ナタリー PowerPush - ザ・スターリン
吐き気がするほどロマンチックなパンクレジェンド30年史
女の子の人気を取ろうと思って晋太郎を入れた
──ザ・スターリン以前、自閉体やバラシでは、ねじくれたフォークみたいなアバンギャルドなことをやってたわけですよね。
でも、フォークロックでしたよね。パンクやってるつもりが、まだフォークロックで。やっとパンクっぽくなったのが自閉体からじゃないですか? 要するに僕がギター弾かなくなって、ボーカルに専念して初めてちゃんとサウンドがパンクっぽくなって。
──ミチロウさんがギターを弾くと、やっぱりフォークの癖が出て。
フォークですよね。
──でも当時の音を聴くと、曲の原型はほぼできてるじゃないですか。
そう、自閉体はほぼザ・スターリンになってますよね。
──その流れがあるのがデビューソノシートの「電動こけし」ぐらいで、カップリングの「肉」はもうザ・スターリンな感じだし。
そうですね。ソノシート出したときに、1曲はパンク、もう1曲はTHE CONTORTIONSみたいなものってあきらかに分けて作ったんですよ。
──そこから、よりパンクなほうにいこうっていうスイッチが入るわけですか?
イメージ的にピストルズっぽくしようって。特に(杉山)晋太郎を入れてからそうでしたね。
──晋太郎さんは完全にビジュアルで選んだみたいですけど、彼の存在はデカかったですよね。
デカかったですよ。だって女の子の人気を取るには、やっぱりちょっと女の子受けするようなヤツを入れなきゃいけないっていうのと、あとシド・ヴィシャスみたいなイメージにしたいのがあったんで、弾けなくてもいいや、みたいな。
──技術よりもルックス重視で。
うん。だから急に女の子の客が増えましたよ。
──ケイゴさんがザ・スターリン加入のため上京したときに、新宿アルタ前で晋太郎さんと待ち合わせしたら、晋太郎さんがベースをケースにも入れずそのまま直に抱えた状態でアルタ前にいたから、「ザ・スターリンすごい」ってまず思ったらしいですね(笑)。
ハハハハハ! ホントですかね? その現場にいないんでわかんないですけど。でも晋太郎が入ってから僕もメイクとかしだして。
豚の頭を買いに行ったのが宇川直宏だった
──そこからどんどんパフォーマンスが過激化していくんですね。
1980年の6月にザ・スターリンがスタートして、臓物を投げたりとかになってきてから、その年の秋の大学祭シリーズをまんべんなくやろうってなって、1980年の10月、11月に大学祭を十何本続けてハシゴするようにライブやって。じゃがたらとかと一緒にやって、それからエスカレートしていった。1981年の12月に「trash」出すんで、81年が一番人気も出てきてグッチャグチャやってた時期でしたね。
──逮捕されたりしていた時期(笑)。
そうそうそう。11月に逮捕されたんですよね。
──ステージで裸になるまではわかるんですよ。そこでチンコをくわえさせるようになるステップっていうのはなんだったんですか?
たまたまですよ、成り行きです(あっさりと)。
──ダハハハハ! そうなんですか。
うん、成り行きですよね。でも、くわえさせたのって多分1回だけですよ。
──それが伝説になってるだけで。
そうそうそう。だいたい1回ぐらいしかやってないですよ。豚の頭を投げたのだってそんなものなんですよ。
──そうなんですか! ザ・スターリンといったらライブを終えた会場に豚の頭が転がってるようなイメージですよ。
でしょ? でも実際に投げたのは横浜市立大学。その前の日に法政大学で投げようとしたら、同和問題とかでダメだっていうんで投げられなくて。その1回だけで。あと投げたのは「爆裂都市」の撮影と、高松で1回。だから実際ライブでは2回しか投げてないんですよ。
──結局、石井聰互監督の映画「爆裂都市 BURST CITY」の印象がデカすぎるんでしょうね。
そうですよね。あれで投げたんで、しょっちゅう投げてるような印象で。臓物はしょっちゅう投げてましたけど、頭はホント、2回だけですよ。高松のオリーブホールでやったときに豚の頭を買いに行ったのがDOMMUNEの宇川直宏さんだったんですよ。去年、「僕が買いに行ったんですよ」って言われて、「ええーーーっ!」て。
──宇川さんは当時、四国でパンクのイベントに絡んだりとかしてましたからね。
そうそうそう。中学校のときに放送部で、給食の時間にザ・スターリンとかガンガンかけてたって。「肉」とかを流して停学みたいになったとか。
DISC 1(第一部)収録曲
- 虫
- 廃魚
- M-16(マイナー・シックスティーン)
- T-Legs
- アクマデ憐レム歌
- 溺愛
- おまえの犬になる
- バイ・バイ・ニーチェ
DISC 2(第ニ部)収録曲
- オープニング・アナウンス
- 猟奇ハンター
- 渚の天婦羅ロック
- バキューム
- ハロー・アイ・ラブ・ユーに捧ぐ
- ワイルドで行こう(Born To Be Wild)
- 天プラ
- 電動コケシ
- アザラシ
- NO FUN
- アーチスト / マリアンヌ
- お母さんいい加減-先天性労働者
- ロマンチスト
- 下水道のペテン師
- STOP GIRL
- 爆裂(バースト)ヘッド
- 豚に真珠
- GASS
- 仰げば尊し
- 解剖室
- ワルシャワの幻想
- Fish Inn
DISC 1「MINUS ONE」収録曲
- LOVE TERRORIST
- 24時間愛のファシズム
- KOREA
- -1(マイナス・ワン)
- Relo Relo
- New York PARANOIA
- ウルトラ・SEX・MAN
- Sha.La.La.
- 羊飼いのうた(LIVE)
- タイフーン・レディ・フラッシュ(LIVE)
- キリの中(LIVE)
- ウルトラ・SEX・MAN
- 24時間愛のファシズム
DISC 2「DEBUT!」収録曲
- 愛してやるさ!
- 猟奇ハンター(LIVE)
- 冷蔵庫(LIVE)
- 天上ペニス(LIVE)
- STOP GIRL(LIVE)
- 爆裂(バースト)ヘッド(LIVE)
- 先天性労働者(LIVE)
- メシ喰わせろ!(LIVE)
- 渚の天婦羅ロック(LIVE)
- バキューム(LIVE)
- 解剖室(LIVE)
- 仰げば尊し(LIVE)
- 20st Century Boy(LIVE)
- 虫(LIVE)
- バイ・バイ“ニーチェ”(LIVE)
- GASS(ORIGINAL VERSION)
遠藤ミチロウ(えんどうみちろう)
日本のロックシーンに衝撃を与えた伝説のパンクバンド、ザ・スターリンの中心人物として1982年にアルバム「STOP JAP」でメジャーデビュー。その強烈な存在感とカリスマ性で圧倒的な支持を集め、一世を風靡する。1985年にバンドを解散してからは、ソロアーティストとしてのキャリアをスタート。また、パラノイア・スター、ビデオ・スターリン、スターリン、COMMENT ALLEZ-VOUS?など、さまざまなバンドでも活躍する。ソロ名義では年間100本以上におよぶライブを開催するなど、その活動スタイルはアグレッシブ。また、若手アーティストとの交流も多く、グループ魂、大槻ケンヂらとも共演している。近年はソロのほか、石塚俊明(頭脳警察)と坂本弘道とのNOTALIN'S、中村達也(LOSALIOS)とのTOUCH-ME、クハラカズユキ(The Birthday)&山本久土とのM.J.Qなど、ライブを中心に積極的な活動を続けている。