音楽は癒しでもあり、精神的支柱になる
──続いてアルバムの終盤、13曲目になりますが「神様からの贈り物」では、日本の歌謡曲と、それらを歌唱した歌手の方々への愛と感謝が歌詞につづられていて。
これは、とある放送局からご依頼をいただきまして。そのタイミングで曲はできていたんですけど、歌詞がまだなかったんです。そこでご依頼があったものですから、「放送100年」というテーマを落とし込んでいるうちに、今のような歌詞になりました。12曲目の「ミツコとカンジ」も実はそうなんですが、我々は「紅白歌合戦」であったり、テレビで、ラジオで、世の中の情勢を浴びていたんですね。中村八大さんとか、永六輔さんとか、坂本九さんとか、ああいった方たちがいなかったらもちろん我々はいないしね。阿久悠さんがいないと、私の歌い方だってこうはなってないですから。よく「何を言ってるかわからない」って言われるけども(笑)。
──ええ(笑)。
そもそも坂本九さんがいなかったら、私の世代にこういう歌い方をしている人はいない思うんですよね。日本語をポップスに転化する歌い方といいますか。
──桑田さんの憧れたものやルーツが、ご自身の血と骨になっていると。
うん。染み込まれてるね。私なんかは1966年くらいに祖母が死んだときに、ちょうど坂本九さんの「上を向いて歩こう」がヒットしていて。当時泣きながら歌っていたのを覚えてますから。そういう感覚を持ちながら、ずっと歌ったり、歌詞を書いたりしているんでしょうね。
──この曲は「あの歌と出会い あなたがいれば 何にも怖くない」というフレーズで終わりますが、これは桑田さんが今書いておかなきゃいけなかった言葉だった。そんな感じがします。
日本も、2011年の東日本大震災以降、2020年のコロナといろんなことがあって、「第二の敗戦期」のような言い方もされていますけど、たくさんの人が心を折られている。つまり我々としてはまだ立ち上がり切っていない気がするんですよね。私も病気をしましたし。でも、音楽が生業としてあったものですから、そこに気持ちを集約することができたのが大きかった。何があっても音楽は癒しでもあるし、精神的に大きな支柱になるんだということを感じてきた。それはここ数十年の話ですけどもね。この曲には、そういう気持ちも込めました。
──曲のテーマやメロディ、音楽としてのあり方においても、「これをやろうよ!」とシンプルに作るタイミングが今きているわけですね。それは桑田さんにとっても、サザンにとっても、そしてリスナーである僕たちにとってもとても幸福なことだと思います。
うんうん。コロナ禍の頃はこの先どうなるのかなあと私も思いましたけど、それも明けて、皆さんツアーに来てくれまして。そして、本当にありがたいことにこうやってアルバムも出せるわけです。
──そんな思いが込められた曲が「神様からの贈り物」という。本当にいいタイトルを付けられましたよね。
そうですねえ。タイトルというのはすごく大事だと思いますよ。今回はあんまり複雑なタイトルの曲がないのが自分でも不思議なんですよね。
──アルバム全体を通してすごくシンプルですよね。
はい。ちょっとひねってやろうと思っていろんなタイトルを考えた時期もあるし、40数年間やらせてもらっていて、振り返るといろいろと反省することもありますからね。
──なるほど(笑)。
やりすぎたなあって。サザンの歴史、私の歴史って、過剰にやりすぎることですから。それを今回は抑えておこうかなあと。
「失敗してもいいんじゃないの?」
──だからこそ桑田さんの本質に近付けている気もします。そこがまたこの作品の素晴らしいところですよね。アルバムのタイトルも「THANK YOU SO MUCH」とシンプルな言葉ではありますけども、いろいろな意味が込められているように思います。今の桑田さんにとって「THANK YOU SO MUCH」はどんな意味を持つ言葉なんでしょうか。
これを考えたときにね、あと何回アルバムが作れるかわからないなと思ったんですよ。こればっかりは年齢的にも、我々のテンションとしても。作り始めたあたりかな、「ありがとうございました!」って言葉が浮かんで。そのときは「今までありがとうございました」のように過去形だったかもしれない。でも、リハーサルが始まって、アルバムが完成して、ツアーを回っていたら、不思議なことに「誠にありがとうございました」とか「いらっしゃいませ」とか、ちょっと違う温度感の挨拶、感謝の気持ちに変わりました。
──タイトルを付けた当初とはまた違う意味合いになっているわけですね。
そうですね。Little Featの「The Last Record Album」(1975年リリース)ってありますでしょ? 全然“ラスト”じゃなかったけど(笑)。最初はああいうニュアンスを込められないかなと正直なところ思ったんですよね。ネガティブな意味ばかりじゃなくて、年齢的にも、アルバムを1枚作るにはそれなりに覚悟がいりますから。今後、作品を作ることができるかもわからないし。でもツアーをやる中で当初の狭義なイメージから、おかげさまで意味合いが変わりました。
──ファンの皆様の手元にアルバムが届いてからツアー後半戦が始まり、ツアーが終わる頃にはまた「THANK YOU SO MUCH」の意味合いがまた変わっていくんでしょうね。
そうかもしれないですね。やっぱりサザンはグループですし、多くのスタッフがいて、ファンの方がいて、周りの影響を受けてどんどん形が作られていく。予期せぬほうにも変わっていきますから。それが面白いなあと思って。自分1人で予期していることって、本当に狭いですから。
