音楽の激戦区ニューオリンズ

──皆さん楽しそうにツアーを振り返ってますけど、ストリートライブはめちゃくちゃストイックにやってましたよね。

柳下　街中に音があふれてる分、どうやって聴かせるのか苦労しましたね。ましてや俺らはアコースティックだし、音も大きくないから。

宮原　しかもニューオリンズは激戦区で、いろんなところからミュージシャンが来てるっぽくて。ライバルも多いというか。

芹澤　まあ、ニューオリンズに着いた頃はちょっとずつ体力が回復し始めてる時期で、演奏自体は楽しめましたけどね。時間に余裕もあったし。

又吉　前半のニューヨークが大変でしたから。後半はスタッフがちょっとスケジュールを調整してくれて。

柳下　ニューオリンズ直前がハードすぎて、「さすがにもうヤバイだろう」ってスタッフもだんだん青ざめてきてたしね。

それぞれの「俺は何をしにきてるんだろう？」事件

──道中のハプニングを含めリアルな部分がDVDに詰めこまれてますが、途中で「俺は何をしにきてるんだろう？」って思う瞬間はありました？

宮原　ありましたね。俺は寝てなさすぎて、直立できなくなったとき。

柳下　俺は長時間の車移動ですかね。何百キロっていう距離を走るから。最初は海外だし、右車線だし楽しいなーって思ってたんだけど、だんだんタイヤがベコンベコン鳴り始めて。パンクしてないのにですよ！ 途中で空気圧測ったりして……。「なんで音楽でもないのに、こんなになってがんばってんだろ」ってふと思ったりしてね。

──他のメンバーに「パンクの悪魔に魂を売った」っていじられてたときですね。

柳下　そうそう。俺はあのときが一番おかしくなってた。

──アメリカの広大さの怖いところですね（笑）。

芹澤　そういえば俺、今思い出したんですけど、ニューヨークのワシントンスクエアで一旦解散して夜に再集合ってときに、その間、1～2時間ひとりでゆっくりしてみようとしたんですよね。で、歩き回ってたら完全に道に迷って。道を訊いても英語がわからないし。2時間くらい迷って泣きそうになったのが「俺何してんだろう？」でしたね。

一同　ハハハハハハ（笑）。

──又吉さんは終始淡々としているように見えたんですが。

又吉　なんか僕は海外旅行というか……旅行じゃないけど（笑）。仕事とはいえ海外行くのが初めてだったんですよ。で、ニューヨークに着いた途端に「あ、これヤベエ、外国来てるよ俺」ってテンション上がって、そのまんま突っ走った感じ。特にキツいことはなく、ずっと楽しかったですね。疲れたは疲れたけど、割と寝れたし、お酒もいっぱい飲んだし。大丈夫でしたよ、僕は。

宮原　又吉はタフかもね。逆に普段スイッチがオフだからかな？

又吉　それはあるんじゃないかな。

宮原　酒飲んだときしかオンにならないんですよ、彼は。だから他のときは身体が休まってるのかもしれない。

音楽をより生活に近いものに

──アメリカでの経験を経て、バンドとして見えたことはありますか？

宮原　音楽というもののランクを日本で上げたいって思うようになりましたね。自分たちのバンドというよりは、音楽自体を。

芹澤　今は音楽を聴くメディアの変遷期だから一時的にいろんなことが起こると思うけど、もっと良くなっていってほしいですね。

柳下　裏を返せば、音楽イコールCDを聴くものだったのが、もっと現場へってなってるんじゃないかと思うし。音楽をより生活に近いものにしていくのが、これからの俺たちの目標ですね。