ナタリー PowerPush - ザ・スターリン
吐き気がするほどロマンチックなパンクレジェンド30年史
そういえばビデオ・スターリンって「イカ天」っぽい
──ザ・スターリンとしてのインタビューでは、ある程度ピストルズ的なキャラを作って毒づいたりは当然するでしょうけど、ミチロウさんから悪口のイメージがなくて。
ああ。当時は毒づいてたんじゃないですか? 「クソ野郎、ロックなんか見んな!」みたいな。それはべつにね……。
──プロレス的なものというか。
うん。でも多分好きなバンドがいたら、ちゃんと「あいつらいいな」とか言ってると思いますよ。RC(サクセション)の悪口も、その「ROCKIN'ON」のインタビューのときしかしてないんじゃないですか?
──「清志郎に似てるって言われるのは嫌だ」みたいな感じのことは言われてましたよね。
ああ、パンクっていうイメージの中にはRCは入ってなかったんですよね、全然。世間はパンクだとか言ってたけど、僕にとってはRCってものすごい70年代的な音楽の流れが強かったんで、単にお化粧してるだけかな、みたいな。それで同列に扱われるのかな、みたいなのがあって。べつにRCはそんなにパンクバンドっていうイメージなかったんですよね。だから「RCがパンクなら、ウチらはパンクじゃねえぞ」みたいなことを多分言ってたんですよ。アナーキーは、「ヤマハのコンテスト上がりじゃねえかよ!」みたいなのが当時ありましたからね。
──ライブハウスで地道にやってきた側からすると、そうなりますよね。ただ、ビデオ・スターリンは僕の中ではちょっとモヤッとした思い出なんですよ。ザ・スターリンを求めてライブに行ったら全然違ったって感じで。
ああ。でもあれは極端な話、メンバーは誰でも良かったんですよ(あっさりと)。
──でしょうね。だから一般参加のオーディションで選んで。
オーディションだし、ホントはライブもなくてもよかったんですよ。
──最初はビデオのみで活動するって話でしたよね。
ビデオの中だけの世界を作りたかったんですよ。だからレプリカじゃないんですけど……。
──サイバーパンク的な世界観で。
そうそうそうそう! だからライブもやらないし、ビデオの中にしか存在しないバンドみたいな。メンバーは誰でもいいって言い方は変ですけど、メンバーが替わっても構わない……みたいなその流れが、じつは「イカ天」につながっちゃってたんじゃない? そういえば「イカ天」っぽいバンドでしたよ。
──ダハハハハ! でも、なんか納得です!
あれと並行してやってたのがパラノイア・スターで。あっちは完全な、グランジっていう言葉はまだなかったんですけど、いわゆるそういうバンドをやろうとしてて。
70歳でザ・スターリンやるなんてそんなのバカですよ
──ミチロウさん、ちなみにバンドブームはどんなふうに見てたんですか?
どうなんでしょうね? まさかあそこまでブームになると思ってなかったっていうのと、要するに誰でもやれるんだっていうイメージで言えば、僕が最初にザ・スターリンやる前にパンクに惹かれて自分でもパンクバンドやろうって思ったのは、「あ、ヘタでもいいんだ」みたいな。外国のいろんなバンド観て、「誰でも明日からパンクバンドやれるんだぞ」みたいなのがきっかけだったんで、それが実体として世の中でそういうふうになったのが、実はバンドブームじゃないか。だからバンドブームって、実は日本にとっての最初の、ある意味ではパンクムーブメント的なイメージがありますよね。音楽は別として。
──バンドブームのときに、今パンクバンドやってたら売れるんじゃないか的な発想とかはなかったですか? あのときにスターリンが再結成されて、何やるのかと思ったら音楽性があれだったんで、まず驚きがあったんですよ。
ああ。ちょっとね、あんまりパンクにこだわらない、普通にロックみたいな感じになっちゃって。僕の中では、ザを取ったことによって……ザの中にすごいパンクってイメージがあったんじゃないですか? ザ・スターリンって。ザがないただのスターリンっていうのは、俺にとっては普通のロックバンドっていうイメージがあって。あんまり音楽性は絞り切らないっていうか、逆に言ったらなんでもやっちゃえ、みたいな。どっかでミクスチャー的なイメージがあったんですよ。いろんな要素をぶち込んでやるバンド、みたいな。
──でも、スターリンを名乗っちゃうと、それを期待しちゃう人がいますよね。
そうですね。でも、僕にとってはザ・スターリンだとパンクなんですけど、スターリンっていうのはロックバンドっていうイメージなんですね。バンドをやるんだったら、どういう音楽性であろうとスターリンっていう名前でいこうかなって。それ以降、バンドは基本的にやってないんですけど。最後のスターリン始めたの1988年か89年ですよね。ザ・スターリンを解散して4年経ってても、まだそういうパンク的なものを求められるっていうのは、なんかこっちとしては変だなって感じがありましたね。
──パンクが盛り上がって、ザ・スターリンも「YOUR ORDER」で初期映像が見れるようになって、幻想が高まってたんですよね。
ああ。でも世の中バンドブームで、パンクバンドなんていくらだってあったじゃないですか。THE BLUE HEARTSから始まって、ジュンスカ(JUN SKY WALKER(S))とかポップパンクみたいな、青春パンクみたいな感じの。それでもう終わったなと思ってたんですよ、パンクっていうのは。最後のスターリンのときは僕自身が一番、音楽的なことで悩んだときですからね。それからアコースティックを20年やってて、スターリンの倍近くアコースティックやってるんですけどね。
──ザ・スターリンの活動期間なんてものすごい短いですよね。
短いですよね。活動したのは5年だけど、ホントの意味でのパンクバンド、ザ・スターリンだったのは最初の3年間。「ベトナム伝説」の前までですよね、実質。まあ、ピストルズだって似たようなもんでアルバム1枚だけですもん。P.I.Lだってもっとずっと長くやってたじゃないですか、そのあと。でも、やっぱりジョニー・ロットンといったらピストルズになっちゃうんだよね。僕も、こんなに今までザ・スターリンを引きずるとは思ってなかったですよ。
──まだ解散ライブ盤を出し直されるぐらいに(笑)。個人的には70歳でのザ・スターリンが見たいですよ。胃潰瘍になるレベルで、また自分を追い込んでください(笑)。
いやいやいや!