──どうなっていくんでしょうね、この先のサザンは。
どうなっていくんでしょうね? ただ、ツアーは今ちょうど半分過ぎたところですが、すごく空気感がいいんです。本当に皆さんのおかげで。お互いのことを思いながらやっているし、本番前の時間も今すごく楽しいんですよ。もちろん緊張はしますけど、いろんな人に背中を押されているというか。以前は硬くなってしまったりしてましたけども。緊張の種類が昔と違うんですよね。なんか、「失敗してもいいんじゃないの?」と思えるようになったんです。前は絶対に失敗できないとか、よく見せよう、よく思ってもらおうみたいな緊張感があったんだけど、多少力が抜けたのかもしれないですね。1人ひとりのメンバーが無理もしているし、がんばってもいる中で、肉体的にお年を召してきたものがちょっとよみがえってる感じもあって。それぞれメンテナンスもしていますし、それはすごくいい傾向だなと思いますね。
番組情報
スペースシャワーTV「サザンオールスターズ特集」
サザンオールスターズ リクエストランキング
2025年4月27日(日)17:00~18:30
サザンオールスターズ LIVE SELECTION
2025年4月27日(日)18:30~19:30
V.I.P. -サザンオールスターズ-
2025年4月27日(日)19:30~20:30
サザンオールスターズ MUSIC VIDEO SPECIAL
2025年4月27日(日)20:30~22:00
公演情報
サザンオールスターズ LIVE TOUR 2025「THANK YOU SO MUCH!!」
- 2025年1月11日(土)石川県 石川県産業展示館4号館
- 2025年1月12日(日)石川県 石川県産業展示館4号館
- 2025年1月22日(水)広島県 広島サンプラザ ホール
- 2025年1月23日(木)広島県 広島サンプラザ ホール
- 2025年1月28日(火)兵庫県 ワールド記念ホール
- 2025年1月29日(水)兵庫県 ワールド記念ホール
- 2025年2月8日(土)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
- 2025年2月9日(日)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
- 2025年2月19日(水)宮城県 セキスイハイムスーパーアリーナ
- 2025年2月20日(木)宮城県 セキスイハイムスーパーアリーナ
- 2025年3月1日(土)香川県 あなぶきアリーナ香川
- 2025年3月2日(日)香川県 あなぶきアリーナ香川
- 2025年3月15日(土)沖縄県 沖縄アリーナ
- 2025年3月16日(日)沖縄県 沖縄アリーナ
- 2025年4月2日(水)神奈川県 横浜アリーナ
- 2025年4月3日(木)神奈川県 横浜アリーナ
- 2025年4月12日(土)福岡県 みずほPayPayドーム福岡
- 2025年4月13日(日)福岡県 みずほPayPayドーム福岡
- 2025年4月23日(水)愛知県 バンテリンドーム ナゴヤ
- 2025年4月24日(木)愛知県 バンテリンドーム ナゴヤ
- 2025年5月10日(土)北海道 大和ハウス プレミストドーム
- 2025年5月11日(日)北海道 大和ハウス プレミストドーム
- 2025年5月17日(土)大阪府 京セラドーム大阪
- 2025年5月18日(日)大阪府 京セラドーム大阪
- 2025年5月28日(水)東京都 東京ドーム
- 2025年5月29日(木)東京都 東京ドーム
プロフィール
サザンオールスターズ
1975年に青山学院大学の音楽サークルで結成。現在のメンバーは桑田佳祐(Vo, G)、関口和之(B)、松田弘(Dr)、原由子(Key)、野沢秀行(Per)の5名。1978年6月にシングル「勝手にシンドバッド」でデビューし、独自の音楽性が当時のシーンに衝撃を与える。1979年3月に3rdシングル「いとしのエリー」の大ヒットにより幅広い層に受け入れられ、名実ともに日本を代表するロックバンドの仲間入りを果たす。その後も時代の変化に伴い、さまざまなアプローチで革新的かつ大衆的な楽曲を発表。1992年7月のシングル「涙のキッス」が初のミリオンヒットを達成し、1999年発表の「TSUNAMI」は293万枚の売り上げを記録する。その後デビュー30周年を迎え、バンドは2009年から無期限活動休止期間に突入していたが、2013年6月に活動再開を発表。2023年6月にデビュー45周年を迎え、9月から10月にかけて4日間の日程で神奈川・茅ヶ崎公園野球場での野外ライブを開催した。2024年6月、フジテレビ系ドラマ「新宿野戦病院」の主題歌である「恋のブギウギナイト」を配信リリース。9月にはテレビ東京系スポーツ2024テーマソングである「ジャンヌ・ダルクによろしく」を配信リリースし、“最後の夏フェス出演”として「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 in HITACHINAKA」に参加した。2025年1月に全国13カ所26公演を巡るアリーナ&ドームツアーをスタート。3月に約10年ぶり、16枚目となるオリジナルアルバム「THANK YOU SO MUCH」をリリースした。