sumika|結成5周年で描く新たな“フィクション”

4人だけで“世界旅行”した「ペルソナ・プロムナード」

──3曲目「ペルソナ・プロムナード」には「インフルエンス」「シェア」「バズ」といったSNSを彷彿とさせるワードが並びます。

片岡 これは「Fiction e.p」の4曲の中で最後にできた曲なんです。メンバー全員でファミレスに集まって「残り1曲、何書こっかあ」って会議してて。SNSっていい作用もあると思うんですけど、マイナスな作用のほうがすごいベクトルで働いてると思うんです。メンバー加入のニュースは全然広まらないのに、解散のニュースのほうが圧倒的に広がる、みたいな。

──そうですね。

片岡 なんでそんな負のループのほうが好きなんだろうなって……だから今一度、「ホント最高だよね!」みたいな、楽しくてリアルなバズを起こしたいなあと思ったんです。これはライブをイメージして作った曲でもあるので、お客さんにはSNS上じゃなくてライブ会場で何かを思ってそれを消化してほしい。出会うきっかけはネットを介してで全然いいけど、お客さん同士で直接ライブ会場で知り合ったうえで、その人たちと人生を編んでいってほしい、っていう気持ちもあります。

──畳み掛けるようなボーカルとアッパーな曲調が特徴的で、ライブでも盛り上がりそうですね。小川さんのピアノもかなり遊んでいて。

小川貴之(Key, Cho)

小川 いやー、大変なことになってますね。僕は曲を作るときにいつも“3人でのsumika”と“4人でのsumika”を考えていて。

──3人というのは片岡さん、黒田さん、荒井さんで、そこに小川さんを加えたのが4人ですね。

小川 そうです。3人だったらこういう曲になるんだろうな、でも4人だからこのラインを超えていかなきゃいけないって考えながら作ってます。“僕が入ったからこそ行ける場所”に行けないと、自分自身の意味がない! そういうプレッシャーと言うか、目標をいつも掲げてるんです。

──そうだったんですね。

小川 この曲はみんなでスタジオに入って、大爆笑しながらやりたいことを詰め込んだ曲で。今聴いても「ああ、面白いことしたなあ」って思えるような楽曲になりました。

黒田 この曲のレコーディングが一番楽しかったですね。いろいろ溜まっていたものを、ここで全部出し切れたので!(笑)

小川 隼ちゃん、なんかすごい溜まってんだよなあ……(笑)。

黒田 みんなでスタジオに入って「ああしよう、こうしよう」ってやりとりしたのも楽しかったし、「これやったらウケるよねー」って言いながらやっちゃうのも面白かったです。特に2番のAメロ!

片岡 高速リフのところね。がんばりすぎて火が出るかと思った。

黒田 あはは(笑)。途中から「ここは中国っぽく!」とか、「ここはスイスっぽく!」とか言いながら作ってましたよね。

小川 「世界旅行しよう!」って(笑)。

──「チェスターコパーポット」もそうですけど、sumikaの攻めた曲には異国情緒感が漂いますね。

片岡 途端に国外逃亡を図るっていう(笑)。この曲ではゲストメンバーを入れずに、初めて4人だけでスタジオに入ったんです。だから俺とか隼ちゃんががんばってベースを弾きながらセッションして曲を作るっていう(笑)。

荒井智之(Dr, Cho)

荒井 楽しかったですねえ、ホントに。アレンジの制限を決めなかったから、今までで一番いろんな案が出た曲じゃないかなあ。その中で「踊らせたい」というテーマが浮かんだので、だったらもう世界のいろんな踊りのリズムを入れちゃうかって話をして。結果、詰め込みすぎて爆発しそうになったのでシェイプアップしたんですけどね(笑)。ところどころにツイスト、サルサ、アイリッシュの香りが残っていて、いいバランスに着地させられたと思います。

