ナタリー PowerPush - SPECIAL OTHERS

インストの可能性を追求した5thアルバム

SPECIAL OTHERSが5thアルバム「Have a Nice Day」を完成させた。

“コラボイヤー”を銘打った昨年の活動、新曲「beautiful world」を含む海外での楽曲配信、そして今年3月に行われたアメリカでの8日間にわたる「ものすごい規模の全米ツアー!?」などを経て、自分たちのオリジナリティを見つめ直したという彼ら。今回ナタリーでは、メンバー全員にそんな経験を経て作られた新作について訊いた。

ちなみに今回のアルバム初回限定盤には、「ものすごい規模の全米ツアー!?」のドキュメンタリーDVDも付属。インタビューではツアーの思い出話についても触れてもらった。このテキストを読めば、DVDの楽しさも倍増するはず。

取材・文 / 石角友香 インタビュー撮影 / 佐藤類

“インストバンド SPECIAL OTHERS”に立ち返った

──今回のアルバムに向かう際のモチベーションはどんなところにありましたか?

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柳下武史(G) ゲストを迎えて音源を作っていた昨年の活動を経てからの作品だったので、インストバンドとしての面白さや楽器の面白さをより意識しましたね。それと「ものすごい規模の全米ツアー!?」で、ニューヨークやニューオリンズで現地の音楽に触れて、さらに自分たちもそこでライブをして、その空気感を感じられたことも影響しました。

宮原良太(Dr) 俺は、去年のコラボを通じてほかのアーティストってカッコいいなと思ったんですよね。でも参加してくれたアーティストみたいな表現はできないって改めて知ったというか。それで自分たちを見つめ直して「元々俺らはどういうバンドだったっけ?」と思ったり。で、餅は餅屋じゃないですけど、今回は自分たちのカラーみたいなものを探したような感じですね。

──改めてSPECIAL OTHERSのスタンスを確認した?

宮原 はい。あと「beautiful world」が海外配信されることもあって、ちょっと海外を意識したのもありますね。昔はアメリカのバンドが大好きで、ライブも行きまくって、影響をモロに受けて。それがライブにも反映されて。最近のSPECIAL OTHERSはちょっと違うニュアンスで演奏してたんですけど、曲がアメリカで配信されることが決まって当時を思い出したというか。実は「beautiful world」って、10年くらい前に作った曲なんですよ。

──そうだったんですか。

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宮原 で、久しぶりに演奏してみたら「昔こういうアレンジしてたな」とか思い出して。だから去年のコラボ作品とか「beautiful world」の海外配信、さらに3月のアメリカツアーっていう、いろんな出来事が重なって最終的には原点回帰みたいなモードでアルバムを作りました。

──最近は日本のロックに寄っていた感じがあった?

宮原 そうですね。「PB」の頃のライブ映像を観ると、結構ロックな感じで演奏してて、それはそれで自分的には納得のいくカッコいいものだったんです。でもここ数年はリスナーの耳も変わってきて、聴く音楽の幅が広がってきてる気がするんですね。例えば今年のフジロックのトリをやった……。

──RADIOHEADですか?

宮原 そう。実際に彼らのライブを観て、RADIOHEADみたいなマニアックな音楽をこんなにたくさんの人が聴いてんのか!と思ったんですよ(笑)。みんなが多種多様な音楽を聴くようになってる時代なんだなっていうのを目の当たりにして。だから今回はちょっとよりインストバンドとしてのSPECIAL OTHERSに立ち返った感じですね。

日本の音楽から解き放たれた

──芹澤さんはどうですか?

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芹澤優真(Key) 俺はもうちょっとライトな話になるんですけど、アメリカツアーがあるからってワケじゃなくて、ちょうど俺の中で「第二次アメリカかぶれ」の時期が来てたんですよ。アメリカが超好きになってきてて、ビルボードチャートに入ってる音楽も大好きだし、チャートに入ってないものでもポップスだったりクラブミュージックは聴くし。ちょうどそのときにアメリカでツアーをやることになって。自分にすげえぴったりの場所だったんですね。「こんなにイメージどおりなのか!?」と思って(笑)、超楽しかったですね。

──めちゃくちゃいいタイミングでアメリカに行ったと。

芹澤 ええ。アメリカ行ったことで日本の音楽から解き放たれたというか。「こういうのが売れる」とか「こういうふうにすればウケる」とか、メンバーの中で俺が一番囚われてたのかもしれないんですけど、アメリカ好きが高じてその時期は勝手に解放されて。その結果今回のアルバムでは、元々好きだったタイプの音楽がどんどん生まれてきて、リハでやってるようなセッションの音源を気楽に収録してみたり。それって「第二次アメリカかぶれ」のおかげなのかなと思って。

──今まで気にしてたことは一体なんだったんだろうと?

芹澤 そうなんですよ。あとは年齢的にも30を越えたあたりから刹那的なものが必要なくなってきた。もう太宰治とか一切触りたくない感じというか。元々普遍的なものが好きなんですけど、より刹那的なものに触れたくなくなってきたんですよね。自分のパーソナリティにないものに触れるのがしんどいんですよ。だから今は「これが好きだからこれでいこう」ってハッキリ言えるし、これまで以上に自分にとって音楽をやることが心地良くなってるし。そういう意味で自由になれたアルバムですね。

──又吉さんはいかがでしたか?

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又吉優也(B) コラボアルバムを作ってるときは歌録りとか勉強になる部分があったんですけど、それはそれとして自分たちだけで作る5thアルバムがどうなるのかなっていうのが純粋に楽しみだったんですよね。もちろんみんなと同じで海外配信とかアメリカに行ったのもいい刺激になってるし。年齢もありますかね。良いアルバムができたんじゃないかと思います。

ニューアルバム「Have a Nice Day」/ 2012年10月10日発売 / SPEEDSTAR RECORDS

CD収録曲
  1. ROOT
  2. ORION
  3. Raindrops
  4. beautiful world
  5. ORGAN BASS
  6. Hawaiian Secret Beat
  7. barrel
  8. Dance Festival
  9. Provence
  10. Have a Nice Day
初回生産分のみのスペシャル特典

「けずって当てよう! スペラッチ」

引換応募期間 2012年10月9日~10月31日当日消印有効

詳しくはニューアルバム特設サイトにて。

SPECIAL OTHERS(すぺしゃるあざーず)

1995年、高校の同級生だった宮原”TOYIN”良太(Dr)、又吉”SEGUN”優也(B)、柳下”DAYO”武史(G)、芹澤”REMI”優真(Key)の4人で結成。2000年から本格的に活動を始める。2004年8月に1stミニアルバム「BEN」をリリースし、外資系CDショップで好セールスを記録する。続く2005年6月の2ndミニアルバム「UNCLE JOHN」発表後には「FUJI ROCK FESTIVAL '05」に出演し、大きな注目を集める。2006年6月にミニアルバム「IDOL」でメジャーデビュー。人懐っこくリラックスした音楽性は、「FUJI ROCK FESTIVAL」をはじめとする数々の野外フェスやイベントで人気を博している。2009年にリリースしたアルバム「PB」、2010年にリリースした「THE GUIDE」は2作連続でオリコンウィークリーチャート初登場10位を記録。2011年は“コラボレーションイヤー”と銘打ちさまざまなアーティストと共演し、同年11月に6曲入りのコラボアルバム「SPECIAL OTHERS」を発表する。2012年10月に2年ぶりとなるオリジナルフルアルバム「Have a Nice Day」をリリース。11月からは全国ツアーも決定している。