ナタリー PowerPush - ザ・スターリン

吐き気がするほどロマンチックなパンクレジェンド30年史

INUを評価してるからこそパロディにした

──個人的に知りたかったのが、ミチロウさんは当時、好きな日本のバンドとかいたのかなということで。そのへんが結構断絶されてる気がして。

いやあ……。でも、INUはすごい意識してましたよね。

──対バンしてましたっけ?

対バンなんてほとんどしてないですよ。まだバラシのとき初めてINUを観て、カッコいいなと思って。それが自閉体を始めるきっかけで。ギターを弾かないで歌おうかなと思ったのはそこからですよ。初めてINUのライブを大阪で観て。北田(昌宏)さんがすごいカッコよかったんで。

──それでINUの「メシ喰うな!」に対して「メシ喰わせろ!」と歌ったわけですか。

あれはちょっとパロディで遊ぶところが本気になっちゃったってだけですけど(笑)。

──向こうの反応はどうだったんですか?

いや、なんにも聞いてないですよ。

──怒ってるだろうなとかも何もなく。

だからいまだにわかんないですよ。

──そうなんですか(笑)。当時、ザ・スターリンがああいうことやったら、嫌がらせなのかと思いますよね。

インタビュー写真

いやいや、逆に仲良かったってわけでもないですけど、認めてたからやれちゃうパロディみたいなのってあるじゃないですか。評価してるからこそ、さらにそれをパロディにしちゃえ、みたいな感じです。完全に認めてるから。最初に「メシ喰わせろ!」をやったのは横浜国大で、写真も残ってると思うんですよね。僕が犬の首輪して、裸で四つん這いでステージに出てて。

──まさに犬。

そう。まさに犬っていうパロディなんで。

──なるほど! 町蔵さんとは「爆裂都市」で共演してましたけど、その映画がきっかけでアナーキーとの確執も生まれましたよね。

ああ、アナーキーとかね。いわゆるストリートからのインディーズ系でパンクバンドが出てくるのってもっとあとですよね。LAUGHIN' NOSEとかああいうのが出てきたのって。

──そうですね。あの時代は、いわゆるパンクバンドが少ない時期で。

少なかったですよね。じゃがたらはパンクじゃなかったし。

噂が噂を呼んで、勝手にファン同士がケンカ

──アナーキーと揉めたのは「爆裂都市」の打ち上げでしたっけ?

そうそう。「爆裂都市」の打ち上げでザ・スターリンがライブやってるときに、アナーキーが殴り込みかけてきたんですよ。僕は全然気付いてなくて。ダーッと来てワーッとなって取っ組み合いになってて、終わってから、じつはアナーキーだったっていうのがわかって。そのときは何もわかってないんですよ。取っ組み合いになってたから(笑)。

──アナーキーが打ち上げで乱入したのも、「なんで俺たちを『爆裂都市』に出さないんだ」っていう理由だったみたいですね。

ああ、そうです。それは俺にじゃなくて石井くんに言ってくれないと(笑)。

──リザードと揉めた、みたいな話もありましたけど。

あれは筑波でやったときに、金子が酔っ払ってリザードの悪口をステージ上から言ったんですよ。それまでリザードと別に仲悪くなくて、渋谷のハチ公前のライブでも一緒にやったりとかしてたんですけどね。それでリザードが怒っちゃって、そのときヤバいっていうんで、金子だけ先にどっかに逃がしたんですよ、楽屋から。それが噂になって。まあ、それからリザードはザ・スターリン嫌いになったんですけど。

──ツアーとかでもリザードアーミー(親衛隊)が来て揉めたことがあったとか聞きました。

わかんないですけどね。アナーキーのときと一緒で、噂が噂を呼んで、勝手にファン同士がやっちゃったりするんで。

──ちなみに「爆裂都市」で共演したザ・ロッカーズやTHE ROOSTERSはどう思ってました?

向こうは、めんたいビートとかいう形で盛り上がってたじゃないですか。でも、映画の撮影で初めて直接知り合って。映画の撮影終わってから、新宿リキッドルームってあったじゃないですか。あそこは前にディスコだったんで、そこでTHE ROOSTERSとザ・ロッカーズとザ・スターリンでライブやったんです。映画の打ち上げかな? それで結構仲良くなって。そのときに結構THE ROOSTERSのファンもザ・スターリンをすごい認めたのか、結構仲良くなったんですよ。

──音楽的には違うけれども。

うん。でも、そんな極端にも違わないじゃないですか。それ以降、結構THE ROOSTERSとザ・スターリン両方好きっていうファンは多かったんですよ。

──ザ・ロッカーズは別で。

ザ・ロッカーズはまた別かもしれないですけどね。THE ROOSTERSは僕の中でも結構認めてましたよね。硬派な感じが好きで。

──そこにザ・ロッカーズは入らないんですね。

ザ・ロッカーズは入らないなあ……。

自分の中では「爆笑都市」です

──「爆裂都市」は撮影がすごい大変だったみたいですけど。

ああ、あれエキストラが全部それぞれのファンだったんですよ。バトル・ロッカーズのエキストラは全部THE ROOSTERSとザ・ロッカーズのファンで、マッド・スターリンのエキストラは全部ザ・スターリンのファンなんで、エキストラ同士が結構本気でやってたんじゃない? だからあれだけ迫力あるガチの映像になって。服も全部自前だし、みんなそのまま来てたんで。

