(水)愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
- 2026年5月9日(土)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
- 2026年5月10日(日)北海道 旭川市民文化会館 大ホール
- 2026年5月15日(金)岡山県 倉敷市民会館
- 2026年5月16日(土)広島県 広島文化学園HGBホール
- 2026年5月20日(水)大阪府 フェスティバルホール
- 2026年5月21日(木)大阪府 フェスティバルホール
- 2026年5月29日(金)埼玉県 大宮ソニックシティ 大ホール
- 2026年5月31日(日)静岡県 アクトシティ浜松 大ホール
- 2026年6月6日(土)奈良県 なら100年会館 大ホール
- 2026年6月7日(日)京都府 ロームシアター京都
- 2026年6月12日(金)群馬県 高崎芸術劇場 大劇場
- 2026年6月13日(土)茨城県 ザ・ヒロサワ・シティ会館(茨城県立県民文化センター)
- 2026年6月20日(土)大分県 iichikoグランシアタ
- 2026年6月21日(日)福岡県 福岡サンパレス
- 2026年6月27日(土)兵庫県 アクリエひめじ(姫路市文化コンベンションセンター)
- 2026年6月28日(日)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
- 2026年7月3日(金)福岡県 福岡サンパレス
- 2026年7月4日(土)福岡県 福岡サンパレス
- 2026年7月23日(木)東京都 日本武道館
- 2026年7月24日(金)東京都 日本武道館
プロフィール
sumika(スミカ)
2013年5月に結成。2017年にバンド初のフルアルバム「Familia」をリリースし、2018年には東京・日本武道館公演2DAYSを含むホールツアーを開催。その後も映画「君の膵臓をたべたい」「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング」「ぐらんぶる」、テレビドラマ「おっさんずラブ-in the sky-」、テレビアニメ「ヲタクに恋は難しい」「MIX」「美少年探偵団」「カッコウの許嫁」など、数々のタイアップソングを手がけてお茶の間に自分たちの音楽を広げた。2022年に結成10周年を迎え、9月に4thアルバム「For.」を発表。2023年5月に神奈川・横浜スタジアムでアニバーサリーライブを開催した。2025年3月にアルバム「Vermillion's」を発表。2026年2月に「映画ドラえもん 新・のび太の海底鬼岩城」の主題歌「Honto」を表題曲としたシングルをリリースし、4月から7月にかけてライブツアー「sumika Live Tour 2026『Unique』」を行う。