「いいのに」は恋に悩む男子高校生に書いた曲

──J-WAVEのキャンペーンソングとして書き下ろした「いいのに」は、6年前のデモから作り上げた曲です。

片岡 僕が高校の講師の仕事をやっていたときに、男子生徒から相談を受けたことがあったんです。「好きな子がいるんだけど、その子には好きな子がいる。どうしよう?」って。それに対して「好きだって言えばいいじゃん」って答えたら、「好きな人がいるから言えませんよ!」って返されて「そうかい」ってなって。

──甘酸っぱいエピソードですね。

片岡 2人で悩んだあげく、「じゃあ僕が曲作るよ」ってその子に言ったんです。それで、その子が歌えるような曲をと作ったのが、「いいのに」の原型です。

──「『伝言歌』」もそうですが、片岡さんはよく人に曲を作りますね。

片岡 あははは(笑)。何かにつけて理由がほしいんだと思います。

──歌詞には好きな人とグループでカラオケに行くという青春感のあるシチュエーションが描かれているので、曲の原型ができたエピソードを聞いて納得しました。

片岡健太(Vo, G)

片岡 だからこの曲はいろんな方に使ってほしいと言うか、歌ってほしいんですよ。カラオケに行ってこの曲を歌って、何かが起こったらいいのに。

小川 おお!

黒田 いただきましたっ!(笑)

片岡 (両手でガッツポーズ)

ライブまで楽しんでsumikaを知ってもらえたら

sumika「Fiction e.p」ジャケット

──スーツの女性とピエロが映画館に座る姿を映した「Fiction e.p」のジャケットも気になりました。どんなストーリーを想像したんですか?

片岡 これは2人別々のストーリーがあって。女性側は就活中で履歴書を書いているんですけど、後ろから映像が投影されているので、正面を観たら実はもう物語が始まっているんですよ。だけどその物語の始まりに気付いていないんです。で、ピエロの男性のほうは完全に準備万端なんですけど、寝ちゃってるんです。女性には“準備から物語は始まっている”、男性には“準備ができたら目を背けるな”っていうテーマを設けていて、2人が“フィクション”とどう向き合っているのかを表現しました。

──女性役には「リグレット」のミュージックビデオで主演を務めた阿久津ゆりえさんが扮していて、カメラマンはsumikaのライブ写真や1stフルアルバム「Familia」のジャケットを撮影したヤオタケシさん、ジャケットデザインは過去作に続き栗原慶太さんが担当しています。そして阿久津さんの隣で傘を持つピエロ役を、パフォーマンスアーティストでクリエイターの小林玄さんが演じています。

片岡 “自分の音楽人生に鳥肌を立ててくれた人たち大集合”っていうテーマで皆さんにオファーして。撮影の1週間前にこのテーマがビーンと思い浮かんで、皆さんに連絡したら無理やりスケジュールを合わせてくれたんです。ホントに奇跡的なスケジュールで撮影できました。

──素晴らしいですね。ジャケットで描かれたストーリーの続きも気になります。

片岡 CDを買っていただいたら中面に続きがあるんですよ。ぜひとも見てもらいたいです。

──5月からは東京・日本武道館2DAYSを含むホールツアーが地元の川崎からスタートします。先ほど荒井さんが挙げていたツアータイトル「Starting Caravan」に込めた思いを改めて聞かせてください。

片岡 今年で結成して5周年で本当にいろんなことがありましたが、まだまだ始まってないこともあって。でもすでに始まっていることに対しては、ちゃんと肯定していきたいから、改めてリスタートして会いたい人に会いに行く、そして新たな出会いも求めていくっていう気持ちで組んだツアーです。

黒田 今回は全会場席ありの会場でやらせてもらえて、いちミュージシャンとしてもすごくうれしいことだし、sumikaとしても、この会場だからこそできることがあるし……まだ内緒なんですけど(笑)。

