ナタリー PowerPush - sleepy.ab

2年半ぶりアルバムでやんわり攻撃開始 4人が紡ぐ“眠れるロック”の最新型

ライブで曲が変化していくのを早く見たい

──アルバムリリース後はツアーが始まりますが、前半の対バンツアーと年明けに行う後半のワンマンツアーをあわせると、ずいぶん長いものになりますね。

成山 前作を出したときもそうだったんですけど、ツアーで行ったことないところに行けることがすごくうれしくて。今回も富山や郡山、新潟、金沢、青森と、未踏の場所を色で塗っていくような感じ(笑)。

──このタイミングで初めてsleepy.abのライブを観る人も増えると思います。そういう、初めましての人にライブでどんなことを見せていきたいとか、意気込みなどがあったらぜひ教えてください。

インタビュー写真

成山 アルバムができて、音がその人の耳に届くところから始まると思うんです。そこでようやく曲が歩き始めるというか。ライブとかでもそうなんですけど。なので、それを早く見たいですね。僕らの曲がどうやって変わっていくのかを。……結構ライブで変わるんですよね、曲って。ライブを経てアレンジを変えていくという意味もあるんですけど、お客さんの反応や、空気を取り込んで変わっていくものなんで。今まで作った曲もライブでどんどん変わってるし。曲が成長していく様子を早く見たい。

──いいアルバムができたけど、これ以上に曲はまだまだ進化すると。

成山 そうですね。いつもそういうとらえ方をしてます。

山内 音源からライブ用の音にするときって、レコーディングではいろんな音を入れてるのでそのまま再現するのは難しいから、ライブでより良く聴こえるように工夫してるんです。ここをこうしてみようとか、ちょっとずつ変化していくんですよね。それで、1回ツアーが終わるごとに少しずつ修正してたりするんで、お客さんにはそういう変化も楽しんでほしいです。

今回は音楽性の幅に加えて奥行き感を出せた

──改めて、「paratroop」というアルバムを一言で言うとどんな作品だと思いますか?

成山 一言ですか……いつもそうなんですけど、一貫して芯は変わらないんです。“スリーピー”っていうバンド名もそうなんですけど、自分が寝るときに聴く音楽を作りたいっていうのがバンドを始めるきっかけだったんで。眠れるロックっていうんですかね。その幅も特徴だと思うんですよね。声に対してすごく激しいノイズが入ってるのに、それがうるさく聴こえなかったり。そういう、幅のある音楽を作ってきたんだけど、今回はその幅に奥行き感が出たと思う。横だけじゃなくて縦も深めたみたいな感覚があるんです。今までよりもっと浮遊してるんだけど、輪郭ははっきりしてるという。そういう意味で、すごく眠れるロックができたと思います。

田中 僕はこのCDをよくヘッドフォンで聴くんですよ。目を閉じるとね……。

成山 一言だから(笑)。

田中 あ……いや、一言で言いますよ(笑)。

成山 説明はしなきゃなんじゃない? 俺と同じじゃん(笑)。

田中 (笑)。ヘッドフォンで聴いてると、1曲目の「ダイバー」が空を飛んでるところから降下して海に潜っていくような曲だという流れから、最終的に海底から地上に上がってきて空に上っていく、旅をしてるような1枚だなと。だから一言で言うなら「旅」。

成山 1文字かよ(笑)。

田中 まぁ、そういう感覚(笑)。曲ごとにいろんなシーンが想像できるというか、旅をしてる感覚になりました。

山内 僕は、ステンドグラスみたいな音のアルバムができたと思ってて。ふわっときれいなんですけど、実はすごくはっきりしてるところがあって。そんなアルバムができた気がします。

津波 やべぇ、かぶってる(笑)。俺が思ったのは、万華鏡です。最初は「カラフル」って言おうと思ってたんだけど。聴く人によって変化するっていうか、いろんな形の曲たちが集まってるなって。自分でもバラエティに富んだものができたと思います。

──sleepy.ab自体が万華鏡みたいですもんね。いろんなバックグラウンドを持つ人たちが集まって、ひとつのものを作り上げている。

津波 そうですね。そこまで考えてなかった(笑)。

──すごく力の入った素敵なアルバムだと思います。なので、この後のツアーも楽しみなんですが、その後sleepy.abはどこに向かっていくのかを最後に教えていただけますか?

成山 曲が歩いていく姿を見ながら、次の……次のアルバムを早く作りたいなっていうか。今回のアプローチの仕方もすごく新鮮だったので。そういう……ひとつの形がバンドの中でできたので、それをすぐ次につなげたいなと思ってます。

インタビュー写真

ニューアルバム『paratroop』 / 2009年11月25日発売 / 2100円(税込) / PONY CANYON/ROCKER ROOM / PCCA-03041

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CD収録曲
  1. ダイバー
  2. メロウ
  3. ドレミ
  4. ナハト・ムジィク
  5. unknown
  6. アクアリウム (album extended)
  7. さかなになって
  8. flee
  9. インソムニア
  10. メトロノーム
  11. mori

※表示価格は2010年2月出荷分までのスペシャルプライス

sleepy.ab(すりーぴー)

アーティスト写真

札幌を拠点に活動する、成山剛(Vo,G)、山内憲介(G)、田中秀幸(B)、津波秀樹(Dr)の4人からなるバンド。抽象的で曖昧なことを示す接頭語「ab」が示すように、やわらかく浮遊感あふれる音楽で多くのリスナーを魅了。その独特の音楽性はアーティストからの支持も高く、草野マサムネ(スピッツ)、山口一郎(サカナクション)、菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)らもファンを公言している。
1998年に音楽専門学校の仲間で結成され、2002年に1stアルバム「face the music」でインディーズデビュー。その後もライブ活動と並行してリリースを重ね、2008年2月にそれまでのバンドの集大成となる初のベストアルバム「archive」を発表した。2009年にポニーキャニオンに移籍し、同年11月にアルバム「paratroop」をリリース。