sumikaが2ndフルアルバム「Chime」を完成させた。本作にはフジテレビ系ノイタミナ枠のテレビアニメ「ヲタクに恋は難しい」のオープニングテーマ「フィクション」や劇場アニメ「君の膵臓をたべたい」の主題歌「春夏秋冬」、「JR SKISKI 2018-2019」のキャンペーンテーマソング「ホワイトマーチ」といったタイアップ曲を多数収録。さらに吉澤嘉代子がゲストボーカリストとして参加した「あの手、この手」やジャジーな「Strawberry Fields」といった新曲も収められ、現在の彼らのモードが強く反映された作品に仕上がっている。
音楽ナタリーでは、メンバー4人へインタビューを実施。「Chime」の制作プロセス、ライブに対する意識の変化などについて語ってもらった。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 後藤壮太郎
設計図に向かって作っていった
──2ndアルバム「Chime」は前作「Familia」以降のsumikaの軌跡と現在のモードがしっかりと表現されたアルバムだと思いますが、皆さんの手応えはどうですか?
片岡健太(Vo, G) まさしくそういうアルバムだなと思います。もともと持っていたsumikaのよさを大事にしながら、今やりたいこともやれたというか。ライブ感を持って作れたアルバムですね。
黒田隼之介(G, Cho) 作ってる最中は目の前のことに必死で、ちゃんとできるか不安だったんです。でも、本当にいいアルバムになったと思うし、曲もうまく並べることができて。既存の曲も違う聴こえ方をすると思うし、新たな魅力にも気付いてもらえるんじゃないかなと。
小川貴之(Key, Cho) 今回のアルバムには設計図があったというか。最初の段階で曲順をある程度決めておいて、「ここにこういう感じの曲を入れよう」という作り方だったんです。1曲ずつレコーディングすることも多くて、曲が仕上がって、ピースが埋まるたびにアルバムへの期待値が高くなって。「完成したとき、どんな姿を見せてくれるんだろう?」とワクワクしながら制作できたし、楽しかったですね。自分たちが持っているものをしっかり出せたし、音楽的に全力を尽くせたのもよかったなって。
荒井智之(Dr, Cho) 各メンバーのこだわり、主張もいろんなところに出ていて。バンドらしい1枚になった気がします。
──メンバー個々のアイデアを反映させようという意識も?
荒井 制作のやり方がいつもと少し違ってたんですよね。今まではレコーディングの前に4人でじっくり話す時間を作って、「こういう雰囲気の曲にしよう」と決めることが多かったんですが、今回はそういう時間がなかなか取れなかったんです。その代わり、まずデモの音源を1人ひとりが咀嚼しながら、「こういうアレンジがいいだろうな」とイメージしていて。その状態でレコーディングに突入したから、各々が考えていることが自然と出てきたのかなと。
片岡 2018年はずっとライブをやってたんですよ。5月から7月にかけてホールツアーがあって、夏にはイベントに出演して、10月からはライブハウスツアーを回って。その間、制作も並行してやっていたので、スケジュールがかなりタイトだったんですよね。もちろん丁寧に作っていたけど、以前のように4人でミーティングする時間が取りづらかったんです。なので先にデモ音源を作って、メンバーそれぞれがイメージを持ってレコーディングして。意見が違うこともあったけど、それはそれで面白かったし、言葉にしなくても“あ・うん”の呼吸で自然に一致することもあって。
メンバーを家に招いてタイトルをプレゼン
片岡 最初にアルバムのタイトルを決めたのもよかったと思います。制作に入る前に「次のアルバムのタイトルは『Chime』というのはどうでしょう?」という話をしたんですよ。
──どうして「Chime」だったんですか?
片岡 前作は「Familia」というタイトルだったんですが、sumikaの活動スタンス、基本的なマインドとして、「sumikaというバンドを“おかえり”“ただいま”と言える空間にしたい」というのがあって。「僕らはいつもここであなたの帰りを待ってるよ」という場所を作りたいというか。その根底は今も変わってないんですが、今回のアルバムでは、自分たちの足で歩いていって、sumikaに触れてくれた人たちの家のチャイムを押したいと思ったんですよね。その理由は、制作やライブを通してメンバーの結束が強くなったこともあるし、あとはチーム全体のつながりもよくなったのもあって。sumikaに足りないところ、弱いところを助けてもらってきて、チームがより誇れるものになったというのかな。みんなのおかげでネガティブな弱さがなくなった自覚もあるし、「今だったら、自分たちの足で進んでいけるな」っていう。
──そのことをまずメンバーに伝える必要があった、と。
片岡 そうですね。我が家にメンバーを招いて、タイトルをプレゼンする機会を設けまして。妙に掃除をちゃんとやったり(笑)。
一同 (笑)。
片岡 普段はそんなことしないんですけど、みんなに「着いたらピンポーンして」って伝えてたんですよ。で、みんな集まったところで「タイトルは『Chime』でいこう思ってます」と発表して。このタイトルに決まったときは気持ちよかったです(笑)。
小川 「Familia」のときもそうだったんですけど、(片岡は)ちゃんと気持ちを込めてプレゼンしてくれるんですよ。今回の「Chime」もしっくり来たし、その時点でアルバムの大枠が見えてきて。すぐに「じゃあ、どういう曲を入れる?」という話し合いになったんですけど、それもすごく楽しかったです。
黒田 だいぶ前のデモ音源をみんなで聴き直したり。
片岡 そのうえで「足りない曲って、どういうのだろう?」という話もして。そこから、さっきも話に出ていた設計図が見えてきたんですよね。「4曲目にこういう曲を入れよう」とか「6曲目にこういう感じの曲を入れて、『秘密』につなげたいね」とか。制作中に「タイトルが『Chime』だから……」という話をしていたわけではないけど、みんなの頭の中にこのタイトルがあったことで、最後まで着地点がズレなかったんだと思います。
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