小川 「ここに行ったら何かが起こりそう」ってお客さんに期待をしてもらえるような、そういうツアーにできたらいいですね。

荒井 ホールツアーということで、普段ライブハウスだとなかなか遊びに来れない方にも来ていただきやすいかなと。ホールはホール、ライブハウスはライブハウスでそれぞれいいところがあると思うので、もちろんライブハウス公演は今後もやっていきます。今回はゆったりとした素敵な空間になったらいいなと思いますね。

片岡 sumikaは音源で聴いた印象とライブの印象が違うって言われることが多くて。ライブで見えるもの、ライブでしか味わえないsumikaの魅力もきっとあると思うし、僕たちもライブをしてやっと曲が完成すると思ってるので、ぜひライブまで楽しんでsumikaを知ってもらえたらいいなと思います。

sumika
sumika「Fiction e.p」
2018年4月25日発売 / Sony Music Records
sumika「Fiction e.p」初回限定盤

初回限定盤 [CD+DVD]
2052円 / SRCL-9756

Amazon.co.jp

sumika「Fiction e.p」通常盤

通常盤 [CD]
1296円 / SRCL-9758

Amazon.co.jp

CD収録曲
  1. フィクション
  2. 下弦の月
  3. ペルソナ・プロムナード
  4. いいのに
初回限定盤DVD収録内容

「sumika Film #3」
2017.10.26東京国際フォーラム ホールAでのライブ映像

  1. Answer
  2. Lovers
  3. Summer Vacation
  4. まいった
  5. ここから見える景色
  6. ふっかつのじゅもん
  7. アイデンティティ

副音声:メンバーによるオーディオコメンタリー収録

ツアー情報

sumika「sumika Live Tour 2018 "Starting Caravan"」
  • 2018年5月8日(火)
    神奈川県 カルッツかわさき
  • 2018年5月11日(金)
    宮城県 トークネットホール仙台 大ホール
  • 2018年5月13日(日)
    北海道 札幌市教育文化会館 大ホール
  • 2018年5月18日(金)
    新潟県 新潟県民会館 大ホール
  • 2018年5月26日(土)
    広島県 上野学園ホール
  • 2018年5月30日(水)
    香川県 サンポートホール高松 大ホール
  • 2018年6月1日(金)
    熊本県 市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
  • 2018年6月8日(金)
    福岡県 福岡市民会館 大ホール
  • 2018年6月10日(日)
    石川県 本多の森ホール
  • 2018年6月22日(金)
    愛知県 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
  • 2018年6月23日(土)
    愛知県 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
  • 2018年6月30日(土)
    東京都 日本武道館
  • 2018年7月1日(日)
    東京都 日本武道館
  • 2018年7月14日(土)
    京都府 ロームシアター京都
  • 2018年7月17日(火)
    兵庫県 神戸国際会館こくさいホール
  • 2018年7月18日(水)
    大阪府 フェスティバルホール
sumika(スミカ)
sumika
片岡健太(Vo, G)、荒井智之(Dr, Cho)、黒田隼之介(G, Cho)により2013年5月に結成されたバンドで、sumika[camp session]名義のアコースティック編成でも活動している。同年10月に1stミニアルバム「新世界オリハルコン」をリリース。2014年11月にはmurffin discs内レーベル・[NOiD]の第2弾アーティストとして2ndミニアルバム「I co Y」を発売する。2015年2月にサポートメンバーの小川貴之(Key, Cho)がバンドに正式加入し、6月に3rdミニアルバム「Vital Apartment.」をリリースした。8月には片岡の体調不良によりライブ活動を休止。その後11月に東京・shibuya eggmanで行ったワンマンライブをもって活動を再開させる。2016年3月には活動再開後初の作品として両A面シングル「Lovers / 『伝言歌』」を、2017年7月には初のフルアルバム「Familia」をリリース。2018年4月に新作CD「Fiction e.p」を発売した。バンド結成5周年イヤーに突入する5月からは東京・日本武道館公演2DAYSを含むバンド史上最大規模のホールツアー「sumika Live Tour 2018 "Starting Caravan"」を開催する。