──あのアコースティックのライブ観てる限りでは、全然まだやれると思いますけどね。
いや、でも全然別ですよ。だいたいうるさいでしょ、音が。「モニター聴こえねえよ、自分の声が」みたいな。それが耐えられないです。やっぱりしんどいですよ。体が要求してないですよね。
──そりゃ要求しないですよ、還暦を迎えたら(笑)。
やれちゃうのが嫌ですよね……。「プロジェクトFUKUSHIMA!」でライブやってから体がおかしいんですよ。
──そうなんですか!
うん、あれから体にちょっとガタきちゃったみたいで。やっぱり、いろんな意味で120パーセント出しちゃったんだよね。あれから体がホントに戻らないんですよ。
──じゃあ70歳でやるのはあんまり期待しないほうがいいですね。
バカですよ、そんなもん!
DISC 1(第一部)収録曲
- 虫
- 廃魚
- M-16(マイナー・シックスティーン)
- T-Legs
- アクマデ憐レム歌
- 溺愛
- おまえの犬になる
- バイ・バイ・ニーチェ
DISC 2(第ニ部)収録曲
- オープニング・アナウンス
- 猟奇ハンター
- 渚の天婦羅ロック
- バキューム
- ハロー・アイ・ラブ・ユーに捧ぐ
- ワイルドで行こう(Born To Be Wild)
- 天プラ
- 電動コケシ
- アザラシ
- NO FUN
- アーチスト / マリアンヌ
- お母さんいい加減-先天性労働者
- ロマンチスト
- 下水道のペテン師
- STOP GIRL
- 爆裂(バースト)ヘッド
- 豚に真珠
- GASS
- 仰げば尊し
- 解剖室
- ワルシャワの幻想
- Fish Inn
DISC 1「MINUS ONE」収録曲
- LOVE TERRORIST
- 24時間愛のファシズム
- KOREA
- -1(マイナス・ワン)
- Relo Relo
- New York PARANOIA
- ウルトラ・SEX・MAN
- Sha.La.La.
- 羊飼いのうた(LIVE)
- タイフーン・レディ・フラッシュ(LIVE)
- キリの中(LIVE)
- ウルトラ・SEX・MAN
- 24時間愛のファシズム
DISC 2「DEBUT!」収録曲
- 愛してやるさ!
- 猟奇ハンター(LIVE)
- 冷蔵庫(LIVE)
- 天上ペニス(LIVE)
- STOP GIRL(LIVE)
- 爆裂(バースト)ヘッド(LIVE)
- 先天性労働者(LIVE)
- メシ喰わせろ!(LIVE)
- 渚の天婦羅ロック(LIVE)
- バキューム(LIVE)
- 解剖室(LIVE)
- 仰げば尊し(LIVE)
- 20st Century Boy(LIVE)
- 虫(LIVE)
- バイ・バイ“ニーチェ”(LIVE)
- GASS(ORIGINAL VERSION)
遠藤ミチロウ(えんどうみちろう)
日本のロックシーンに衝撃を与えた伝説のパンクバンド、ザ・スターリンの中心人物として1982年にアルバム「STOP JAP」でメジャーデビュー。その強烈な存在感とカリスマ性で圧倒的な支持を集め、一世を風靡する。1985年にバンドを解散してからは、ソロアーティストとしてのキャリアをスタート。また、パラノイア・スター、ビデオ・スターリン、スターリン、COMMENT ALLEZ-VOUS?など、さまざまなバンドでも活躍する。ソロ名義では年間100本以上におよぶライブを開催するなど、その活動スタイルはアグレッシブ。また、若手アーティストとの交流も多く、グループ魂、大槻ケンヂらとも共演している。近年はソロのほか、石塚俊明(頭脳警察)と坂本弘道とのNOTALIN'S、中村達也(LOSALIOS)とのTOUCH-ME、クハラカズユキ(The Birthday)&山本久土とのM.J.Qなど、ライブを中心に積極的な活動を続けている。