──ミチロウさんはあの映画で自分の演技を見て、もうニ度と演技はやらないと思ったみたいですけど。

ああ、役者じゃないなと思いましたね。元々役者願望は全然ないんですけど、ダメだこりゃと思って。

──あの演技、大好きですよ。「どけどけどけー、てめえら豚の臓物でも喰らえーーー」みたいなの(笑)。

自分の中では「爆笑都市」になってましたよ(笑)。

──ダハハハハ! そして、中村達也さんとかリョウさんとかが入ったり、ソロで「ベトナム伝説」を作って、THE WILLARDのJUNさんがギターを弾いた時期もあったりで。

うん。ただ、メンバーチェンジするたびに、いちからやり直す、みたいなのが嫌になってたんですよ。

ザ・スターリン「I was THE STALIN  ~絶賛解散中~ 完全版」/ 2012年3月14日発売 / [2CD] 3300円(税込) / 徳間ジャパン コミュニケーションズ / TKCA-73749

  • Amazon.co.jpへ
DISC 1(第一部)収録曲
  1. 廃魚
  2. M-16(マイナー・シックスティーン)
  3. T-Legs
  4. アクマデ憐レム歌
  5. 溺愛
  6. おまえの犬になる
  7. バイ・バイ・ニーチェ
DISC 2(第ニ部)収録曲
  1. オープニング・アナウンス
  2. 猟奇ハンター
  3. 渚の天婦羅ロック
  4. バキューム
  5. ハロー・アイ・ラブ・ユーに捧ぐ
  6. ワイルドで行こう(Born To Be Wild)
  7. 天プラ
  8. 電動コケシ
  9. アザラシ
  10. NO FUN
  11. アーチスト / マリアンヌ
  12. お母さんいい加減-先天性労働者
  13. ロマンチスト
  14. 下水道のペテン師
  15. STOP GIRL
  16. 爆裂(バースト)ヘッド
  17. 豚に真珠
  18. GASS
  19. 仰げば尊し
  20. 解剖室
  21. ワルシャワの幻想
  22. Fish Inn

ビデオ・スターリン「MINUS ONE-LEGACY EDITION-」/ 2012年3月14日発売 / [2CD] 2800円(税込) / いぬん堂 / WC-080~81

  • Amazon.co.jpへ
DISC 1「MINUS ONE」収録曲
  1. LOVE TERRORIST
  2. 24時間愛のファシズム
  3. KOREA
  4. -1(マイナス・ワン)
  5. Relo Relo
  6. New York PARANOIA
  7. ウルトラ・SEX・MAN
  8. Sha.La.La.
  9. 羊飼いのうた(LIVE)
  10. タイフーン・レディ・フラッシュ(LIVE)
  11. キリの中(LIVE)
  12. ウルトラ・SEX・MAN
  13. 24時間愛のファシズム
DISC 2「DEBUT!」収録曲
  1. 愛してやるさ!
  2. 猟奇ハンター(LIVE)
  3. 冷蔵庫(LIVE)
  4. 天上ペニス(LIVE)
  5. STOP GIRL(LIVE)
  6. 爆裂(バースト)ヘッド(LIVE)
  7. 先天性労働者(LIVE)
  8. メシ喰わせろ!(LIVE)
  9. 渚の天婦羅ロック(LIVE)
  10. バキューム(LIVE)
  11. 解剖室(LIVE)
  12. 仰げば尊し(LIVE)
  13. 20st Century Boy(LIVE)
  14. 虫(LIVE)
  15. バイ・バイ“ニーチェ”(LIVE)
  16. GASS(ORIGINAL VERSION)
遠藤ミチロウ(えんどうみちろう)

日本のロックシーンに衝撃を与えた伝説のパンクバンド、ザ・スターリンの中心人物として1982年にアルバム「STOP JAP」でメジャーデビュー。その強烈な存在感とカリスマ性で圧倒的な支持を集め、一世を風靡する。1985年にバンドを解散してからは、ソロアーティストとしてのキャリアをスタート。また、パラノイア・スター、ビデオ・スターリン、スターリン、COMMENT ALLEZ-VOUS?など、さまざまなバンドでも活躍する。ソロ名義では年間100本以上におよぶライブを開催するなど、その活動スタイルはアグレッシブ。また、若手アーティストとの交流も多く、グループ魂、大槻ケンヂらとも共演している。近年はソロのほか、石塚俊明(頭脳警察)と坂本弘道とのNOTALIN'S、中村達也(LOSALIOS)とのTOUCH-ME、クハラカズユキ(The Birthday)&山本久土とのM.J.Qなど、ライブを中心に積極的な活動を続けている。